第50話
気を抜かずにいて本当に良かった。こいつらに気付けた事は運が良かった。
(ゴースト、それも五体もか。しかも姿が見え無い系統のヤツは本当に厄介だ)
私は全身から放出した魔力を一気に前方通路に流し込む。
(見えた。一瞬でカタを付ける!)
奴等は二種類ある。姿が完全に見え無いモノと、何かに憑依して動かしている場合だ。
見えている場合はその憑依物を完全破壊すればゴーストもソレに伴い消滅する。
しかし、最初から見えないヤツは本当に鬱陶しい、厄介なのだ。
(一つ!二つ!三つ!四つ!・・・最後の奴は移動されたか。だが、甘い!)
私は剣に魔力を纏わせて通路全てを埋め尽くす剣撃を行使する。
ゴーストは魔力の攻撃に弱いのだ。ソレが軽く掠めただけでも消滅させる事ができる。
だからこの様にして詰めが弱かったら最後は力づくで締めるのだ。
(当たったな。僅かだが手応えは有った。奴らは移動速度が非常に遅い。これで素早い身のこなしをされていれば私だけで対処でき無かった)
こいつ等に気付けずに放置していた場合、僅かずつ生気を吸い取られ続ける。
そうしていれば他の魔物との戦闘に突入した際に致命的な隙をいきなり晒す事になり、命を落としかねなかった。
いざ戦闘に入ろうとして思っていたよりも力が出せずに敗北、そう言う状況にゴーストは陥れようとしてくるのだ。
(こいつらを見付けるにはずっと緊張感と警戒心を保ち続けた上でかなり神経を研ぎ澄まさないと感知できんからな。本当に運が良かった)
滅多にゴーストなどに出くわす事など無い。私が団長をしていた時も二度ほどしか遭遇した事は無かった。
一つ目は廃城を根城にした大盗賊団の壊滅作戦の時。その廃城の最奥に潜んでいた二体のゴースト。
もう一つは森の奥に隠し拠点を作っていた極悪強盗団の包囲殲滅戦の時。森を彷徨う一体のゴーストとの遭遇戦。
どちらも部下がその存在に気付かずに少々の時間憑り付かれてしまって後方に下げざるをえない状況にさせられた。
その後の穴埋めに私一人で奮闘した苦労した記憶。
廃城での戦闘では一体は玉座に憑依していた。そちらに気を奪われていると残りのもう一体がこちらの生気を奪い続けて来ると言う悪質なやり口だった。
こちらは壊滅作戦の終了後の廃城内の最終確認の際に遭遇したのでまだ良かったこの時は。
問題は森の奥地の方での遭遇だ。こちらは木々に紛れての透明な姿の見え無い方のゴーストだったのだ。
強盗団を包囲殲滅前での本当に偶然での遭遇であり、ゴーストに弱らされた部下ではその戦闘で犠牲となりかねないと言う事で、生気を吸われて動きが鈍った部下は後方に下がらせた。
その抜けた分を私一人でその持ち場を踏ん張らねばならなかった。もちろん強盗団を殲滅させる事は成功したけれども。
まあどちらの時もゴーストは倒せているのだが、こいつ等とはもう二度と会いたくないとは思っていた。
(こんな場所で三度目とはな。しかも五体も同時になど、本当に気付け無かったら危険に陥っていた。背筋が寒くなるな)
そしてそこで気づく。ゴーストを斬ったその後の床にキラリと光る青い石。
(こいつ等もこの青い石を?・・・どう言う事だ?)
私の知るゴーストは斬れば只単に霧散し、消えるだけだ。この様な物を落とすなどは無い。
「うわ?何?何で魔石が何も無い所から出て来たん?アンちゃんなにしたー?」
「え?ちょっと待って?私たちもしかして超やばかったんじゃないの?何も無い所から魔石がって、目に見え無い魔物?どうやって分かったの?あのカメレオンの時のパターンと違うわ。・・・まさか?」
「ヒジリが一番この中で分かって無くちゃいけ無くね?だってこんなパターン、アレっしょ、あれしか無くね?」
「おいおい・・・私たち、もしかしなくてもアンデッドナイトが居なかったら死んでたぞマジで・・・これ、この魔石の大きさだと、ファントム、じゃね?絶対にゴーストとか小物レベルじゃ無いじゃない・・・カメレオンの時とは比べ物になんないじゃないのよ・・・」
何だか四人娘が顔を青褪めさせているが、どうやらこのゴーストの厄介性を知っていた様で関心する。
(五体もの数だからな。こいつらが一人を集中して生気を吸い取り始めればモノの十分程度で倒れるだろう。そうなれば危険所では無い)
被害が出てもゴーストの存在にそれで気付く事が出来れば、その後の追加の犠牲者は抑えられるだろう。
何たって魔力をちょっとでも掠めてやるだけでゴースト共は消せるのだ。排除はそこそこ簡単なのだ。
だがこいつらの事に気付けずにそのまま「何だ、どうしてだ」とズルズルと気づくのに遅れればドツボに嵌まりかねない。
こいつ等の存在を知っているか、そうで無いかで明暗がかなり出るのだ。
こいつ等ゴーストの排除に一番効果的なのは広範囲に効果を発揮する聖術、或いは光魔法。
光の魔法などであれば思い切り「発光」を使用するだけで良い。たったこれだけでゴーストは消せるのだ。
もしもそれでゴーストを消滅させられ無かったとしてもその後の被害は出なくなるだろう。まあ所謂「撃退」と言った所か。
確実に屠るのならば私のやった様にするか、聖術で結界を張るのが一番なのだが。
(さて、気を抜く暇も無い。休息が取れそうな場所は今後も見付けられそうに無いと思っておいた方が良いか)
そうして私は床に転がった青い石を拾って四人娘に放り投げ渡した。




