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*翌朝──旅行3日目。彼は布団の中で目を覚ました。左にレイラ、右にルミナが寝息を立てている。レイは彼の腹の上に乗っかって丸くなっていた。*
*障子の隙間から朝日が差し込み、部屋を淡く照らしている。今日は一応、帰る日だ。*
*彼がもぞもぞと起き上がろうとすると、レイラの手が彼の袖を掴んだ。*
レイラ「……まだ早い」
シロウ「もう8時だぞ」
レイラ「妾が早いと言えば早いのだ……」
*レイラが目を閉じたまま、ぐいっと彼を引き戻す。しかし彼は構わず起き上がった。*
*隣の部屋からルーナの声が聞こえてきた。*
ルーナ「パパー、起きてるー? チェックアウト11時だけど、どうする? もう一泊する? それとも帰る?」
*障子越しの声。彼は考えた。帰還魔法を使えば一瞬で帰れる。時間の制約は実質ない。問題は──*
レイ「んー……もうちょっと旅行したい……」
*レイが寝ぼけ声で呟いた。*
ステラ「ステラもー! まだ遊ぶー!」
*隣の部屋からステラの元気な声が響いた。ゼノとセレスは既に起きているのか、静かに本を読む気配がする。*
*彼の声がルーナの部屋に届いた。*
シロウ「うーん…帰りたい人は送るよ」
*障子が開き、ルーナが顔を覗かせた。既に着替えを済ませ、髪も整えている。*
ルーナ「送るって言っても、転移魔法はパパしか使えないんだから、結局パパも一緒に帰ることになるよね?」
シロウ「まあ、往復すりゃいいだけだ」
ルーナ「あー、なるほど。送って戻ってくるパターンね」
*レイラがようやく目を開け、不機嫌そうに身を起こした。黒髪が寝癖で跳ねている。*
レイラ「……妾はまだ帰らぬ。昨日の約束がまだ果たされておらぬぞ」
*昨日の約束──温泉での「慈悲」の件だ。レイラの琥珀色の瞳がじっと彼を射抜く。*
レイ「ボクも帰りたくなーい♪ まだ食べてないもの沢山あるし♪」
ルミナ「……私も、もう少し」
*彼の右腕を抱えたまま、ルミナが小さく呟いた。昨日のデートの余韻がまだ残っているのか、いつもより甘えた声だった。*
ルーナ「子供たちはどうする? ステラとゼノとセレスは──」
ステラ「ステラ帰りたくないー!」
ゼノ「僕はどちらでも。ただ、商店街の本屋でまだ買いたい本が……」
セレス「……残る」
ルーナ「全員残留じゃん。はい決定、延泊ね。私フロントに聞いてくるよ」
*ルーナが立ち上がり、廊下へ出て行こうとして振り返った。*
ルーナ「何泊延ばす?」
*彼は異空間収納から現金を取り出し、テーブルの上に積んだ。500万円──白金貨に換算すれば50枚分。日本円の束が無造作に置かれている。*
ルーナ「ご、500万!? パパ、ポンと出しすぎじゃない!?」
シロウ「足りなかったら言え。延泊代と飯代と、好きに使っていい」
*ルーナが札束を前にして固まっている。前世OLの金銭感覚が悲鳴を上げているようだった。*
ルーナ「いやいやいや、箱根で500万使い切る方が難しいって……どこに行くの?」
シロウ「ちょっとな」
ルーナ「一人で!?」
*レイラが布団から身を起こした。寝癖だらけの黒髪で彼を睨む。*
レイラ「……妾を置いていくのか」
シロウ「すぐ戻るよ。」
レイラ「ふん……帰りが遅ければ迎えに行くぞ。この国ごと焼き払ってな」
ルーナ「やめて!? 日本焼かないで!?」
ーー
*彼は転移魔法で空中に出現した。箱根の上空──ではなく、日本のどこかの空だった。ランダム座標で出たせいで、正確な位置が分からない。*
シロウ「さて、何処に行こうかな」
*その瞬間、背後から凄まじい風圧と轟音が襲った。*
ドゴォッ!!
