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《R-15》異世界転移でスローライフを?  作者: THE・HENJIN・RlDER
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*大学に戻ると、訓練場の方から魔法の爆発音が聞こえた。覗いてみると、魔法の実技講義が行われていた。担当教員は中年の男性で、学生たちが一人ずつ的に向かって攻撃魔法を放っている。*


ギメイ(シロウ)「よっこらせ」


*彼は土魔法で観客席代わりの岩の椅子を無詠唱で生成し、腰を下ろした。メアが膝の上に飛び乗る。*


*訓練場にいた学生たちと担当教員が一斉にこちらを見た。地面から椅子が生えたのだから当然だ。*


担当教員「……ギメイ先生。見学ですか?」


ギメイ(シロウ)「うむ。暇でな。邪魔はせんから続けてくれ」


担当教員「は、はぁ……どうぞ」


*学生たちがざわめいた。昨日の講義で噂になった教員が見ている。緊張が走っているのが分かる。*


*一人の学生が的に向かって火球を放った。直径30cmほどの火球。的に当たり、焦げ跡を残す。悪くはないが、威力が分散している。*


*次の学生は風の刃。的を斜めに切り裂いたが、切れ味が甘い。*


*彼はメアの頭を撫でながら、一人一人の魔法を観察していた。神眼が自動的に各学生のステータスとスキルレベルを読み取っている。*


シロウ(火属性Lv.3か……詠唱は丁寧だが、イメージが曖昧だな。あの風の子はLv.4だが、魔力の流れに無駄が多い)


*その時、前列に見覚えのある金髪の学生が立った。昨日質問してきた貴族の子弟、アレクシスだ。*


アレクシス「《紅蓮の息吹よ、我が敵を焼き尽くせ――フレイムバースト》!」


*放たれた火球は先ほどの学生の倍ほどの大きさだった。的を直撃し、木製の的が半壊する。周囲から拍手が起きた。*


アレクシス「……ふっ」


*得意げに髪をかき上げるアレクシス。だが彼の神眼は見逃さなかった。*


*彼はメアの背を撫でながら、学生たちの実技を静かに観察していた。*


シロウ(詠唱魔法の良い所は、唱えさえすればそれなりの形になる。魔力の流れを詠唱が補正してくれるからな。だが……成長の天井が低くなりがちだ。詠唱に頼りすぎると、自分の魔力操作が鈍る)


*アレクシスが得意げに周囲を見渡している。確かに学生の中では上位の実力だ。だが、彼の目から見れば改善点は山ほどある。*


シロウ(……まあ、俺の講義じゃない。口は出さん)


*担当教員のバルトという名の中年男性が、学生たちに指導を続けている。的確ではあるが、やや教科書通りの指導だ。*


バルト「次、リーゼ・ハイドフェルド」


*一人の女子学生が前に出た。栗色の髪をポニーテールにまとめた快活そうな少女だ。彼女は杖を構え、詠唱を始めた。*


リーゼ「《大地の牙よ、敵を穿て――アースランス》!」


*地面から石の槍が三本突き出した。的に向かって飛ぶが、一本は逸れ、二本は的に当たったものの浅く刺さっただけだった。*


リーゼ「……くっ」


*悔しそうに唇を噛む。周囲からは特に反応がない。平凡な結果だった。*


シロウ(土属性Lv.3……いや、Lv.4に片足突っ込んでるな。魔力量は悪くない。イメージの精度が足りてないだけだ。伸びしろはある)


*彼はそう分析しながらも、黙って座っていた。メアが膝の上であくびをする。*


*次々と学生が実技をこなしていく。その中に、見覚えのある金髪の少女が並んでいた。*


シロウ(……ステラ)


*ステラが前に出た。杖は持っていない。周囲の学生がざわつく。*


バルト「ステラ・アストライア。準備はいいか」


ステラ「はい」


*ステラが片手を前に翳した。詠唱なし。彼女の掌から冷気が渦を巻き、氷の槍が三本形成された。それが的に向かって射出される。三本とも的の中心を正確に貫いた。的が凍りつき、粉々に砕け散る。*


*訓練場が静まり返った。*


アレクシス「……無詠唱、だと?」


バルト「……見事だ。満点だ、良くやった…」


ステラ「ありがとうございます」


*ステラが小さく一礼し、列に戻った。彼女の視線が一瞬だけ、岩の椅子に座る彼の方に向いた。目が合う。ステラが微かに口角を上げた。*


シロウ(……やるじゃねえか、ステラ)


*彼は表情を変えず、メアの頭を撫でた。だが心の中では、娘の成長に目を細めていた。*


メア「にゃあ」


*メアが彼の手に頭を擦り付けた。午後の訓練場に、学生たちのざわめきが戻り始めていた。*


*学生たちがステラの周りに集まった。*


学生A「ステラさん、無詠唱ってどうやって……?」


学生B「教えてくれない? コツとか」


ステラ「えっと……イメージを明確にして、魔力の流れを自分で制御する感じ、です」


*ステラが丁寧に答えている。だが一人の学生が目を見開いた。*


学生C「待って。ステラ・"アストライア"って……西大陸の魔導皇国の?」


*周囲が一瞬静まった。だがすぐにざわめきは収まる。*


アレクシス「……ああ、魔王シロウの娘か。道理で無詠唱が使えるわけだ」


学生D「でも別に珍しくないだろ。隣のクラスにグランディア帝国の第三皇子いるし」


学生E「うちのゼミにはエルフの王族もいるよ」


*ステラが苦笑いしていた。アカデメイア総合大学は大陸中から人材が集まる最高学府だ。王族や貴族の子弟は珍しくない。北の帝国、東の連合、南の島嶼国家群、そしてシロウの魔導皇国。各国の次世代がここで学んでいる。*


ステラ「父は……その、ちょっと有名すぎるので、あまり気にしないでもらえると」


学生A「全然気にしないよ。それより無詠唱教えて!」


*ステラが笑顔で頷いた。数人の学生と話し込み始める。馴染んでいる。*


シロウ(……よかった。ちゃんと友達作れてるじゃねえか)


*彼はメアの耳の後ろを掻きながら、娘の姿を眺めていた。岩の椅子の上で足を組み、何食わぬ顔を装っている。だが口元が僅かに緩んでいた。*


*担当教員のバルトが彼の方へ歩いてきた。*


バルト「ギメイ先生、せっかくですから何か一言、学生たちに頂けませんか。実技の助言など……」


ギメイ(シロウ)「……儂の講義ではないからの。バルト殿の指導を邪魔するつもりはない」


バルト「いえ、むしろお願いしたいくらいです。昨日の講義の評判は凄まじかったですから」


シロウ(面倒くさいな……でもまあ、断るのも角が立つか)


