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第46話

 これまでの態度と打って変わって彼女らの顔は真剣な物になっていた。


「進行方向はアンちゃんで行って貰うとして、後方はイチカお願いできる?」

「私とマリエでヒジリの左右を固めましょ。回復職はしっかり守らないと不味いわ。弓じゃ無く今はサブ武器の短剣で行くわ私。」

「魔法での援護どうするー?補助魔法は幾つか覚えてるけど、誰に掛けたら効果的?」


「もっと早くに切り替えて欲しかったわー。この調子でアンデッドナイトに今後関わらない方向でー。」


「それは無い。」

「ここまでやっておいて、多分協会長が黙っちゃいないと思うけどね、私は。」

「まだ切り捨てには早いかなぁ。このくらいだったらまだ範疇内っしょ!」


「マリエ、目が金マークになってる・・・こいつ本気モードじゃねーか・・・さっきのオークの魔石に目が眩みやがったな?」


 真剣にはなっていたが、どうにもまだ少々のユルさが見えている。しかしまあ許容範囲内だろう。


(四六時中、常時、常在戦場として集中し続けようとしても、それはどれだけ訓練した所で精神の消耗は免れんし、長続きしないからな)


 なるべく長く集中力を維持するには小さい緊張とその緩和を程良く繰り返すのがコツだ。


 彼女らはソレをしっかりと身に付けているのだと理解した。


 そして私が陣形を組む事を伝えようとする前に彼女らは動いていて既にそれは為されており


(ふむ、この短杖を持つ娘を守る形を取るのか。ならば私もソレを考えて動こう)


 今の私は彼女らを「守るべき対象」から「共に戦う仲間」として認識を改めた。


(さて、そうなれば遠慮は要らんな。私も覚悟を決めよう。全力で彼女らをダンジョンから脱出させて見せる)


 私は索敵範囲を広げた。もう二度と魔物に奇襲などされぬ様にと。


 出来るのなら最初からやれと言われてしまうかもしれないが、コレは私にとってはかなり消耗の激しい索敵方法なのだ。できれば使いたくない代物である。


(魔力を前方通路展開、視界範囲内全てに行き渡らせる。この先、約六十歩の所にまた隠形の得意な例の魔物が潜んでいる。しかも天井に張り付いているのか・・・厄介極まる敵だ。しかもこいつ・・・)


 剣先から魔力を放出できるのならば、自身の肉体から放出できない訳が無い。


 そしてその放出した自分の魔力に「意思」を乗せてソレに触れる存在の魔力反応を探るのだ。


 そうなれば感知したい範囲が広くなればなるほどにその魔力消費が大きくなるのは必定だ。


 まあソレをなるべく小さくする方法も無いでは無い。


(薄く延ばし過ぎればソレが潜む敵に触れた場合の「揺らぎ」が感知し難いのだよなぁ。だからと言って余りにも膨大に流せば消費は増えるし相手にもバレやすい。良い塩梅と言うモノが個々人で違うのが面白い所ではあるのだが)


 経験と技術の積み重ね、そしてソレに足して勘。


 専門職、しかもその上澄みの達人となれば見つけられないモノは無い、とまで言われる。


 騎士団にもそれ専門の部署は有った。だから私はこれまでこの技術はそれほどに磨いて来なかったのだが。


(・・・どうにも魔力の消費がそこまで大きくない?アンデッドの身になった事で根本的な何かが変わったとかそう言った理由か?ふぅ~、学者では無い私が考えても答えは出てこないな)


 今は目の前の現状、現実をしっかりと見るべき。私は彼女らを救うと覚悟を決めたのだ。


(さて、敵は一体。その他、無し。罠、無し。・・・しかし、敵は天井、剣は届かぬし、魔法は、無しだな)


 威力と範囲の制御にまだ不安が残り、しかも放った魔法が「黒くなる」と言う現象の検証をもっとしてからじゃ無いと危険だと感じる。


 魔法を使うならば一人の状態でいた方が良い。周囲へ迷惑を掛けない為にも。


(そして、敵はどうやら自身の事をバレていないと思っているらしいな。ホンの僅かずつだが、距離を詰めて来ている。そのまま範囲内に入ればさっきの奇襲を仕掛けて来るつもりなのだろうな)


 同じ手を許すはずが無い。私は剣を構えて素早く突きを繰り出す。虚空へと。


 しかし剣先からは魔力を伸ばしている。その先は既に感知して位置情報を把握している透明な隠形を駆使する魔物だ。


 手応えあり、その魔物の顔面眉間から魔力撃は突き刺さり胴半ばまで到達。


(対処が出来れば呆気無いが、しかしそこは初見殺し。私とて最初は気づかなかった程。偉そうに説教はできんな)


 天井から青く輝く石が落下。その床に衝突した音で初めてそこで彼女ら四人がハッとこちらへ視線を向けた。


「アンちゃん、凄過ぎっしょ。」

「え?嘘でしょう?今なにしたの?何が何処に居た?・・・は?何?何かのギャグな訳?凄まじ過ぎるわ。」

「うほ?またまた大き目の魔石ゲットじゃん。・・・何で天井から突然落ちて来たん?」


「いや、もうコイツ一人だけで良いんじゃないかな・・・」


 どうにも私の事を一番警戒していた娘が呆れていたのだが、どうして呆れられたのかが私には分からなかった。

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