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シロウ「……さて。」
*彼は執務室を出て、鍛冶場の奥にあるボルグの特別工房へ向かった。サルーナの古代遺跡でガイアを解放した際に発見した魔導アーマーの設計図ーーあれをボルグに渡して製作を依頼してから、しばらく経つ。*
*工房の重い扉を開けると、熱気と金属の匂いが押し寄せた。奥の作業台の前に、巨大な人型の鎧が立っていた。*
*身長およそ2メートル。*
*ミスリルとアダマンタイトの合金で構成された装甲が銀色の光を放っている。合金龍の素材を惜しみなく使った装甲は、継ぎ目すら見えないほど精密に組み上げられていた。胸部が前面に開き、人が1人入れるコクピットが見える。背部には推進用の魔導炉が2基、肩部には小型の蒸気圧縮砲が左右1門ずつ搭載されていた。*
ボルグ「おう、陛下。ちょうど最終調整が終わったところだ。」
*ボルグが油まみれの手を布で拭きながら振り返った。その顔は満足げだ。*
シロウ「……上手くいったみたいだな。」
ボルグ「上手くいったどころじゃねえ。傑作だ。」
*ボルグが装甲を拳でコンコンと叩いた。澄んだ金属音が響く。*
ボルグ「ミスリルとアダマンタイトの合金比率を7対3にした。硬度はアダマンタイト単体を超え、重量はミスリル並みに抑えてある。レイラ様の全力の一撃にも……まあ、3発は耐えるだろう。」
シロウ「3発か。十分だ。飛行性能は?」
ボルグ「背部の魔導炉で浮遊と推進が可能だ。最高速度は……正直、計測できてねえ。テスト飛行したドワーフが速すぎて気絶した。」
シロウ「気絶……。」
ボルグ「搭乗者の耐G能力次第だな。陛下なら問題ねえだろうが、普通の兵士じゃ全力飛行は無理だ。」
*彼がコクピットを覗き込んだ。内部には操縦桿が2本、足元にペダルが2つ。正面には魔石を使った簡易モニターが埋め込まれている。古代の設計図とドワーフの技術の融合が見事に形になっていた。*
シロウ「武装は?」
ボルグ「肩の蒸気圧縮砲が2門。右腕に魔力刃の展開機構、左腕に盾の展開機構を付けた。あと、陛下の要望通り、拳部分にアダマンタイト合金のナックルガードを追加してある。殴っても壊れねえ。」
シロウ「いいな。何体できてる?」
ボルグ「今のところ完成品は3体だ。素材があればあと9体は作れるが、合金龍の素材の在庫が心許ねえ。」
シロウ「そうか、1体だけもらえるか? 他2体はしまっておいてくれ。帰ったらテストする。」
ボルグ「了解だ。こいつの扱いには気をつけろよ、陛下。まだ微調整が残ってる部分もある。」
シロウ「ああ、ありがとう。」
*彼は1体の魔導アーマーを異空間収納に格納し、ボルグの工房を後にした。そのまま自分専用の工房へと転移する。*
*重い扉を閉め、鍵をかけた。さらに防音と隠蔽の結界を二重に展開する。*
シロウ「さて……。」
*異空間収納から魔導アーマーを取り出し、作業台の前に立たせた。2メートルの銀色の巨体が工房の照明を反射する。彼はコクピットを開き、内部構造を覗き込みながら呟いた。*
シロウ「肩の砲門は1門でいい。その代わり自動追尾型にする……。」
* 右肩の蒸気圧縮砲を取り外し、左肩の1門だけを残した。砲身の内部に追尾用の魔石回路を組み込み、「鑑定」で対象をロックオンすれば自動で照準が追従する仕組みに改良する。*
シロウ「盾と剣は外す。代わりに……属性ビームだな。」
*右腕の魔力刃展開機構と左腕の盾展開機構を丸ごと取り外した。空いたスペースに、両腕の掌部分から属性ビームを射出する魔導回路を新たに組み込む。火、氷、雷、風、光、闇ーー6属性を切り替えて掌から放てる設計だ。*
*「創造」を使い、属性変換の魔石を6つ生成。それぞれを前腕部の内側に埋め込み、指の動きで属性を切り替えられるようにした。*
シロウ「次は中身だ……。」
*コクピットに潜り込み、内装を確認する。確かに窮屈だ。操縦桿が大きすぎるし、背面の緩衝材が厚すぎて圧迫感がある。*
シロウ「ボルグは頑丈さ優先で作るからな……。もっと軽く、もっと薄く。」
*内壁の緩衝材を薄型の魔力緩衝膜に置き換えた。操縦桿を小型化し、代わりに思念操作の補助回路を追加する。手動操作と思念操作の両方に対応できるハイブリッド型だ。背面装甲の内側も削り、コクピット空間を20センチほど広げた。*
*さらに、装甲の内側全体に重量軽減の魔法陣を刻み込む。総重量が約3割減少した。*
シロウ「……よし。」
*改造を終え、コクピットに再び入ってみた。今度は余裕がある。腕を動かしても内壁にぶつからない。思念操作の反応も良好だ。*
*彼がコクピット内で右手を開くと、掌の射出口が淡い青光を帯びた。属性切り替えーー火。掌の光が赤に変わる。雷。紫に変わる。問題ない。*
シロウ「あとは実戦テストだが……海賊討伐にはまだ早いか。帰ってからだな。」
*魔導アーマーを異空間収納に格納し、工房の鍵を開けた。*