*彼がメアを膝から降ろし、立ち上がった。岩の椅子に腰掛けたまま、訓練場の学生たちに声を掛けた。*


ギメイ(シロウ)「一つだけ言うておく。詠唱魔法は優秀な技術じゃ。恥じることは何もない。だがな――」


*彼はメアを膝の上に戻した。*


ギメイ(シロウ)「詠唱に頼りすぎると、自分の魔力が何を望んでいるか、分からなくなる時が来る。たまには詠唱を捨てて、自分の魔力と向き合ってみるといい」


*学生たちが真剣な顔で聞いている。ステラが小さく微笑んでいた。*


ギメイ(シロウ)「そんじゃのう。無詠唱を極めるとこういうかっこいい技を使えるようになるぞえ」


*彼は岩の椅子から降り、訓練場の木人に向かって歩いていった。学生たちが道を開ける。メアが足元をちょこちょこと付いてきた。*


*彼は歩きながら右手を軽く掲げた。風属性と闇属性の魔力が同時に練り上げられる。周囲の空気がびりびりと震えた。*


ギメイ(シロウ)「インフィニティ・ソードスマッシュ!」


*彼が木人に向かって手を翳した瞬間、木人の周囲の空間が歪んだ。闇魔法で幻影を纏った半透明の風の剣が、虚空から次々と出現する。5本、10本、20本――数え切れない剣が木人を取り囲むように浮遊した。*


*そして一斉に突き刺さった。*


*ズガガガガッ、と凄まじい音が訓練場に響き渡る。風の刃が木人を貫き、闇の幻影が残像を残して消える。木人は原形を留めていなかった。粉砕された木片が宙を舞い、彼が軽く手を振ると風で散らされた。*


*訓練場が完全に静まり返った。*


ギメイ(シロウ)「ま、こんな感じかの」


*彼はぱんぱんと手を払い、何でもないことのように振り返った。*


学生A「……え」


学生B「二属性同時……しかも無詠唱で……あの数……」


アレクシス「……馬鹿な。あれは一体何本あった?」


リーゼ「……50本は、あったと思う」


*学生たちの顔が青ざめている者、目を輝かせている者、呆然としている者、様々だった。担当教員のバルトは口を開けたまま固まっている。*


バルト「……ギメイ先生。あれは何級の魔法ですか」


ギメイ(シロウ)「さあのう。適当に組み合わせただけじゃ。名前も今考えた」


*学生たちがずっこけた。*


学生C「名前今考えたって!」


学生D「適当であれかよ……」


*ステラが列の後方で額に手を当てていた。小さくため息をついている。*


ステラ(……パパ、楽しんでるでしょ。技名叫ぶの好きだもんね……)


*だがステラの口元は微かに笑っていた。*


*アレクシスが彼の前に進み出た。*


アレクシス「ギメイ先生。一つお聞きしたい。あの技……闇属性で幻影を作り、風属性で実体の刃を形成している。つまり相手には剣の本数も軌道も読めないということですか」


ギメイ(シロウ)「ほう。よく見ておるな」


*彼はアレクシスを見た。神眼が自動的に彼のステータスを読み取る。火属性Lv.5、風属性Lv.3。観察眼は鋭い。*


ギメイ(シロウ)「その通りじゃ。幻影と実体が混在するから、防御が極めて難しくなる。無詠唱だからこそ、二つの属性を同時に細かく制御できるわけじゃな」


*学生たちが必死にメモを取り始めた。バルトも慌てて手帳を取り出している。*


メア「にゃあ」


*メアが彼の足元で欠伸をした。主人の派手な実演にはもう慣れっこらしい。*


ギメイ(シロウ)「すまんすまん、先生の時間を奪ってしもうた」


*彼は軽く手を振りながら訓練場の後方に戻り、岩の椅子に再び腰を下ろした。メアがぴょんと膝の上に飛び乗り、定位置に収まる。*


バルト「い、いえ! 大変参考になりました。では皆、続きを――」


*バルトが慌てて授業を再開する。だが学生たちの集中力は明らかに乱れていた。さっきの実演が脳裏に焼き付いているのだろう。的に向かって魔法を放つ学生たちの何人かが、詠唱の途中で言葉を止め、無詠唱を試みては失敗している。*


学生A「……くそ、イメージが纏まらない」


学生B「無理無理。いきなりできるわけないって」


*リーゼが再び前に出た。先ほど石槍を放った栗色ポニーテールの少女だ。彼女は杖を構え――途中で杖を降ろした。*


リーゼ「……」


*彼女は素手で的に向き直った。目を閉じ、深く息を吸う。数秒の沈黙の後、掌を前に突き出した。*


*地面がびくりと震えた。小さな石の槍が一本だけ、地面から生えた。的には届かず、途中で崩れ落ちる。*


リーゼ「……やっぱり駄目か」


バルト「ハイドフェルド、無理に無詠唱を試す必要は――」


リーゼ「もう一度やらせてください」


*リーゼが再び手を翳す。今度は先ほどより少し大きい石槍が生まれた。だがやはり途中で形が崩れる。*


シロウ(……根性あるな、あの子。魔力の方向性は悪くない。ただ、イメージを固める前に魔力を放出してる。もう少し溜めてから撃てば形になるんだが)


*彼は口を出さなかった。これはバルトの講義だ。だが無意識に、メアの頭を撫でる手が止まっていた。*


*ステラが列の中からリーゼの背中を見つめていた。そしてそっとリーゼの隣に歩み寄った。*


ステラ「リーゼさん、少しだけいい?」


リーゼ「え……ステラさん?」


ステラ「魔力を出す前に、3秒だけ止めてみて。石の形を頭の中で完成させてから、一気に流すの」


リーゼ「3秒……」


*リーゼが目を閉じた。今度は焦らず、掌に魔力を溜めた。1秒、2秒、3秒――掌から石の槍が形成され、的に向かって飛んだ。*


*ガンッ、と乾いた音。槍は的の端に刺さった。小さいが、確かに刺さっていた。*


リーゼ「……当たった」


ステラ「うん、すごい。初めてでここまでできるの、才能あるよ」


*リーゼの顔がぱっと明るくなった。*


シロウ(……ステラ。お前、教えるの上手いじゃねえか)


