番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その84
俺が見張りをしつつ野宿を行い、翌朝。
片づけを済ませてから、パレットキャニオンを目指して歩を進めた。
「はぁー、はぁー。急な山道ですし、足元も悪くて歩きにくいし、疲れます!」
「アルフィが提案したところだろ? 文句を言うな」
「確かに僕が提案しましたけど、こんなに険しい場所だとは思っていませんでした! こんなに大変で、ドラゴナイトがなかったら泣いちゃいますよ!」
「泣くのはやめてくれ。パレットキャニオンにドラゴナイトがある可能性は高いと思うぞ」
俺のそんな言葉に、アルフィとセルジは首を傾げた。
「なんでそんなことが分かるんだよ。情報が確かだって自信があるのか?」
「いや、かなりの数の魔物の気配を感じている。それも結構強めの気配だ」
「本当ですか!? ということは、ジュエルレイヴンがいるってことですよね!?」
「そういうことになるな。ここからはいつ襲われてもおかしくないし、二人とも用心してくれ」
アルフィとセルジに注意喚起しておきつつ、俺は空を注視しながら更にパレットキャニオンを進んでいった。
パレットキャニオンは渓谷であり、今向かっているのは谷の上の部分。
ジュエルレイヴンは恐らく、V字になっている急崖部分を巣にしているはず。
上から下りていって巣へと突入し、貯め込んでいるであろう宝石類をかっぱらう予定だ。
場所が場所だけに、単独で突入するつもりであり、アルフィとセルジには上から指示を飛ばしてもらう。
ちなみに、今ここで指示役に回ってもらうことを伝えたら、猛反発を食らうのが分かり切っているため、まだ伝えていない。
谷の上に着いたら、谷底の深さとジュエルレイヴンの数を見て、勝手に怖じ気づくと思っているから、そこで伝えるつもり。
そんなことを考えているうちに、ようやく谷の頂上が見えてきた。
「ぜぇー、はー。……よ、ようやく頂上が見えてきましたよ! ここからジュエルレイヴンの巣に行けるんですよね!!」
「おい、アルフィ。いきなり走るな。一番乗りはずるいぞ」
頂上が見えて走り出したアルフィと、それについていくように走っていったセルジ。
ずっと苦悶の表情を浮かべていた二人が笑顔を見せたのだが、その笑顔は一瞬にして消え去った。
「……え? じゅ、ジュエルレイヴンの巣は? というか、何もないですよ!!」
「本当に何もないじゃねぇか。ジェイド、本当にこの場所で合っているのか?」
「大丈夫だ。ここで合っている。ジュエルレイヴンの巣は下だ」
先に頂上へと到着した二人に、俺はジュエルレイヴンの巣の場所を教えた。
「下? 下って言うと……ええ!? が、崖になってますよ!!」
「もしかして、この急崖にジュエルレイヴンは巣を作っているのか?」
「ああ、その通り。目を凝らせば、飛んでいるジュエルレイヴンが見えるはずだ」
その高さも相まって、へっぴり腰になりながらも、崖の上から谷底を覗き込んだアルフィとセルジ。
昼間にもかかわらず暗い谷底を凝視したことで、飛んでいるジュエルレイヴンの姿が見えたようだ。
「うわっ、何かが飛んでます! 本当にこの崖下が巣になっているんですか!?」
「ということは、崖を下りないとジュエルレイヴンの巣には行けないってことか? ここまで来たのに無理じゃねぇか」
「いや、俺が壁を伝って下りるつもりだ。二人は上から指示を飛ばしてほしい。崖を下りる力も、下りながらジュエルレイヴンと戦う力も残っていないだろ?」
「体力が全快でも無理です! でも、いくらジェイドさんといえど、大丈夫なんですか? ジュエルレイヴンに落とされたら死んでしまいますよ!?」
心配そうにそう言ってきたアルフィに、俺は親指を立てて返事をする。
「俺は問題ない。崖を下りるのも得意だから、襲われたとしても逃げられる自信がある。巣に入ってしまえば足場があるだろうし、両手が使えればジュエルレイヴンにはまず負けない」
「ジェイドは想像以上にとんでもないな。頭のネジが何本か抜けているとしか思えない」
「本当ですよ! 上から覗くだけでも膝が震えますもん!」
アルフィの言っていることは誇張でもなく、本当にガッタガタに震えていた。
この様子で正確な指示をしてくれるのかが心配になるが、エンペラにも頼むから、まぁ大丈夫だろう。
俺は一人、準備を進め、鞄の中で寝ていたエンペラを起こす。
そして、アルフィ、セルジ、エンペラをパレットキャニオンの頂上に残し、崖下りを始めることにした。
「ジェイドさん! 本当に気を付けてくださいね!」
「絶対に落ちるなよ。助けにいけないからな」
「俺は大丈夫だ。二人も気をつけろよ。ジュエルレイヴンが襲い掛かってくるだろうからな。エンペラも頼んだ」
「分かってる。早く下りろ」
「やっぱり従魔とは思えないほど冷たいですよ!」
エンペラの投げやりな態度に驚いているアルフィを置いておき、俺は崖下りを始めた。
ジュエルレイヴンがいる以上、命綱は逆に危険を生む可能性があるため、丸腰での崖下りとなる。
滑らないように十分に気を付けつつも……スピード重視で一気に下りていくことにしたのだった。
本作のコミック第4巻が発売しております!!!
コミカライズ版は内容もかなり違いますし、単純に漫画として完成度の高い作品となっています!
キクチ先生の画力が素晴らしく、小説版を読んだ方でも確実に面白いと自信を持って言える出来となっておりますので、どうか手に取って頂けると嬉しいです<(_ _)>ペコ
コミカライズ版も、何卒よろしくお願い致します<(_ _)>ペコ
↓の画像をタップして頂くと、Amazonに飛びます!





