第259話 新たな名づけ
パッと思いつくかと思ったが、案外思いつかない。
レッドドラゴンの姿を見た方が思いつく可能性があるし、とりあえず会いに行ってみよう。
俺はベインの部屋を後にし、一階にいるレッドドラゴンに会いに行った。
やって来た際も元気よく出迎えてくれたが、俺の顔を見るなり飛びついてきたレッドドラゴン。
それにしても……まったく体が赤くならないな。
みるみる大きくなっているのは間違いないが、体の色は赤くなるどころか、むしろ黒くなっているくらいだ。
母親がレッドドラゴンだからレッドドラゴンだと思っていたが、父親がブラックドラゴンなどの別種である可能性が高い。
もしくは、レッドドラゴンが卵を持っていただけで、まったく関係のない子どもである可能性すらある。
喜んで尻尾をブンブンと振っているレッドドラゴン?を撫でながら、俺は名前を考える。
さらに成長したとき、体色が赤でも黒でも問題ないと考えると……血に関する名前がいいかもしれない。
ブラッド。いや、ブルートはどうだろうか。
呼びやすいし、俺的にはかなりしっくりきた。
「レッドドラゴン。今日はお前に名前をつけようと思っている」
頭を撫でながら、レッドドラゴンの目を見てそう言ったのだが、言葉の意味が分からないようで、喉を鳴らしながら首を傾げた。
まぁ意味が理解できなくとも、名前をつければ劇的に変わるだろうから問題ないはずだ。
「今日からお前の名前はブルートだ」
レッドドラゴン改めブルートにそう言った瞬間――体の力が一気に抜ける感覚に襲われる。
ベインのときと同じ……いや、それ以上に魔力が流れ出ていく速度が速い。
すべての魔力がブルートに流れ出そうになるため、俺は必死に魔力操作でそれを止めようとするが――止まらない。
焦りで全身から汗が噴き出すが、この危機的状況を打破するため、俺は必死に思考を巡らせる。
まずは持参したお手製の魔力ポーションをガブ飲みしつつ、周囲の魔力を練り上げて吸収する。
それでも吸い出される魔力の方が多く、俺は大声でベインを呼ぶことにした。
「ベイン! いるかッ!? いるなら、すぐに来てくれ!」
「グレアム様、お呼びでしょうか?」
俺の声に反応し、ワープで即座に駆けつけてくれたベイン。
「今、レッドドラゴンに名前をつけたんだが、魔力を吸い出される量が多いうえに止められない。ベインの魔力を俺に分けてくれ」
「分かりました! すぐにお渡しいたします!」
ベインは俺の右手を両手で握り、魔力を送り込んでくれた。
左手から流れ出ていく魔力に対し、右手から供給されるベインの魔力。
最初は送り込まれる魔力の方が多かったのだが、時間が経つにつれて流れ出ていく魔力の方が多くなり始めた。
流れ出る魔力を抑え込みながら、周囲の魔力、魔力ポーション、そしてベインの魔力を使っても、なお流れ出る魔力の方が多いことに冷や汗が止まらない。
「グレアム様、どうでしょうか!? 魔力は何とかなりますか?」
「い、いや……足りる気配がない。い、意識を飛ばしたら……あとは頼んだ」
俺の魔力が尽きるまで吸われ続けると察した俺は、ベインにそう伝言を残し、ベインの手を離した。
そして、もはや魔力を止めることもせず、残っている魔力をすべてブルートに渡す勢いで送り込む。
体内の魔力がなくなるにつれ、脳がぐらんぐらんと揺れる感覚に陥る。
久しぶりに感じる命の危機だが、抵抗はせず、すべての魔力を吐き出した。
その瞬間、俺の視界はブラックアウト。
上下左右も分からなくなり、そのまま意識を失った。
目を覚ますと、俺を覗き込んでいる一人の女の子の顔が見えた。
記憶はぐちゃぐちゃだったが、ゆっくりと意識を失う前の記憶が蘇ってくる。
……確かブルートに名前をつけて、魔力をすべて吸い取られたんだったか?
魔力切れによる酷い酔いを感じながらも、俺は記憶を手繰り寄せた。
「ここはベインの屋敷だよな? ベインはいるのか? ……というか、見ない顔だが誰なんだ?」
「僕はブルート! ご主人様、覚えてなぁい?」
「…………ブルート? あ、あのブルートなのか?」
まさかの自己紹介に、開いた口が塞がらなくなる。
見た目は完全に人間……いや、よく見れば額のあたりに角が生えている。
八重歯も牙のようだし、冗談ではなく本当にブルートのようだ。
人型になるのではとベインと話していたが、ここまで人型になっていいものなのか?
ドラゴンの欠片も残っていないその姿に、俺は言葉を失ってしまう。
「そうだよ! ご主人様のお陰でこの姿になったんだ!」
「驚くほどの変貌に、さすがにびっくりしている。言葉も喋れる……というか、ブルートって女の子だったのか?」
「えー! 気づいてなかったの!? ご主人様、ひどいよぉ!」
ぺちぺちと殴ってくるブルートに、未だに頭の整理が追いついていない。
早いところベインを呼び、いろいろと説明してもらわないといけないな。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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