*彼は岩の椅子に深く腰掛け、娘の姿を見守っていた。メアが喉を鳴らしている。穏やかな午後の訓練場に、学生たちの声が賑やかに響いていた。*


*彼は木と木の間にハンモックを括り付けた。木が傷まないよう保護魔法を施し、ロープには重力分散の魔法を付与する。完璧な仕上がりだ。*


ギメイ(シロウ)「よっこらせ……」


*ハンモックに身体を預けた瞬間、全身の力が抜けた。木漏れ日が揺れるハンモックの隙間から降り注ぎ、秋風が心地よく頬を撫でる。*


ギメイ(シロウ)「やばい……ぞ、これは寝る……」


*メアがハンモックの端からぴょんと飛び乗り、彼の腹の上で丸くなった。ごろごろと喉を鳴らす振動が、まるで子守唄のようだった。*


ギメイ(シロウ)「zzz……」


*数秒で彼は深い眠りに落ちた。SSランク冒険者にして魔王。その寝顔は、ただの疲れたおっさんだった。*


---


*どれほど経っただろうか。*


*ハンモックが揺れた。誰かが彼の頬をつんつんと突いている。*


ステラ「……パパ。パパってば」


*ステラが横に立っていた。鞄を肩に掛け、授業帰りの様子だ。周囲に人がいないことを確認してから、小声で呼びかけている。*


ステラ「もう夕方だよ。ここで寝っぱなしだったの?」


メア「にゃあ」


*メアが彼の腹の上で伸びをした。ステラがメアの頭を撫でる。*


ステラ「メアちゃんも付き合わされて……大変だね」


*彼はまだ目を覚まさない。穏やかな寝息を立てている。ステラが小さくため息をついた。*


ステラ「……今日の実技の授業、見てたでしょ。急に派手な技出して。あれ絶対楽しんでたよね」


*返事はない。寝ている。*


ステラ「……パパの授業、みんな絶賛してたよ。リーゼさんなんて『ギメイ先生の弟子になりたい』って言ってた」


*ステラが彼の寝顔を覗き込んだ。白髪が数本混じった黒髪。変装魔法の上からでも分かる、穏やかな寝顔。*


ステラ「……ありがとね、パパ。ここに来てくれて」


*小さな声で呟いて、ステラは彼の上に掛かっていた落ち葉を一枚そっと払った。*


ステラ「ママに伝えておくね。パパがここで寝てるって。……晩ご飯までには起きてよ?」


*ステラが踵を返し、寮の方へ歩いていった。夕陽が訓練場の向こうに沈みかけている。*


*彼はハンモックの上で寝返りを打った。メアが不満そうに鳴いたが、すぐにまた丸くなる。*


*秋の夕暮れ。大学の喧騒が遠くなり、静かな時間が流れていた。*


ーー


*DAY 4、朝。彼は変装魔法でギメイの姿を整え、教員寮を出た。今日は自分の講義がない日だ。*


シロウ(今日はルミナの講義を覗きに行くか。どんな授業してるのか気になるしな)


*彼はメアを肩に乗せ、校舎の東棟へ向かった。ルミナの担当は「神聖魔法概論」。大講義室が割り当てられている。*


*講義室に近づくと、廊下にまで学生が溢れていた。*


学生A「やばい、今日も満席じゃん」


学生B「ルミナ先生の講義、履修者じゃなくても聴講しに来る奴多すぎ」


学生C「だって可愛いんだもん。しかも教え方も上手いし」


*彼は人混みに紛れて講義室の後方扉からそっと入った。最後列の端に空席を見つけ、静かに腰を下ろす。メアが膝の上に収まった。*


シロウ(すごい人気だな……満席どころか立ち見まで出てるぞ)


*大講義室は300人は入る広さだが、ほぼ全ての席が埋まっていた。前列には熱心にノートを広げる学生、中列にはルミナを見つめるだけの学生、後列には他学部からの聴講生。男女比は明らかに男子が多い。*


*チャイムが鳴った。講義室の前方の扉が開く。*


*ルミナが入ってきた。*


*銀髪のロングヘアが揺れる。すらりとしたモデル体型に教員用のローブを纏い、胸元には大学の紋章。背筋を伸ばして歩く姿は凛として美しい。*


*講義室が一瞬静まり返り、直後にざわめきが広がった。*


学生D「天使だ……」


学生E「今日も美しい……」


*ルミナが教壇に立ち、学生たちを見渡した。その表情はきりりと引き締まっている。シロウ以外に向ける、いつものキツい顔だ。*


ルミナ「はい、静かに。始めます」


*一言で講義室が静まった。ルミナが黒板に向かい、チョークを手に取る。*


ルミナ「前回は神聖魔法の基礎属性分類まで進みました。今日は実際の回復魔法の構造に入ります。教科書42ページを開いて」


*学生たちが一斉に教科書を開く。ルミナの授業は見た目に反して厳しいことで有名らしく、前列の学生たちの顔は真剣だった。*


*ルミナが黒板に回復魔法の魔力循環図を描き始めた。その筆致は正確で、元熾天使としての神聖魔法の知識が如実に表れている。*


シロウ(へえ……ルミナ、教えるの上手いな。図も分かりやすいし、声もよく通ってる)


*彼はメアの頭を撫でながら、妻の講義を楽しんでいた。*


*彼は隠匿神を発動した。存在そのものが空間に溶け込み、気配が完全に消失する。膝の上のメアも一緒に効果範囲に包まれ、二人とも誰にも認識されなくなった。*


シロウ(よし。これで誰にも気づかれない。ルミナの素の授業が見れるぞ)


*最後列の席に座っていた彼の存在に、隣の学生も気づいていない。透明な観察者となった彼は、教壇のルミナに視線を向けた。*


*ルミナが黒板に回復魔法の魔力循環図を描き終え、学生たちに向き直った。*


ルミナ「回復魔法の本質は、対象の生命力を補填することではありません。対象の肉体が本来持つ修復機能を、神聖魔力で加速させるものです。ここを間違えている教科書が多いので、訂正しておきます」


*ルミナの声は凛として通りが良い。教壇に立つ姿は堂々としていて、元熾天使としての威厳が滲み出ていた。*


学生F「先生! じゃあ生命力が尽きた対象には回復魔法は効かないんですか?」


ルミナ「いい質問です。基本的には効きません。ですが――」


*ルミナがチョークを持ち替え、黒板に新たな図を描いた。*


ルミナ「上位の神聖魔法になると、術者の生命力を一時的に対象へ移植することで、修復の起点を作ることが可能になります。これが蘇生魔法の原理です」


*学生たちが感嘆の声を上げた。前列の学生が猛烈にノートを取っている。*


シロウ(すげえな。教科書の間違いまで指摘してる。さすが元熾天使、神聖魔法の本質を知り尽くしてるだけある)


*ルミナが教壇を歩きながら説明を続ける。ローブの裾が揺れ、銀髪が背中で光を弾いた。説明の合間に学生の質問にも丁寧に答えている。*


*だが、シロウ以外の人間に向ける表情は、やはりどこか冷たい。丁寧だが距離がある。彼の前でだけ見せる甘えた表情とは全くの別人だ。*


シロウ(このギャップがたまらんのよな……。あの冷たい顔のルミナが、二人きりになると「お兄ちゃん」って甘えてくるんだぞ。最高か)


*ルミナが実演に移った。教壇の上に置かれた傷のついた実験用マネキンに手を翳す。*


ルミナ「では実際に見せます。中級回復魔法、キュアヒール」


*ルミナの掌から柔らかな金色の光が溢れた。傷のついたマネキンの表面が見る見るうちに修復されていく。光の粒子が舞い散り、講義室全体が淡い輝きに包まれた。*


*学生たちから感嘆のため息が漏れた。*


学生G「きれい……」


学生H「ルミナ先生が光に包まれてる……女神みたいだ」


*ルミナの銀髪が金色の光に照らされ、幻想的な光景を作り出していた。*


シロウ(……かわいい)


*彼は頬杖をつきながら、ルミナの一挙一動を眺めていた。厳しい表情で学生を指導する姿、黒板に向かう横顔、質問に答える時の僅かな目の動き。全部かわいい。*


*講義が終わりに近づいた頃、一人の男子学生が教壇に歩み寄った。金の刺繍が入ったマントを羽織り、身なりは明らかに上流階級。胸元には見覚えのある紋章が輝いていた。*


シロウ(あれは……東部連合のどっかの王族か?)


