番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その80
邪教新聞社を後にした俺は、その足で宿へと戻ってきた。
アンデッドと戦った時より、ドッと疲れた気がする。
教会側にもおかしな点を感じるが、邪教新聞社もなかなかだったからな。
どちらが正しいのか分からないし、どちらも正しくない可能性も大いにあると思っている。
考えるだけ無駄だと分かっているんだが、つい色々と考えているうちに、あっという間に宿に着いてしまった。
部屋に近づくと、中から口論する声が聞こえてきた。
「チビスケ! また俺のおやつを食べただろ!」
「何度言えば分かる。私はチビスケじゃない。それに、お菓子はデカブツのじゃなくてジェイドのだろう」
「ジェイドから俺が貰ったんだよ! 返せ! または買ってこい!」
「嫌だ。面倒くさい」
外まで丸聞こえの口論を繰り広げており、俺が恥ずかしくなってくる。
これ以上は他の部屋の客に迷惑がかかるため、早いところ止めよう。
「また喧嘩しているのか。外まで聞こえてたぞ」
「「こいつが悪い!」」
お互いに指を差しながら、睨み合っているエイルとエンペラ。
俺はため息をつきながら、話を変えるためエイルに話を聞くことにした。
「とりあえず喧嘩はやめろ。それで……エイル、教会はどうだったんだ?」
「ん? 特に何もなかったぞ! 偉そうな格好をしたジジイにお礼を言われただけだ!」
すっとぼけた顔で、何でもなかったと言ってのけたエイル。
怪しいから探ってくれって話をしたはずなんだが……まぁエイルだし、しょうがないか。
「今回の説明は受けてきたのか?」
「おう! 金がなくて、低級冒険者しか雇えなかったって言ってたぜ! そんな中、俺が助けに来てくれて助かっただとよ! へっへっへ!」
「金がなくて――か。神父たちが戦わなかった理由についても聞いたか?」
「おう! 戦闘の能力がないんだとよ! とりあえず、今回の戦いで手に入れた全てのアイテムと、追加の報酬を用意するってさ! なぁなぁ、来て良かっただろ?」
エイルは嬉しそうに笑っているが、追加の報酬に引っかかってしまった。
金がないから低級冒険者しか呼べなかったのに、エイルに追加の報酬を約束する。
まぁ追加の報酬がどの程度のものか分からないが、怪しさしかないことに変わりない。
見るからに馬鹿そうなエイルだけを行かせたのは、図らずとも英断だったかもな。
「ああ、それなら良かった。報酬の話もついたのなら、俺たちはヨークウィッチに帰るとするか」
「え? もう帰んのか? まだ街を見てねぇし、疲れもあるからもう一泊ぐらいしようぜ!」
「駄目だ。俺は営業の準備をしないといけない」
トントン拍子でアンデッドの群れを倒せたし、一泊するぐらいの余裕はあるんだが、聖教国には長居したくない。
今回の件で注目を浴びてしまった上、俺には聖女暗殺という掘られたくない過去があるしな。
「マジかよ! なら、せめてチビスケが食っちまったおやつを買ってこさせてくれ!」
「自分で買ってくればいいだろう」
「お前が食べたんだからお前が買ってくるんだよ!」
「本当にうるさい。俺が買ってくるから、その間に出発の準備を整えておいてくれ。……帰ってきたときに喧嘩していたら許さないからな」
脅しをかけてから、俺はエイルのお菓子を買いに再び部屋を出た。
仲の悪いエイルとエンペラに呆れながら宿を出たところで、宿の前に複数の神父らしき人物がいた。
神父らしきと言った理由は、明らかにアンデッドのところへと案内してくれた神父たちと比べ、服装が豪華だったから。
年齢も全員が六十代近いし、エイルの言っていた教会のお偉いさんだろう。
「ちょっとよろしいかな?」
俺は素知らぬフリをして、偉そうな神父たちの横を通り過ぎようとしたのだが、真ん中にいた一番偉そうな老神父に声をかけられてしまった。
無視したら余計に怪しまれるだろうし、さすがにそれはまずい。
「ん? 俺に何か用か?」
「ヨークウィッチのギルド長と同じ部屋にいただろう? 君は護衛か何かかね?」
「まぁそんなところだ。エイル様に何か用があるのか?」
「……いやいや、偶然通りかかっただけだよ。枢機卿が改めてお礼を言っていたと伝えておいてほしい」
薄っぺらい笑顔を見せてきた、枢機卿を名乗る人物は、それだけ言い残すと立ち去っていった。
エイルが怪しい動きをしないか、見張りに来たのか?
だとしたら、上の立場の人間が来るのはおかしいか。
宿まで来ていた理由については分からないが、碌な理由ではないことは確か。
笑顔も胡散臭かったし、何かしらの問題を抱えていることは間違いない。
色々と面倒なことに違いはないため、とっととお菓子とお土産を買って、聖教国を後にするとしよう。
本作のコミック第5巻が発売しております!!!
コミカライズ版は内容もかなり違いますし、単純に漫画として完成度の高い作品となっています!
キクチ先生の画力が素晴らしく、小説版を読んだ方でも確実に面白いと自信を持って言える出来となっておりますので、どうか手に取って頂けると嬉しいです<(_ _)>ペコ
コミカライズ版も、何卒よろしくお願い致します<(_ _)>ペコ
↓の画像をタップして頂くと、Amazonに飛びます!