*航空自衛隊のF-2戦闘機が、訓練飛行中に偶然彼の出現ポイントを通過した。機体の翼が彼の背中を直撃する──が、SSランク冒険者の身体はびくともしなかった。むしろ戦闘機の翼の方が歪んだ。*
シロウ「ぐえ…」
*痛くはないが、不意打ちで声が漏れた。戦闘機はそのまま通過していき、パイロットは計器の異常を示すアラートに慌てている様子だった。*
パイロット(無線)「こちらイーグル2、飛行中に何かと接触! バードストライクか!? 翼に損傷あり!」
管制塔(無線)「了解、状況報告を──レーダーに反応なし、鳥にしては大きすぎます」
*彼は戦闘機の翼に弾かれ、そのまま重力に従って落下した。風を切る音が耳を劈く。*
*咄嗟に異空間収納から狐のお面を取り出し、顔に装着した。SSランク冒険者の反射神経が為せる技だ。*
ドォォォン!!
*地面に激突。コンクリートの滑走路に人型のクレーターが出来上がった。砂煙が舞い上がる。*
シロウ「……痛くはないけど、格好悪い」
*彼がむくりと起き上がると──目の前に戦闘機が整列し、管制塔が聳え立ち、迷彩服を着た隊員たちが駆け寄ってきていた。*
*航空自衛隊の基地だった。*
隊員A「な……人!? 人が落ちてきたぞ!」
隊員B「ありえない! あの高度から!? 生きてるのか!?」
隊員C「全隊員に通達! 正体不明の侵入者あり! 武器を構えろ!」
*数秒で銃口が彼に向けられた。10人以上の隊員がライフルを構え、彼を取り囲んでいる。*
隊員A「動くな! 両手を頭の上に! お前は何者だ!」
*彼は狐のお面の下でため息をついた。クレーターの中心に立ち、砂埃を払っている姿は──異様すぎた。Tシャツにジーンズという格好で、戦闘機に轢かれて無傷。滑走路にクレーターを作って平然としている男。*
シロウ「……あー」
*どう説明したものか。「通りすがりの一般人です」は通用しない状況だった。*
*彼は狐のお面の下で、にっこりと笑った。もちろん見えないが。*
シロウ「てへぺろ(´>ω∂`)」
*……沈黙が流れた。*
隊員A「…………は?」
隊員B「今、何て言った……?」
*銃口を向けたまま、隊員たちの間に困惑が広がる。滑走路にクレーターを作って平然と立っている狐面の男が、「てへぺろ」と言い放ったのだ。状況が理解できない。*
隊員C「ふざけるな! 身元を明かせ! ここは航空自衛隊の基地だぞ!」
*ライフルの安全装置が外される音が響いた。ピリピリとした緊張感が走る。*
シロウ「いやー、すまんすまん。ちょっと通りすがりで……」
隊員A「通りすがりが空から降ってくるか! しかも戦闘機に轢かれて無傷で!」
*正論だった。彼はクレーターから一歩踏み出す。隊員たちの指がトリガーにかかる。*
隊員B「動くな!」
シロウ「落ち着け落ち着け。怪我させる気はないから」
*彼が両手を上げて無害アピールをする。しかし──Tシャツにジーンズ、狐の面という格好で、滑走路のクレーターの中心に立つ男は、どう見ても「無害」には見えなかった。*
*遠くからサイレンが鳴り響き、装甲車が接近してくる音が聞こえた。*
シロウ「……あ、これ面倒なことになるやつだ」
*銃声が鳴り響いた。数十発のライフル弾が彼に向かって放たれる──が、全てTシャツに当たった瞬間に運動エネルギーを失い、コロコロとコンクリートの上に転がった。*
隊員A「な……効いてない!?」
隊員B「ありえない! 7.62mm弾が弾かれた!?」
*彼は狐の面の下で欠伸をした。手は上げていない。ポケットに突っ込んだまま、のんびりと立っている。*
隊員C「戦車を回せ! 10式を!」