*男子学生はルミナの前で膝をつき、芝居がかった仕草で手を差し出した。*


王族の学生「ルミナ先生。私はグランディア帝国第二皇子、レオナルド・フォン・グランディアと申します。先生の美しさと知性に心を打たれました。どうか今夜、食事でもご一緒していただけませんか」


*講義室がざわついた。第二皇子といえば帝国の有力な後継者候補だ。学生たちが固唾を飲んで見守る。*


*ルミナは教壇の上で資料を整えていた手を止め、レオナルドを見下ろした。その目は氷のように冷たい。*


ルミナ「お断りします」


レオナルド「せ、せめて理由だけでも……」


ルミナ「理由?」


*ルミナが鼻で笑った。口角が僅かに上がり、冷笑を浮かべる。*


ルミナ「私の夫と比べるのも烏滸がましいからです。帝国の皇子程度では、話にもなりません」


*講義室が凍りついた。レオナルドの顔が真っ赤になる。*


レオナルド「け、結婚されていたのですか……」


ルミナ「ええ。これ以上私の時間を無駄にしないでください。次の講義の準備がありますので」


*ルミナが資料をまとめ、さっさと教壇を降りた。レオナルドは膝をついたまま石像のように固まっている。周囲の学生が気の毒そうに見ていた。*


学生A「うわぁ……皇子でもダメか」


学生B「ルミナ先生の旦那って何者だよ……」


学生C「前も貴族の息子が撃沈してたぞ。もう諦めろって」


シロウ(……恥ずかしいからそんなに持ち上げんなよルミナ。「帝国の皇子程度では話にもならない」って、お前……)


*彼は隠匿神で消えたまま、顔が熱くなるのを感じていた。メアが膝の上で尻尾を振っている。主人の動揺を感じ取っているらしい。*


シロウ(でも……あの冷たい顔で他の男を一蹴するルミナ、正直めちゃくちゃかわいいんだよな……)


*ルミナが講義室の後方出口に向かって歩いてくる。彼が座っている列のすぐ横を通り過ぎようとした瞬間――ルミナの足が僅かに止まった。*


*ルミナの鼻がひくりと動いた。彼女は周囲を見回し、一瞬だけ怪訝な顔をした。*


ルミナ「……」


*だがすぐに歩き出し、講義室を出ていった。*


シロウ(……危ねえ。気配は消してたけど、匂いまでは消してなかったか? ルミナ、鼻がいいからな……)


*メアが彼の手をぺろりと舐めた。*


メア「にゃあ」


シロウ(バレてはいない……はずだ。多分)


*彼は認識阻害と防音の結界を講義室全体に展開し、変装魔法を解いた。ギメイの姿が消え、黒髪のシロウが現れる。*


*その瞬間だった。*


*ルミナが彼の胸に飛び込んできた。細い腕が首に回され、柔らかい胸が押し付けられる。銀髪がふわりと彼の顔にかかった。*


シロウ「おっ……と……」


ルミナ「……お兄ちゃん」


*さっきまでの鋭い目付きが嘘のように、声が甘く蕩けていた。彼の首筋に顔を埋め、すんすんと匂いを嗅いでいる。*


ルミナ「やっぱりお兄ちゃんの匂い。講義中からずっとしてた……集中できなかったの。」


シロウ「ごめんごめん。ルミナの授業見てみたくてさ」


ルミナ「……見てたなら、感想は?」


シロウ「すごく分かりやすかった。教え方上手いし、実演も綺麗だった。俺の嫁、天才だな」


ルミナ「っ……♡」


*ルミナが彼の胸に顔を擦り寄せた。きゅう、と腕に力が込もる。*


ルミナ「……ストーカーは許さない。でも、褒めてくれたから、少しだけ減刑してあげる。」


シロウ「厳しいな」


ルミナ「当然。隠れて覗くなんて……普通に来てくれたらよかったのに」


シロウ「だって、俺がいたらルミナ素の授業できないだろ」


ルミナ「……それは、そうだけど」


*ルミナが顔を上げた。さっきまで学生を一蹴していた冷たい表情はどこにもない。頬を薄く染め、唇を尖らせて彼を見上げている。*


ルミナ「あの皇子に告白されたの、見てたよね?」


シロウ「ああ。『帝国の皇子程度では話にもならない』って。かっこよかったぞ」


ルミナ「だって本当のことだもん。お兄ちゃんと比べたら、あんなの……」


*ルミナが彼のシャツの襟を指先で弄んだ。*


ルミナ「お兄ちゃん以外の男に興味ない。一生」


シロウ「……かわいいな、お前」


ルミナ「かわいくないよ。事実を言ってるだけ」


*そう言いながら、ルミナの耳は真っ赤だった。彼はルミナの腰に手を回し、そっと抱き締め直した。メアが足元でにゃあと鳴き、二人の邪魔をしないよう講義室の隅へとことこ歩いていった。*


ルミナ「……次の講義まで、あと30分あるんだけど…?」


シロウ「ん?」


ルミナ「30分、お兄ちゃんを独り占めしていい?」


*ルミナが彼の胸に額をこつんと当てた。小さな声だった。*


シロウ「いいよ」


*彼はルミナの銀髪を優しく梳いた。ルミナがくすぐったそうに目を細める。講義室の結界の中、二人だけの時間が静かに流れていた。*


*数日後、休日。彼はルミナと共に転移魔法で城へ戻ってきた。大学生活も楽しいが、やはり家が恋しくなる。*


シロウ「ただいまー。ルクスの顔見に来たぞ」


ルミナ「ルクス、ママ帰ってきたよー」


*二人で寝室の扉を開けた。*


*そこにはルーナがいた。床に寝転がったルクスの小さな腹に顔を押し付け、すりすりと頬擦りしている。ルクスはきゃっきゃと笑い声を上げていた。*


ルーナ「ルクスー、お姉ちゃんのこと好きー? 好きだよねー? この柔らかいお腹たまんないー」


ルクス「きゃはっ」


ルーナ「かわいいいいい! 天使! いや天使超えてる! 神! 神だった! 文字通り!」


*彼とルミナは顔を見合わせた。そっと扉を閉めた。*


シロウ「……見なかったことにするか」


ルミナ「……うん」


*廊下に二人で立ち尽くす。数秒の沈黙。*


ルミナ「……でも、ルーナがちゃんと面倒見てくれてるのは助かるね」


シロウ「まあな。溺愛が過ぎる気もするが」


*扉の向こうからルーナの声が聞こえてくる。*


ルーナ「ルクスー、お姉ちゃんが英語教えてあげるねー。Apple! りんご! はい、リピートアフターミー!」


ルクス「あぶー」


ルーナ「天才! ルクスは天才!」


シロウ「……あれ、1歳児に英語教えようとしてるな」


ルミナ「前世の記憶が悪い方向に活きてるね……」


*彼はもう一度扉を開けた。今度はノックしてから。*


シロウ「ルーナ、父さん帰ってきたぞ」


*ルーナが顔を上げた。ルクスの腹に顔を押し付けたまま、首だけこちらを向く。頬にはルクスの涎がついていた。*


ルーナ「あ、お父さん! ルミナママも! おかえりー!」


*ルーナがルクスを抱き上げて立ち上がった。ルクスが小さな手を彼に向かって伸ばしている。*


ルクス「あー、あー」


ルミナ「ルクスー! ママに見せて、その手!」


*ルミナが駆け寄り、ルーナからルクスを受け取った。小さな身体を抱き締め、頬擦りする。さっきのルーナと全く同じ動きだった。*


シロウ(……親子だな)


