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*彼は城に戻り、まずリオンとカインを訓練所で捕まえた。*
シロウ「明後日の朝、サルーナ南港を出航する。準備しておけ。」
リオン「早い!! まだ船員も決まってないんじゃ……!」
シロウ「現地で集めた。20人以上集まる。」
リオン「えぇ……。」
カイン「了解した。武装は何を持っていく?」
シロウ「白兵戦用の装備一式。砲撃は船の装備でいい。」
*カインは無言で頷き、すぐに準備に取り掛かった。リオンが「マジかよ……」とぼやきながらその後を追う。*
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*次に、彼はレイの部屋を訪ねた。レイはソファに寝転がり、果物の盛り合わせを食べていた。ぶどうを一粒ずつ口に放り込んでいる。*
シロウ「レイ、海賊討伐に行くけど来るか?」
レイ「んー……海の上でしょ? 海賊って美味しくないじゃん。」
シロウ「美味しくないって、食べ物の話じゃないんだが。」
レイ「ボクはここでフルーツ食べてるよー。お土産よろしくねシロー。」
*レイがひらひらと手を振った。完全にやる気がない。彼は苦笑して部屋を出た。*
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*最後に、ルーナの部屋の扉をノックした。*
ルーナ「はーい。」
*扉を開けると、ルーナが剣の手入れをしていた。刃を丁寧に磨いている。3週間前とは別人のような引き締まった横顔だ。*
シロウ「明後日の朝、サルーナ南港を出航する。準備しておけ。」
ルーナ「了解! ……パパ、装備はどうする? 軽装がいい?」
シロウ「海上戦だから重い鎧はやめとけ。落ちたら沈む。」
ルーナ「りょーかい。……ねえパパ。」
シロウ「ん?」
ルーナ「初めての船旅だね。ワン○ースみたいだったらどうしよう。」
シロウ「現実はもっと地味だぞ。」
ルーナ「分かってるって。でもちょっとワクワクするじゃん。」
*ルーナがにへっと笑った。その笑顔は前世のOL時代を忘れさせるほど、無邪気だ。*
シロウ「早く寝ろ。明後日は早い。」
ルーナ「はーい。……あ、パパ。」
シロウ「何だ。」
ルーナ「ご褒美の件、忘れてないからね。帰ってきたら絶対ね。」
シロウ「……おやすみ。」
ルーナ「逃げた!」
*彼はルーナの部屋の扉を閉め、自室に戻った。ベッドに倒れ込むように横になる。*
シロウ「疲れた……。」
*メアが彼の腹の上にぴょんと飛び乗り、にゃあと鳴いた。温かい重みが心地いい。目を閉じると、すぐに意識が沈んでいった。*
*ーー明後日、海賊討伐が始まる。*
*翌朝、彼が目を覚ますと、ベッドの横の絨毯の上でルーナが大の字になって寝転がっていた。寝息を立てている。パジャマ姿で、髪が絨毯に広がり、口元には僅かによだれの跡がある。*
*どう見ても、昨夜こっそり部屋に忍び込もうとして結界に弾かれ、そのまま絨毯の上で力尽きたのだろう。結界の外側ギリギリで倒れているのがその証拠だ。*
*彼はメアを抱き上げ、ルーナの顔を見下ろした。メアが「にゃあ」と鳴いた。*
シロウ「何してんの? 泳ぎの練習?」
ルーナ「……ん……んぅ……。」
*ルーナがもぞもぞと動き、薄目を開けた。しばらくぼーっとした顔で彼を見上げていたが、やがて状況を理解したらしく、顔が一気に赤くなった。*
ルーナ「……ち、違うから! 泳ぎの練習じゃないから!」
シロウ「じゃあ何の練習だ。床で寝る練習か?」
ルーナ「……パパの結界が悪い。」
シロウ「侵入者を防ぐための結界だからな。正常に動作してる。」
ルーナ「私は侵入者じゃない! 娘!」
シロウ「夜中に親父の寝室に忍び込もうとする娘は侵入者だろ。」
ルーナ「ぐっ……。」
*ルーナが起き上がり、絨毯の跡が頬についたまま唇を尖らせた。髪がぼさぼさで、パジャマの襟元がずれている。*