*地面が振動した。重い履帯の音と共に、10式戦車が格納庫から出てきた。120mm滑腔砲の砲口が彼に向けられる。*
シロウ「おいおい……マジか」
*スピーカーから声が響く。*
指揮官「最終警告だ! 身元を明かし、直ちに投降せよ! さもなくば実力で排除する!」
*戦車の砲塔がゆっくりと旋回し、照準が彼の胸に合わせられた。周囲には歩兵が展開し、完全に包囲されている。上空にはヘリが旋回し、カメラが彼を捉えていた。*
シロウ「……帰りたい」
*心の底からそう思った。箱根のダメにするソファが恋しい。何故こうなったのか。戦闘機に轢かれたのが全ての始まりだった。*
シロウ「あー……とりあえず、俺は敵じゃないんだが」
指揮官「ならば面を外し、両手を頭の上に上げろ!」
シロウ「面は外せないな」
*一触即発の空気が漂う中、彼は頭を掻いた。転移魔法で消えれば一瞬だが──このまま消えたら「謎の超人が基地に侵入して消えた」という大事件になる。面倒が増えるだけだ。*
*彼は隊員たちの怒号を完全に無視し、ポケットからスマホを取り出した。Googleマップを開き、方角を確認する。*
シロウ「バミューダトライアングルに入ってみたいんだよなぁ…方向は…あっちか」
*彼が画面を見ながら呟く。隊員たちが困惑している。*
隊員A「お、おい! 何をしている! スマホを置け!」
隊員B「爆発物の起爆装置かもしれん! 撃て!」
*再び銃声が鳴り響く。弾丸がコロコロと転がる。彼は全く気にしていない。*
シロウ「えーっと……南東方向か。遠いな。まあ飛べばいいか」
指揮官「戦車、砲撃準備!」
*10式戦車の砲塔が微調整され、120mm砲が彼を真正面に捉えた。*
シロウ「あ、そうだ。滑走路壊してごめんな。じゃ」
隊員A「待て! 逃がすか──」
*彼が軽く地面を蹴った瞬間、音速を超えた。衝撃波がコンクリートを割り、隊員たちが吹き飛ばされる。狐面の男は一瞬で空の彼方へ消え去った。*
指揮官「…………何だったんだ、今のは」
隊員B「……UFOの方がまだ信じられます」
*彼は太平洋上を南東に向かって飛んでいた。スマホのGPSを頼りに、バミューダトライアングルを目指す。*
シロウ「さて……世界の七不思議、体験してみるか」
*水平線の向こうに、まだ見ぬ海域が広がっていた。*
*彼は太平洋上を超高速で飛行し続けていた。GPSの示す座標が徐々にバミューダトライアングルの海域に近づいている。*
*フロリダ半島、プエルトリコ、バミューダ諸島を結ぶ三角形の海域──通称「魔の三角海域」。古くから船舶や航空機が原因不明の消失を遂げてきた場所だ。*
シロウ「……お、そろそろか」
*スマホの画面を確認する。既にバミューダトライアングルの外縁に差し掛かっていた。眼下には紺碧の大西洋が広がり、一見すると何の変哲もない海だ。*
*しかし──鑑定の上位互換である神眼が、微かな異変を捉えた。*
シロウ「……ん?」
*海面の下、深い場所から何かの魔力反応──いや、この世界では「魔力」とは呼ばないが──明らかに異質なエネルギーの揺らぎを感知した。それは異世界で感じる魔素に極めて似ている。*
シロウ「マジか……地球にも魔力に近いものがあるのか? いや、違うな。これは……」
*彼は速度を落とし、海域の中心付近で空中に静止した。神眼で海底を透視する。深度およそ3000メートルの海底に──何かが脈動していた。*
シロウ「……次元の裂け目……? 薄いけど、確かにある。これが船や飛行機が消える原因か?」
*風が不自然に渦を巻き始めた。空の色が微かに歪む。彼の肌に、懐かしいアストライアの空気に似た何かが触れた。*