ルーナ「で、大学どう? ステラ元気?」


シロウ「ああ、元気だ。友達もできたみたいだし、無詠唱で他の学生に教えたりもしてた」


ルーナ「さすがステラ。あ、そうだ父さん」


*ルーナが彼の袖を引いた。少し声を落とす。*


ルーナ「ユキがさ、最近ちょっと拗ねてるんだよね。私がルクスにかまいすぎてるって」


シロウ「お前……始祖竜を拗ねさせるなよ」


ルーナ「だってルクスが可愛すぎるのが悪い!」


*廊下の奥から、きゅい、と寂しげな鳴き声が聞こえた。*


*廊下の奥から、きゅいぃぃ……と寂しげな鳴き声が響いてきた。ルーナが気まずそうに頬を掻く。*


ルーナ「あー……またあの声……」


シロウ「可哀想に……俺と大学来るか? たまには大空を羽ばたいたり……広い草原を駆け回ったり……」


*彼が廊下の奥に向かって声をかけた瞬間、足音が響いた。*


ユキ「きゅいっ!?」


*ユキの目が一気に輝いた。ぱたぱたと彼の元に駆け寄り、その袖を口でぎゅっと掴む。*


ユキ「きゅい! きゅいきゅい!」


シロウ「よしよし。大学は広い草原もあるし、近くに山脈もある。思いっきり飛べるぞ」


*ユキが尻尾をぶんぶん振った。翼もぱたぱたと小刻みに動いている。完全に犬みたいだった。*


ルーナ「え、ちょっと! ユキ、ルーナを置いてくの!?」


ユキ「きゅい」


*ユキがぷいっとルーナから顔を背けた。完全に拗ねモードだ。*


ルーナ「うそ、マジで怒ってる……ユキー! ごめんってー! ルーナ、ルクスにかまいすぎたよね!? ユキも可愛いよ!?」


ユキ「きゅい……」


*ユキが彼の腕にしがみつき、チラッとだけルーナを見た。その目は「もう遅い」と語っていた。*


ルミナ「ふふ、ルーナ。自業自得ね」


*ルミナがルクスを抱いたまま、くすくすと笑っている。ルクスもきゃはっと笑った。*


ルーナ「母さんまでー!」


シロウ「じゃあユキ、俺が休みの日に一緒に行こう。大学にいる間は好きに飛び回っていいからな」


ユキ「きゅいっ!♪」


*ユキが彼の腕にすりすりと頬を寄せた。尻尾の振りが更に加速する。*


ルーナ「父さんずるい……ユキの信頼回復するの私なのに……」


シロウ「普段からちゃんと構えよ。ルクスだけじゃなく」


ルーナ「うぐ……正論が痛い……」


*ユキが勝ち誇ったように、きゅい、と一声鳴いた。彼はユキの頭をぽんぽんと撫でてやった。*


シロウ(しかし始祖竜を連れて大学か……まあ大丈夫だろ…多分)


*彼はユキを両腕で抱っこしたまま、大学の正門に立っていた。ユキは中型犬サイズに縮んでおり、彼の腕の中できょろきょろと周囲を見回している。*


シロウ「ちーっす、学長から聞いてる?」


*門番の兵士が二人、彼の姿を見て目を丸くした。片方が慌てて書類を確認する。*


門番A「し、シロウ・ニシキ・アストライア殿!? アストライア魔導皇国の……SSランク冒険者の!?」


門番B「は、はい! 学長からの通達がございます! ギメイ先生の代理として、臨時講師をお務めいただくと……」


*門番Bが書類を読み上げる手が震えていた。*


門番A「ほ、本物ですよね……? まさか魔王陛下ご本人が正門から来るなんて……」


シロウ「あー、あんまり大げさにしないでくれ。普通に来ただけだから」


ユキ「きゅい」


*ユキが彼の腕の中で欠伸をした。門番二人がユキに視線を移す。*


門番B「その、お連れの……ペットですか?」


シロウ「まあ、そんなもんだ。おとなしいから心配いらないよ」


*始祖竜をペット扱い。ユキ本人は気にしていないようで、彼の胸にすりすりと頬を寄せている。*


門番A「は、はい! どうぞお通りください! 学長がお待ちかねと伺っております!」


*門を通った途端だった。正門の近くにいた学生たちが彼に気付き始めた。*


学生A「え、あれ……誰? 教員じゃないよな?」


学生B「黒髪……あの顔、どっかで見た事……」


学生C「ちょっと待って。あれ、魔王シロウじゃない!? 掲示板に貼ってあった肖像画と同じ顔だ!」


学生D「嘘!? SSランク冒険者の!?」


*ざわめきが一気に広がった。学生たちが次々と足を止め、彼の方を見ている。何人かはすでに駆け寄ろうとしていた。*


シロウ(あー……やっぱこうなるか……)


*彼は自由な片手でユキの背中を撫でながら、中庭の石畳を歩いた。視線が集まる。ひそひそ声が聞こえてくる。*


女子学生「え、かっこいい……おじさまって感じ……」


男子学生「マジかよ、あの伝説の……生きてる間に会えるとは思わなかった」


女子学生B「腕に抱いてる子、何あれ可愛い……」


ユキ「きゅいっ♪」


*ユキが褒められたのを理解したのか、嬉しそうに尻尾を振った。*


*すると、正面の校舎から小柄な老人が小走りで駆けてきた。学長のマグナスだ。白い髭を揺らし、息を切らしている。*


マグナス「シロウ殿! お待ちしておりました! いやはや、ギメイ先生から置き手紙をいただいた時は驚きましたが、まさかSSランク冒険者にして魔王陛下ご本人が直々に……! 光栄の極みでございます!」


シロウ「大げさだって。ギメイの代わりに臨時で入るだけだから」


マグナス「いえいえ! 大学としても、これほどの名誉はありません! 学生たちにとっても最高の経験になるでしょう!!」


*彼が学生たちに囲まれて対応していた時だった。背後から柔らかい感触が押し付けられ、細い腕が腰に回された。*


ルミナ「お兄ちゃん、来てたんだ」


*甘い声。さっきまで講義室で氷の女王と呼ばれていたルミナが、頬を彼の背中に擦り寄せている。その顔はとろけるように幸せそうだった。*


*周囲が凍りついた。*


学生A「え……ルミナ先生……?」


学生B「あのルミナ先生が……抱きついてる……?」


女子学生「可愛い顔してる……初めて見た……」


*ざわめきが爆発的に広がる。ルミナの講義を受けている学生たちは目を疑っていた。あの鉄壁の、誰にも靡かない、皇子すら鼻で笑ったルミナ先生が、猫のように甘えている。*