ルーナ「……せめて隠し部屋の方から入ろうとしたのに、そっちにも結界追加したでしょ。」
シロウ「当たり前だ。明日出航なんだから、今日はしっかり寝ろって言っただろ。」
ルーナ「だって……3週間我慢したんだよ? ダイエットも頑張ったし、ご褒美って……。」
シロウ「帰ってきてからだ。」
ルーナ「帰ってきてから、絶対ね? 絶っっっ対ね?」
シロウ「……ああ。」
ルーナ「約束だからね。破ったら……パパの秘密の部屋のこと、レイラママにバラすから。」
シロウ「脅迫か。」
ルーナ「交渉術って言って。」
*メアがルーナの膝の上にぴょんと飛び乗り、喉を鳴らした。ルーナがメアの頭を撫でながら、にへっと笑う。*
ルーナ「メアちゃんは味方だよね~。」
メア「にゃあ。」
シロウ「……顔洗ってこい。よだれ跡ついてるぞ。」
ルーナ「えっ!?」
*ルーナが慌てて口元を拭い、顔を真っ赤にしながら部屋を飛び出していった。ドアがバタンと閉まる。*
*彼はため息をつき、メアを撫でた。*
シロウ「……明日からが本番だな。」
メア「にゃあ。」
*窓の外では、朝日がサルーナの方角を照らしていた。*
シロウ「メアも来るか? 美味しい魚食い放題だぞー?」
*メアの耳がピンと立った。黒い瞳がきらりと光り、一瞬の間もなく彼の胸に飛びついてきた。*
メア「にゃあ! にゃあ!」
*小さな前足で彼のシャツを掴み、必死にしがみつく。尻尾がブンブンと振れている。魚という単語に対する反応速度だけは、Sランク冒険者を超えている。*
シロウ「ペット参戦だな。」
*彼はメアを肩に乗せ、朝食を取りに食堂へ向かった。廊下を歩いていると、リーシアが完璧な姿勢で待ち構えていた。*
リーシア「おはようございます、陛下。明日の出航に際し、携行食と保存水を準備いたしました。航海日数は何日を想定されますか?」
シロウ「最長で2週間。」
リーシア「承知しました。2週間分、4名と猫1匹分を用意いたします。……猫の分は干し魚でよろしいですか?」
メア「にゃあ!」
リーシア「生魚がご希望ですか。氷魔法の保冷箱に入れておきます。」
シロウ「メアの言葉分かるのか。」
リーシア「メイドたるもの、あらゆる言語に通じるのは当然のことです。」
シロウ「嘘だろ。」
リーシア「はい、嘘です。ですが猫の表情は読めます。」
*彼が食堂に入ると、ルーナが既に席についていた。頬のよだれ跡はしっかり落とし、髪も整えている。ただし耳がまだ少し赤い。*
ルーナ「パパ、メアちゃんも行くの?」
シロウ「魚で釣れた。」
ルーナ「チョコで釣られた私と同じじゃん……。」
シロウ「自覚あったのか。」
ルーナ「うるさい!」
*ルーナがパンを頬張りながら、テーブルの上に広げた海図を指さした。*
ルーナ「パパ、これサルーナの南海域の地図? 昨日ハシムさんから借りてきた。」
シロウ「いつの間に。」
ルーナ「準備しろって言ったのパパでしょ。見て、ここ。赤い蛇の船団が目撃された海域、3箇所に集中してる。このあたりに拠点があるんじゃない?」
*彼が海図を覗き込んだ。ルーナの指が示す先には、小さな島嶼群が点在している。確かに、目撃情報を線で結ぶとこの海域に収束する。*
シロウ「……お前、やるな。」
ルーナ「Sランク冒険者を舐めないでよ。ダイエット以外は優秀なの。」
シロウ「ダイエット以外はな。」
ルーナ「その一言余計!」
*メアが海図の上に座り込み、にゃあと鳴いた。ちょうど島嶼群の上に黒い毛玉が鎮座している。*
シロウ「メア、そこが敵の拠点だって言いたいのか?」
メア「にゃあ。」
ルーナ「メアちゃん天才!」
シロウ「ただ座っただけだろ。」
*穏やかな朝の食卓。明日には海の上だ。彼はコーラを啜りながら、海図に目を落とした。*
*彼はラム酒の事を考えながら執務室に戻り、椅子に腰を下ろした。海図の写しを広げ、航路の確認を始める。*
シロウ「海賊と言えばラム酒だな。ボルグたちへの土産は戦利品の酒にするか……。」
*ドワーフたちは酒と聞けば目の色を変える。海賊のアジトにはきっと大量の酒が眠っているだろう。*