*彼は海域の中心付近で空中に静止したまま、神眼で海底を透視し続けていた。深度3000メートルの海底に、微かに脈動する次元の裂け目が見える。*
*異世界で何度も見た空間の歪み──あれと同質のものだ。ただし、極めて薄い。人間が普通に通れるほどの安定性はない。*
シロウ「……なるほどな。この裂け目が不定期に揺らいで、たまたま通った船や飛行機を巻き込んでるってわけか」
*彼は高度を下げ、海面すれすれまで降りた。風が渦を巻き、波が不自然な動きを見せている。コンパスがあればグルグル回っているだろう。磁場が狂っている。*
シロウ「でもこれ、繋がってる先は……」
*神眼の焦点を裂け目の奥に合わせる。次元の薄い膜を透かして見た先──そこには見覚えのある魔素の流れがあった。*
シロウ「……アストライアか? いや、違う。似てるけど別の世界……?」
*彼が思考を巡らせていると、突然海面が大きく隆起した。海水が渦を巻き、直径数百メートルの巨大な渦潮が出現する。*
シロウ「おっと」
*渦の中心から、巨大な影が浮かび上がってきた。海水を押し退け、ゆっくりと姿を現すそれは──全長100メートルを超える、蒼白い鱗を持つ海竜だった。*
*神眼が自動的に発動する。*
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名前:レヴィアタン
種族:深海龍(古代種)
Lv:312
HP:890,000/890,000
MP:540,000/540,000
スキル:深海支配、次元潜行、大海嘯、重圧領域
状態:覚醒
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シロウ「……地球にもいるんだな、こういうの」
*レヴィアタンの巨大な瞳が、空中に浮かぶ彼を捉えた。低い唸り声が海域全体を震わせる。*
*彼は海面近くで空中に静止したまま、まず帰還用のポータルを設置した。空間に魔力を編み込み、座標を固定する。薄く光る紋様が空中に浮かび、安定した。*
シロウ「よし……これでいつでも戻れる」
*ポータルの先は先ほどの日本側の空域に繋がっている。最悪の場合でも一瞬で帰還できる保険だ。*
*レヴィアタンが低い唸り声を上げ、彼を見据えている。しかし攻撃してくる様子はない。むしろ──次元の裂け目の番人のように、じっと佇んでいた。*
シロウ「お前、この裂け目を守ってんのか?」
*レヴィアタンの巨大な瞳が一度瞬いた。肯定とも否定とも取れない反応だ。*
シロウ「……まあいい。ちょっと通らせてもらうぞ」
*彼は海中へと潜った。SSランクの肉体に水圧など意味を為さない。深度1000メートル、2000メートル……光が完全に届かない暗黒の世界を、神眼の透視だけを頼りに降下していく。*
*深度3000メートル。海底に辿り着いた。そこに──次元の裂け目があった。*
*幅は2メートルほど。薄く揺らめく膜のような裂け目から、微かに魔素が漏れ出している。不安定に明滅を繰り返し、時折大きく脈動する。*
シロウ「安定させるか……いや、そのまま入ってみるか」
*彼は一瞬考え、そのまま裂け目に手を伸ばした。指先が膜に触れた瞬間──視界が白く弾けた。*
*引きずり込まれるような感覚。異世界転移の時とは違う、もっと荒々しい力が彼の身体を包んだ。*
シロウ「っ……!」
*数秒後──彼の身体は、見知らぬ空に放り出されていた。眼下に広がるのは、紫色の海と、赤黒い空。二つの月が同時に浮かんでいる。*
シロウ「……ここは、アストライアじゃないな」