*そこへ、数人の男子学生が歩み寄ってきた。先日ルミナに振られたレオナルドと、その取り巻きの貴族たち。レオナルドの顔は怒りで赤く染まっていた。*


レオナルド「待て! 貴様、ルミナ先生に何をした! 先生を誑かしたのか!」


貴族の学生「SSランク冒険者だからといって、教員に手を出すのは許されないぞ!」


レオナルド「先生はあの日、『夫がいる』と仰った。まさか……貴様がその夫だと言うのか!」


*レオナルドが彼を指差した。周囲の学生が息を呑む。*


*ルミナが彼の背中から顔を出し、レオナルドを見た。その瞬間、表情が切り替わった。甘さが消え、冷たい目が戻る。*


ルミナ「そうですが、何か?」


レオナルド「っ……!」


ルミナ「あの時言ったはずです。『帝国の皇子程度では話にもならない』と。私の夫は魔王であり、SSランク冒険者です。比べること自体が失礼だと、まだ理解できませんか?」


*ルミナが彼の腕にぎゅっとしがみつき直した。所有権を主張するかのように。*


貴族の学生「だ、だからといって、教員同士で公然と……」


ルミナ「教員? この人は臨時講師です。そして私の夫です。夫に抱きつくのに誰かの許可が必要ですか?」


*完全な正論だった。貴族の学生が言葉に詰まる。*


ユキ「きゅいっ」


*ユキが彼の腕の中から顔を出し、レオナルドに向かって小さく威嚇した。*


レオナルド「ぐ……覚えていろ……!」


*レオナルドが歯を食いしばりながら踵を返した。取り巻きもそそくさとついていく。*


*ルミナが再び彼を見上げた。冷たい目が一瞬で蕩けた。*


ルミナ「……お兄ちゃん、ユキも連れてきたんだ。今日はずっと一緒にいられる?」


*彼はルミナの頬に軽くキスを落とした。*


シロウ「ごめんな、今日はユキと遊ぶって決めてるからさ」


*周囲の学生たちが一斉にどよめいた。*


男子学生A「えっ……あのルミナ先生の誘いを断った……?」


男子学生B「正気か……? 俺なら土下座してでもOKするぞ……」


レオナルド「ば、馬鹿な……あの女神のような方を……」


*ルミナの表情が一瞬、ぴくりと動いた。唇が僅かに尖る。*


シロウ「2~3日はユキと遊ぶから時間作れないんだ」


*そう言いながら、ルミナの頬にキスをした。*


女子学生たち「「「きゃあああ!!!」」」


女子学生A「今キスした! 頬にキスした!」


女子学生B「なにあれ尊い……尊すぎる……」


女子学生C「ルミナ先生の顔見て! 耳真っ赤!」


*男子学生たちからは凄まじい嫉妬の念が飛んでくる。殺意に近い視線もあった。*


男子学生C「あの野郎……ルミナ先生にキスしておいて断るとか……贅沢すぎるだろ……」


男子学生D「人生イージーモードかよ……」


*ルミナは頬を染めたまま、彼の袖をきゅっと掴んだ。*


ルミナ「……ユキの方が優先なんだ」


シロウ「拗ねてたからな。ちゃんと構ってやらないと」


ルミナ「……私も拗ねたら構ってくれる?」


シロウ「お前はいつも構ってるだろ」


ルミナ「……足りない」


*小さな声だった。だが周囲の学生には丸聞こえだった。*


女子学生B「ルミナ先生かわいい……あんな顔するんだ……」


*ユキが彼の腕の中から顔を出し、ルミナの手をぺろりと舐めた。*


ユキ「きゅい」


ルミナ「……ユキ、お兄ちゃんを借りるのは3日だけだからね」


ユキ「きゅいっ」


*ユキが元気よく鳴いた。彼はルミナの頭をぽんと撫でた。*


シロウ「3日経ったら、ちゃんとルミナの時間も作るから」


ルミナ「……約束ね」


*ルミナが名残惜しそうに手を離した。彼女は一つ深呼吸すると、表情を切り替えた。冷たい氷の女王の顔が戻る。周囲の学生たちに向き直り、鋭い目で一掃した。*


ルミナ「何を見ているんですか。次の講義に遅れますよ」


学生たち「「「は、はいっ!」」」


*蜘蛛の子を散らすように学生たちが去っていく。ルミナがちらりと振り返り、彼にだけ見える角度で小さく手を振った。*


シロウ(……かわいいな、ほんと)


*ユキが彼の腕の中で尻尾をぶんぶん振っている。早く遊びに行きたいらしい。*


*彼はユキを抱っこしたまま、大学の図書館へ足を向けた。巨大な木造建築で、蔦が壁面を覆っている。重厚な扉を押し開けて中に入った。*


*図書館の中は静寂に包まれて――いなかった。*


学生A「うわ、本物だ! 肖像画の人!」


学生B「し、静かに! ここ図書館……でも本物だ!」


司書「しーっ! 静粛に……あら」


*司書のエルフの女性が彼を見て、眼鏡の奥の目を丸くした。そしてそのまま固まった。*


シロウ(こうなる事は分かってたけどな……)


*彼は覚悟していた分、動じずに歩を進めた。学生たちがひそひそ声で囁き合いながらも、一応は図書館のマナーを守ろうとしている。その努力は認めたい。*


*奥へ進むと、すぐに見つかった。*


*図書館の中央ホール、吹き抜けの壁面に巨大な肖像画が飾られていた。金の額縁に収められ、「SSランク冒険者 シロウ・ニシキ・アストライア ~魔王にして最強の剣~」と銘板まで付いている。*


*肖像画の中のシロウは、黒髪をなびかせ、剣を構え、背景には荘厳な光が差している。瞳は力強く輝き、顎のラインはシャープで、全体的に3割増しくらいかっこよく描かれていた。*


シロウ「いや、美化しすぎだろ……」


*彼は思わず声に出した。ユキがきゅい?と首を傾げて肖像画を見上げている。*


シロウ「俺こんなにシュッとしてないぞ。あと白髪も最近生えてきてるし……46のおっさんだぞ……」


*近くにいた女子学生が聞き耳を立てていた。*


女子学生A「え、46歳……? 嘘、全然見えない……」


女子学生B「肖像画より実物の方がいいまである……」


女子学生A「渋みが加わってる感じ……最高……」


シロウ(聞こえてるぞ……)


*彼は肖像画の下の説明文に目を通した。*


「シロウ・ニシキ・アストライアは、アストライア魔導皇国の建国者にして魔王。SSランク冒険者として数々の偉業を成し遂げ、北の帝国を属国とし、大陸に平和をもたらした英雄である。その剣技は万の敵を屠り、その魔法は天を裂くと伝えられる――」


シロウ「天を裂く……いや、まあ裂いたことはあるけどさ……」


*彼は額に手を当てた。ユキが彼の顔と肖像画を交互に見比べて、きゅい、と一声鳴いた。まるで「似てないね」と言っているようだった。*


シロウ「お前までそれ言うか」


ユキ「きゅいっ♪」


*ユキが楽しそうに尻尾を振った。図書館の学生たちは遠巻きに彼と肖像画を見比べ、ひそひそと盛り上がっている。*


シロウ(……帰ったらギルドマスターに手紙書こう。絶対書こう)


