第45話
私が瞬時に割り込まなかったら被害に繋がっていた。その場合、最後方に居たこの娘は後頭部を打たれていたに違いない。
敵が攻撃をする為に殺気を事前に放っていたから防げた様なものだ。
(私の感知をすり抜けて来るとは、厄介で危険だな。攻撃の直前で無ければ気付け無い程の隠形。しかし)
位置はもう分かった。だから、踏み込む。そこへ即座に剣を突き刺す。
そうして放った攻撃は何も無いと思われた空間に沈んで。
(手応え、あり。・・・何だ?蜥蜴か?いや、気配的には竜の物に近い?それにしては目が出っ張っていてぎょろぎょろと気味の悪い顔面だ)
どうやら周囲の環境にその皮膚を溶かし込む特殊な能力を持つ魔物らしく。
その胴体は成人男性の太ももの大きさと言った具合で、尻尾の方に行くにつれて細くなっている。
その口からは七色に今も色が変わっている長い舌が出ていて胴を剣で貫かれた痛みからかのたうち回っている。
どうやらソレがかなりの早さで伸ばされる事によっての「突」が、この魔物の攻撃方法らしいと私は即座に推測した。
(ふむ、剣に受けた衝撃から見て頭部に食らえば昏倒する程には出ていたか。侮れん。奇襲としてかなりの効果だ)
これまでの経験から計算してみたが、威力としてはかなりのモノであると判断した。
しかしもう私の剣は見事にその魔物の胴を貫いていたのでそこは致命傷、こいつがまた姿を晦ませると言った事も無く。
その後は直ぐに煙と化して消えて青い輝く石を落とした。
(どうやら倒せたらしいな。ふむ、大きさがこれまでとは大幅に違うな?小石と言う程度から、拳半分程度とは一気に上がったな)
私はソレを拾って勘に従い即座に投球する。まだ気配のしている方に。全力だ。
(もう二体、こいつとは別の奴らが居た事は直ぐに気づけた。ふむ、姿が見え始めたな。この倒した魔物の魔法か?倒された事でソレが解除されたか。随分と危険度が高い。身を隠す魔法を他に掛ける事も出来るとは)
私の投げた青い石は鼻っ柱が随分と潰れている猪顔の、これまた獣人モドキと言えるのだろう存在の顔面に直撃していた。
(片方は痛みでコチラへの意識が途切れた。残る一体も自分たちの事が何故バレたのか分からないと言った様子で慌てたな?瞬時に覚悟を決める事が出来ぬか。甘い、そして遅過ぎる)
私がその隙を見逃すはずも無い。瞬時に一刀を繰り出す。魔力を剣に乗せて。その二体を上下に切り離す。
「何て奴なんだよ・・・魔石をぶん投げて魔物に当てるって・・・魔石は投擲武器じゃ無いんだよ・・・」
何だか呆れられている空気を背中に感じるのだが、それは無視する事にする。
その後は直ぐに真っ二つになった獣人モドキから青く輝く石が落ちる。こちらの大きさも先程私が投げた物と大きさは同等と言った具合だ。
もう今この場での危険は既に無いとは思うが、残心しておくべき状況だ。気は張ったままにして通路の隅々まで観察をする。
ここで私は反省をする。
(私が戦闘をするに剣を振るのに充分な広さだ。ソレで助かったと言える部分があるな)
そうで無かったら魔物の奇襲から四人を守れなかった可能性があった。
どの様な状況にあろうとも彼女らに怪我を負わせ無い心算で私はいたが。それは少々甘い見込みだった。
ここで通路幅が狭かったとしたら、移動をするにしても咄嗟の動きに支障が出たであろうし、只の位置の入れ替えだけでも難くなってこの様に上手くはいかなかっただろう。
今後は今の道幅よりも狭くなる可能性もある。そうなれば彼女らを守る難易度が上がる。
(隊列に関してもここまで何も考えていなかったが、話合いが必要、うむ・・・少々コレは交流をせねばならないな)
今は戦闘をするに容易な広さを確保できているとは言え、この先もずっとそうだと言った保証は何処にも無い。
まあそうなれども私一人で守れないと言う訳では無いが。だが危険を防ぎ、回避すると言う点を重要視するのならば彼女らと協力して進む方が良い。
無傷で戻る、ソレを目標に掲げるのならば何でも使うべきなのだ。
(彼女ら自身の事でもある。安全の確保の為にもう今は意識をちゃんと切り替えられている様だからな)
自分の身は自分で守る、そう言った基本をちゃんと彼女らが持っているのがその表情から読み取れる。
(高位貴族ともなると「誰か!私を守れ!」とか無様やたらに喚き出すからな。まあ、ソレも極一部の教育の足りていない者ばかりがそんな感じなんだが)
少々昔の事を思い出して愚痴がこぼれそうになったが、グッとソレを堪えた。
今はそんな事に意識を割いている場合では無いから。
ここで私は残心を解いて四人へと身振り手振りで「陣形」を組もう、と訴え掛ける事にした。