*神眼を展開する。大気中の魔素濃度はアストライアの約3倍。見たことのない構成の粒子が混じっている。完全に未知の世界だった。*
*紫色の海が不気味にうねり、赤黒い空に二つの月が浮かんでいる。大気中に漂う魔素は異常なほど濃く、肌がピリピリと刺激される。*
シロウ「まるで……ヴォ○ド世界みたいだ……」
*彼の脳裏に、かつてゲームや創作物で見たヴォイ○の世界──虚無と混沌が支配する異界のイメージが浮かぶ。荒廃した大地、歪んだ空、生命の気配が希薄な世界。目の前の光景は、まさにそれに酷似していた。*
*神眼を広域展開する。半径数キロの情報が流れ込んできた。*
*──生命反応、極めて少ない。だが、存在する個体のレベルが軒並み異常に高い。最低でもLv200以上の反応がちらほらと散見される。*
シロウ「魔素濃度が高すぎて弱い奴は生きていけないのか……自然淘汰が極端な世界だな」
*眼下の紫色の海面が突然泡立った。何かが深海から浮上してくる気配がある。彼は高度を上げた。*
*海面を突き破って現れたのは──全長50メートルほどの、骨だけで構成された鯨のような存在だった。眼窩に紫色の炎を灯し、空中に浮遊している。*
シロウ「骸骨鯨……? アンデッド系か」
*神眼が自動的に情報を読み取る。*
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名前:ヴォイドリヴァイアサン
種族:虚無鯨(アンデッド亜種)
Lv:287
スキル:虚無吸収、魂喰い、次元遊泳
状態:徘徊
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*骸骨鯨は彼に興味を示さず、ゆっくりと赤黒い空へと泳いでいった。ここでは日常の光景なのだろう。*
シロウ「……とりあえず陸を探すか。この世界に文明があるのかどうか」
*彼は神眼の索敵範囲を最大まで広げ、陸地を探した。南西方向に大きな大陸の反応がある。そして──微かだが、知性体の集合反応も感知できた。*
シロウ「あっちか。行ってみるか」
*彼は紫色の海を眼下に、赤黒い空を切り裂くように飛行を開始した。いつでも帰れる──その安心感だけを胸に、未知の世界へと踏み込んでいく。*
*彼は赤黒い空の下、荒廃した大陸の上に降り立った。足元の大地は灰色に乾き切り、植物と呼べるものは一切存在しない。あるのは奇妙な形に侵食された岩石と、紫色の霧だけだ。*
シロウ「魔物しかいないな……」
*神眼を広域展開しても、知性体の反応は皆無だった。先ほど感知したのは誤反応だったのか、あるいは既に移動したのか。*
*彼は暫く歩き、巨大なクレーターの縁に辿り着いた。直径500メートルはあろうかという窪みが大地に穿たれている。しかし中には何もない。焼け焦げた痕跡すらなく、ただ綺麗に抉り取られたような形状だった。*
シロウ「……自然にできたクレーターじゃないな、これ。何かがあった痕だ」
*彼はクレーターの底に降り、地面に触れた。神眼で残留魔力を解析する。微かに──本当に微かにだが、何かの残滓が感じ取れた。*
シロウ「……古い。数百年、いや数千年前の残留魔力か。ここに何か巨大なものがあって……消えた? 持ち去られた?」
*風が吹いた。紫色の霧が渦を巻く。遠くで何かの咆哮が響いたが、此方に近づいてくる気配はない。*
シロウ「文明の痕跡も無し、知的生命体も無し……完全な魔境だな。面白いっちゃ面白いが、長居する理由も無いか」
*彼はスマホを取り出した。当然電波は入らない。時計機能だけが動いている。日本時間で既に3時間が経過していた。*
シロウ「そろそろ戻るか。レイラたちに心配かけるのも悪い」