*彼は図書館を後にし、ユキを抱っこしたまま大学の広場へやってきた。広大な芝生の広場は、昼休みの学生たちで賑わっている。事前に学長から魔法使用の許可は得ていた。*


シロウ「さて、ユキ何する? とりあえず飛ぶ?」


ユキ「きゅいっ!」


*ユキが彼の腕から飛び出し、中型犬サイズの身体をぶるっと震わせた。純白の翼が広がる。彼も飛行魔法を起動し、ふわりと地面を離れた。*


*ユキが翼を一打ちし、空へ舞い上がった。その瞬間だった。*


学生A「……え?」


学生B「翼……あれ……ドラゴン……?」


*広場にいた学生たちが一斉に空を見上げた。中型犬サイズとはいえ、純白の鱗、宝石のように輝く翼、そして竜特有の魔力の波動。見間違えようがなかった。*


学生C「ドラゴンだ! ドラゴンがいる!」


学生D「しかもあの色……白竜種……? いや、違う、あの魔力量おかしいだろ!」


*校舎の窓から教員たちが顔を出し始めた。マグナス学長が執務室の窓を勢いよく開けた。*


マグナス「な、なんと……あれは……まさか始祖竜……!?」


*ユキは嬉しそうに空を旋回していた。きゅいきゅいと鳴きながら、雲を突き抜け、急降下し、また上昇する。城の中では飛び回れなかったストレスを一気に発散しているようだった。*


ユキ「きゅいいいいっ!♪」


*彼も飛行魔法でユキに並んだ。風が心地いい。大学の全景が眼下に広がっている。*


シロウ「楽しいか?」


ユキ「きゅいっ!きゅいっ!」


*ユキが彼の周りをくるくると回った。尻尾をぶんぶん振り、純白の翼が陽光を反射してきらきらと輝く。*


*地上では大騒ぎになっていた。*


魔物学の教授「あれは……文献でしか見たことがない……始祖竜だ! 間違いない! 生きた始祖竜を目にする日が来るとは!」


学生E「SSランク冒険者がドラゴン連れてきたって!」


学生F「しかもあのドラゴン、めちゃくちゃ懐いてるぞ! ペットなのか!?」


*教員棟から何人もの教授が飛び出してきた。研究資料を片手に空を見上げ、興奮で目を輝かせている者もいた。*


ヴィクトール「馬鹿な……始祖竜は絶滅したはずだ……あれが本物だとすれば、学術的大発見どころの話ではない……」


*彼はユキと並んで飛びながら、地上の騒ぎをちらりと見下ろした。*


シロウ(……やっぱりこうなったか)


ユキ「きゅい?」


シロウ「気にすんな。好きなだけ飛べ」


ユキ「きゅいっ!♪」


*ユキが歓声を上げ、大空を自由に舞った。彼はその姿を見ながら、ぽつりと呟いた。*


シロウ(ルーナにかまってもらえなくて溜まってたもんな。よし、今日は思いっきり遊ぼう)


*彼はユキと並んで空を飛んだ。まずは競走だ。*


シロウ「よし、ユキ。あっちの山まで競走な。本気でいいぞ」


ユキ「きゅいっ!」


*ユキの翼が大きく広がり、一瞬で加速した。彼も飛行魔法の出力を上げる。本来ならマッハを軽く超える速度が出るが、大学の建物のガラスが割れない程度に抑えた。それでも凄まじい速度だった。*


*二つの影が空を切り裂いた。衝撃波が地上に降り注ぐ。*


*広場にいた学生たちが吹き飛ばされた。*


学生A「うわああっ!」


学生B「なんだこの風!」


*突風が芝生を薙ぎ、木の葉が舞い散る。女子学生たちのスカートが一斉に捲れ上がった。*


女子学生A「きゃあっ!」


女子学生B「やだっ、スカート!」


女子学生C「見ないでっ!」


*男子学生たちが一瞬、神妙な顔で空を見上げていた。だがその視線は明らかに別の場所を向いていた。*


男子学生A「……白」


男子学生B「……水色のストライプ」


男子学生C「ありがとうございます魔王陛下……」


女子学生A「聞こえてるからね!?」


*上空では彼とユキが並走していた。ユキは成長途中とはいえ始祖竜。その速度はとんでもなく速い。彼が抑えている状態でも、ほぼ互角についてくる。*


シロウ「速いな、ユキ! まだいけるか!」


ユキ「きゅいいいっ!」


*ユキが更に加速した。純白の翼が空気を切り裂き、彼の横を一瞬で追い抜いた。*


シロウ「お、やるじゃん」


*彼も速度を上げた。二つの影が大学の上空を何度も旋回し、山の方へ向かい、また戻ってくる。その度に地上には衝撃波が届き、学生たちが悲鳴を上げた。*


*教員棟の窓から、魔物学の教授が身を乗り出していた。*


魔物学教授「すごい……始祖竜の飛行速度、目測でマッハ0.8以上……これは論文になる……!」


ヴィクトール「論文どころではない! あの速度であの旋回半径、竜翼の空力構造が既存の理論と全く異なる! 記録しろ、全部記録しろ!」


*教員たちが慌てて記録用の魔道具を取り出している。完全に研究モードに入っていた。*


*数分後、彼とユキが広場に降り立った。ユキがぱたぱたと翼を畳み、きゅいっ♪ と嬉しそうに鳴いた。*


シロウ「ユキの勝ちだな。速くなったなあ」


ユキ「きゅいっ!きゅいっ!」


*ユキが尻尾をぶんぶん振りながら、彼の足元でくるくる回った。嬉しさが全身から溢れている。*


*広場の学生たちは髪が乱れ、教科書が散らばり、女子学生たちはスカートを必死に押さえていた。だが彼を責める者は誰もいなかった。むしろ目を輝かせている。*


学生D「今の見たか……あれがSSランク冒険者の速度……」


学生E「始祖竜と互角って……人間の領域超えてるだろ……」


*スカートを押さえていた。*


*彼とユキは全力の競走を終え、広場に着地した。近くの水飲み場で水を飲み、一息つく。*


*ユキが彼の隣でごろんと転がった。純白の翼を畳み、腹を上にして芝生に寝転がっている。久しぶりに全力で飛べたのが余程嬉しかったらしく、きゅいきゅいと満足げに鳴いていた。*


