第49話
時間は無情にも過ぎては行くが、今の所はまだまだ体力に余裕はある。
歩き続けている状況だけれども、出て来る魔物は全てアンデッドナイトが倒しているからこちらの負担が物凄く小さいのだ。
結果、タブレットに入れたマップアプリに表示されて行く道が充実していっている。
相当な距離を歩いたが疲れは特にない。戦闘をほぼ全部アンデッドナイトが片付けている事に因って余裕が私たちには有った。
しかし緊張感は無くならない。だけども緩和されて脳内では余計な事を考えてしまう事もあった。
(このマップを協会に提出すればそこそこの金額で買い取ってくれるはず・・・ん?)
そんな計算をしていた所で私は気付いた。
「はぁ~、何となくここ、見覚えあるわ。変動前であればここ、ホラ、妙なマークあるわよね。これの側に前は確か・・・転移罠があったはずよ。それと、確か階段も位置的に近かったはず。」
「今はそれって罠も変動に合わせて別の何かに変わってるんじゃない?確かそう言う事例をどっかで聞いた事ある~。もしくは何処か別の所に移設されちゃって無くなってるとかじゃない?階段も前は近くにあったからって言っても、もう今じゃ変動があったんだし、もっと離れた位置に変更されてるかも。期待はしないでおいた方が良いんじゃなーい?」
「転移罠が入り口に戻されるんじゃ無くて、深い階層に飛ばされる罠になってるとかじゃなかったかしら?ソレを踏んで帰還を狙うのは今の状態だとかなり危険なギャンブルよね。確か前に調べた事故資料だと全員が無事に戻って来れたけどズタボロだったって話しだったはずだけど。その後は直ぐに引退したって書いてあったわよね?」
「あーあ、早く戻って魔石の換金してそのお金でパーッと遊びたーい、焼肉食べたーい、ソースカツ丼食いてェー。」
「何で今もまだマリエはソースカツ丼に拘ってんのよ・・・あんたの頭の中どう言う精神構造してんの?と言うか、緊張感切れたか。まあ仕方が無いわね。この調子だともしかしたら上に戻れる階段も近いかもしれないし。」
マリエ一人だけ緊張感が抜けていたのでそこはツッコミを入れつつも、アンデッドナイトへの警戒を私は怠らない。
(こいつ勝手にアッチにコッチにって、分かれ道の時には迷わず進むのよね。確かにどれを選んだ所でダンジョンを出られるかは運でしかないけど)
私たちが冒険者やっている間にこんな大規模なダンジョン変動が起きるとは思っていなかったし、そもそもにそんなモノに私たちが巻き込まれるなんて思ってもいなかった。
ソレに、軽く行って帰って来る、そんな気持ちでこのアンデッドナイトに付いて行った事にも後悔している。
何時もは下準備をしっかりしてからダンジョンに入っていたのに、今回はヒジリのテンションの高さ、そのアンデッドナイトへの好意の勢いに引きずられた様な感じになっている。
(しかも協会長も居たしあの場には。私だけ緊張感で思考が鈍ってた感あるよね。他の三人はいつも通りだったよなぁ。本当にこいつら誰にでも失礼だよ全く。私もあの時は冷静さを失ってたなぁ。その後は流された感が半端無い)
普段の何の負担も無い時であればきっと私は準備を怠らなかった。三人を引き留めて準備を無理やりにでもさせていたと思う。
けれどもあの時は自棄になっていたからそんな事にまで気を回さなかった。どうにでもなれ、ヒジリも時間を置いて飽きれば冷静になってアンデッドナイトへの興味も落ち着くだろうと。
そんな甘い考えでいたらコレで。
(無事戻れたら引退しようかな?・・・普通に普通の職業とかに今更に就職できるんだろうか?)
そんな事を本気で考えようとしたらピタッとアンデッドナイトが止まった事に私は何だと声を掛けた。
「ねえちょっと?どうした?魔物?」
ソレに答えたのはヒジリで。
「アンちゃんがいきなり立ち止まっちゃってさー。うーん?ねえアンちゃん、どったの?」
ヒジリがそう声を掛けた時にアンデッドナイトから黒い魔力が思い切り立ち上ったのを見て、私は驚いてバックステップで大きく距離を置いた。そして。
「あんたら離れな!それ絶対ヤバイから!」
「えー?別に私らの方には来てないよ?敵意もアンちゃんから向けられて無いしー?」
「あー、うん、これには私も驚かされたけど、ヒジリの言う通りな感じするわ。でも、ヤバイってのは同意。ちょっと離れましょう。」
「ふえ~、今までに見た事ない程の密度じゃね?これ、A級余裕で超えちゃってるぽくね?マジウケるんですけどー。」
「危機感持てよ!特にマリエ!好い加減に!自分らの命の事を考えろって!」
ツッコミ疲れし始めてる私の事など一切慮る事の無い三人に呆れてモノが言え無くなって来た。
私たちがそんな事を言っている間もアンデッドナイトから吹き荒れる黒い魔力が噴き上がり続けていて。
しかしソレをアンデッドナイトは一気に前方通路へと向けて放出していた。