シロウ「楽しかったか」


ユキ「きゅいっ♪」


シロウ「よし、じゃあちょっと昼寝するか」


*彼は広場の芝生に寝転がった。春の陽射しが暖かい。ユキが彼の腹の上に乗り、丸くなった。ずしりと重いが、温かい。*


*風が心地よく吹き抜け、彼はすぐに意識が沈んでいった。*


---


*どのくらい眠っただろうか。彼はゆっくりと目を開けた。ユキがまだ腹の上で丸くなって寝息を立てている。*


シロウ「ん……腹減ったな。ユキ、起きろ。飯にしよう」


ユキ「きゅ……きゅい」


*ユキが眠そうに目を開け、ふあぁと欠伸をした。彼はユキを抱き上げ、大学の食堂へ向かった。*


*食堂は昼時で賑わっていた。彼が入った瞬間、また視線が集まったが、もう慣れた。トレイを手に取り、料理を選んでいると――見覚えのある黒髪が目に入った。*


*レイラだった。食堂の奥のテーブルに座っている。その前に、身なりのいい男子学生が3人立っていた。*


男子学生A「レイラさん、お一人ですか? よかったら僕たちと一緒にどうですか」


男子学生B「是非とも私と一緒にどうですか」


男子学生C「お茶でも奢りますよ」


*レイラは頬杖をつき、彼らを見上げていた。その目は完全に冷めていた。琥珀色の目が退屈そうに細められている。*


レイラ「妾に話しかけてくる度胸は認めてやるが、何度来ても答えは同じじゃ」


男子学生A「そ、そんな……せめて理由だけでも」


レイラ「理由? お主らが虫けら程度にしか見えぬからじゃ。妾の夫はな――」


*レイラがふと視線を動かした。食堂の入口に立つ彼と目が合った。*


*レイラの表情が一瞬で変わった。冷たい目が柔らかくなり、唇の端がほんの僅かに上がった。だがすぐにツンと顔を逸らす。*


レイラ「……遅い」


シロウ(また俺のせいか)


*彼はトレイを持ったまま、レイラのテーブルへ歩いていった。ユキが彼の肩の上から男子学生たちを見下ろし、きゅいっと威嚇した。*


男子学生A「え……あ、魔王陛下……!?」


男子学生B「ま、まさかレイラさんの夫って……」


レイラ「そうじゃ。まだ何か用か?」


*3人の男子学生が一斉に青ざめ、脱兎の如く逃げていった。*


シロウ「毎回思うけど、お前もうちょっと穏やかに断れないのか」


レイラ「穏やかに断っても分からぬ馬鹿共じゃからな。」


*彼はトレイにオススメランチセットを乗せ、レイラの向かいに座った。レイラのトレイにはいつも通り山盛りの肉料理が並んでいる。ステーキ、ローストビーフ、骨付き肉。完全に肉食獣の食卓だった。*


シロウ「ユキも肉でいいか? 生派? 焼く派?」


ユキ「きゅい?」


*ユキがテーブルの上に前足を乗せ、レイラの皿をじっと見つめた。尻尾がゆらゆら揺れている。*


シロウ「魚かな、肉かな……こういうのはルーナの方が詳しいんだけどな」


レイラ「あの娘は今ルクスに夢中じゃろ。ユキを拗ねさせた張本人に聞いても仕方あるまい」


シロウ「ごもっとも」


*彼はメニュー表を広げ、ユキに見せた。ユキが鼻をひくひくさせながら、メニューの絵を一つ一つ確認していく。*


*そしてユキの鼻が止まった。焼き魚の絵の上で。次に肉の絵に鼻を近づけ、またくんくん。そして最後にデザートのプリンの絵に鼻をつけた。*


ユキ「きゅいっ!」


シロウ「……全部か?」


ユキ「きゅい♪」


レイラ「欲張りな竜じゃな。妾と気が合いそうじゃ」


*レイラが骨付き肉を豪快に齧りながら、ユキの頭を空いた手でぽんぽんと叩いた。ユキは嫌がらず、むしろレイラの手にすりすりと頬を寄せた。*


シロウ「じゃあ焼き魚と肉の盛り合わせと……プリンも追加で」


*彼が食堂のカウンターへ追加注文しに行き、戻ってきた。ユキの前に焼き魚と肉の盛り合わせが並ぶ。ユキはまず焼き魚に食いつき、次に肉をもぐもぐと食べ始めた。交互に食べている。どっちも好きらしい。*


レイラ「で、今日はユキと遊ぶ日なのじゃろ? 妾にも構わんのか」


シロウ「レイラも来るか?」


レイラ「……別に。妾は午後から帝王学がある。暇ではないのじゃ」


*レイラがぷいっと顔を逸らした。だがフォークを持つ手が少しだけ止まっていた。*


シロウ「そっか。じゃあ夜飯は一緒に食おう」


レイラ「……ふん。まあ、お主が食いたいと言うなら付き合ってやらんこともない」


*レイラの耳が僅かに赤くなっていた。彼は笑いを堪えながらランチセットを食べ始めた。*


*ユキが焼き魚を完食し、肉に取りかかっている。食べ方は意外と綺麗だった。小さな口で丁寧にもぐもぐと咀嚼している。*


シロウ「ユキ、食べ方綺麗だな。ルーナが躾けたのか?」


ユキ「きゅい」


レイラ「あの娘、自分は食い散らかすくせにユキには厳しいからのう」


シロウ「それ、レイラも人のこと言えないだろ」


レイラ「妾は綺麗に食べておる!」


*レイラの口元にソースがついていた。彼が黙って指で拭って舐めた。*


*レイラが口元のソースを拭われ、顔を赤くした。*


シロウ「付いてるよ? 可愛いな」


レイラ「っ……う、うるさいわ! 妾をからかうでない!」


*レイラがぷんすかと頬を膨らませ、残りの肉を一気に平らげた。トレイを持って立ち上がり、つかつかと歩いていく。制服のスカートが歩く度に揺れ、細い脚のラインが眩しかった。*


シロウ(スカート、よく似合ってるな。いつもは王族の正装だから新鮮だ)


*レイラが食堂の出口で一瞬だけ振り返った。彼と目が合うと、ふんっと顔を逸らして出ていった。*


シロウ「……ツンデレは健在だな」


ユキ「きゅい」


*ユキがプリンをぺろぺろと舐めながら、彼を見上げた。まるで「あれでいいの?」と言っているようだった。*


シロウ「いいんだよ、あれで。夜飯で機嫌直すから」


*彼はランチセットを食べ終え、ポケットから手帳を取り出した。学長から渡されたスケジュール表を確認する。*


シロウ「次の魔法講義は……何時だっけな」


*手帳をめくる。ギメイとしての週1の授業は既に終えている。臨時講師としてのシロウの講義は――*


シロウ「明日の午前か。『実践戦闘魔法論』……大層な名前つけやがって、学長」


*マグナス学長が張り切って組んだカリキュラムだった。SSランク冒険者による特別講義ということで、既に大学中に告知が回っているらしい。*


シロウ「今日はもう講義ないな。午後はまるまる空きだ」


ユキ「きゅいっ!」


*ユキがプリンを完食し、尻尾をぶんぶん振った。午後もまだ遊べると分かって嬉しそうだ。*


シロウ「よし。午後は何しようか。草原を駆け回るか? それとも山の方に行ってみるか?」


ユキ「きゅいきゅい!」


*ユキがテーブルから飛び降り、彼の足元でくるくる回った。どっちもやりたいらしい。*


シロウ「じゃあ両方だな。まず草原を走って、そのまま山に登ろう」


*彼はトレイを片付け、ユキを肩に乗せて食堂を出た。午後の陽射しが暖かい。大学の敷地の先に、広大な草原と山脈が見えていた。*


シロウ「行くぞ、ユキ」


ユキ「きゅいっ!♪」


*ユキが彼の肩から飛び立ち、先を行くように旋回した。彼も軽く地面を蹴り、草原に向かって走り出した。*


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