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《R-15》異世界転移でスローライフを?  作者: THE・HENJIN・RlDER
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*カイの恋人が男であると判明してから数日が経った。城の中の空気は、少しだけぎこちない。*


*一番の変化はレイラだった。あれだけ激怒していた彼女だが、今はカイとどうにかして仲直りしたいという気持ちが見え隠れしている。しかし、生来のプライドの高さと、今まで息子に対して取ってきた態度が邪魔をしているのか、執務室や廊下でカイとすれ違っても、気まずそうに目を逸らすだけで、自分から声をかけることができないでいた。その様子は、まるで思春期の娘のようだ。*


*一方、当事者であるカイとライの関係は良好そのもの。ライは持ち前の人懐っこさと健気さで、レイとルミナ、そしてルーナとはすっかり打ち解けていた。特にレイとルーナは、ライの可愛らしさにメロメロで、よく三人で楽しそうに談笑している姿が見られる。ライが男であるという事実は、彼女たちにとっては何の問題もないようだった。*


*シロウはそんな城の中の様子を、執務室の椅に座りながらぼんやりと眺めていた。レイラがカイに声をかけたくてもかけられない、もどかしい気持ちは痛いほどわかる。そろそろ、自分が間に入ってやるべきかと考えていると、執務室の扉が控えめにノックされた。*


シロウ:「ん? どーぞー」


*執務室の重厚な扉がゆっくりと開き、そこに立っていたのはカイだった。少し緊張した面持ちで、シロウの顔色を窺っている。*


カイ:「父さん、今、時間大丈夫?」


*数日ぶりに、二人きりで話す機会だった。カイはどこか言い出しにくそうに、しかし決意を固めたような瞳でシロウを見つめている。*


シロウ:「ああ、大丈夫だ。どうした?」


*シロウは読んでいた書類を机の脇に置き、カイに椅子に座るよう促した。ライのことか、それともレイラのことか。カイの口から何が語られるのか、静かに耳を傾けることにした。*


*シロウはカイの言葉を待っていた。彼が何を話したいのか、その表情から読み取ろうとする。ライとのことか、レイラとのことか、あるいは、また新たな旅立ちを決意したのか。様々な可能性が頭をよぎる。*


*椅子に座ったカイは、一度深く息を吸い込むと、意を決したように口を開いた。*


カイ:「父さん、俺、王位を継ぐつもりはない」


*その言葉は、数日前にレイラに叩きつけたと同様のものだったが、今、シロウに告げるその声には、より強い覚悟が滲んでいた。*


カイ:「そして、この城を出ていこうと思う。ライと一緒に」


*それは、レイラから突きつけられた「絶縁」を、自ら受け入れるという宣言に他ならなかった。カイはまっすぐにシロウの目を見て、言葉を続ける。*


カイ:「母さんには…俺からは、もう何も言えない。でも、父さんにはちゃんと伝えておきたかったんだ。勝手な息子で、本当にごめん」


*そう言って、カイは深く頭を下げた。肩が小さく震えている。城を出るという決意。それは、愛する者と共に生きるための、彼なりのけじめだった。*


シロウ:「いいよ、カイがそう決めたのなら」


*シロウがそう言って指を鳴らすと、重厚な執務室の扉が音もなくひとりでに開く。そこに立っていたのは、いつからそこにいたのか、俯きがちに唇を噛みしめるレイラの姿だった。どうやら、扉の前で息子の言葉を全て聞いてしまっていたらしい。*


*突然の母の登場に、カイは息を呑み、気まずそうに目を逸らした。レイラもまた、息子とどう顔を合わせればいいのかわからず、俯いたまま立ち尽くしている。*


シロウ:「きちんと母とも話してやれ。大丈夫、分かってくれるさ」


*シロウは穏やかな声で、二人の間に橋を架けるように言った。*


*レイラはシロウの言葉にハッとして顔を上げる。その琥珀色の瞳は、不安と後悔、そして息子への愛情で揺れていた。カイもまた、父の言葉に促されるように、恐る恐る母の方へと視線を向けた。*


*気まずい沈黙が、執務室に流れる。*


*執務室に重い沈黙が流れる。レイラは俯き、唇を噛みしめ、息子であるカイと目を合わせることができない。カイもまた、気まずそうに床を見つめている。そんな二人を見て、シロウは静かに橋を渡した。*


*シロウの言葉に、レイラはハッと顔を上げた。琥珀色の瞳が不安に揺れ、やがて意を決したように、ゆっくりと口を開いた。*


レイラ:「……カイ。そなたが、男を好むというのは…妾には、まだ、到底理解できぬことだ。魔王家の血が絶えることも、世間体がどうなるのかも、正直、不満でしかない」


*レイラは一度言葉を切り、悔しそうに拳を握りしめる。しかし、その声は怒りに震えているわけではなかった。むしろ、苦しげで、どこか弱々しい。*


レイラ:「だが…っ! だが、そなたが、妾の息子であることに変わりはない…! あの日、酷いことを言った…母として、謝る…すまなかった…」


*プライドの高いレイラが、声を震わせながら絞り出した謝罪の言葉。それは、彼女にとって最大限の歩み寄りだった。*


レイラ:「だから…城を出ていくなどと…言わないでくれ…」


*最後は懇願するような、か細い声だった。レイラの瞳からは、大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちる。その姿に、カイは息を呑み、固まったまま動けずにいた。*


*母の涙ながらの謝罪と懇願。それはカイにとって、あまりにも予想外のことだった。あれほどまでに激怒し、絶縁を叩きつけてきた母が、こんなにも脆く、弱々しい姿を晒している。カイは固まったまま、ただ母の涙を見つめていた。*


*しばらくの沈黙の後、カイはゆっくりと口を開いた。*


カイ:「……母さん。謝ってくれて、ありがとう」


*その声は、まだ少し震えていた。カイはレイラの謝罪を受け入れ、そっと彼女の肩に手を置く。しかし、その瞳には、まだ決意の色が宿っていた。*


カイ:「でも、俺は…やっぱり、この城を出て行こうと思う」


*その言葉に、レイラの肩がびくりと震える。*


カイ:「母さんに勘当されたからじゃない。これは、俺が自分で決めたことなんだ。ライと一緒に、自分の力で生きていきたい。ただ甘えて、この城に居続けるわけにはいかないんだ」


*それは、親からの自立を宣言する、息子の覚悟だった。ただ愛する者といたいという願いだけでなく、一人の男として、自分の足で立ちたいという強い意志が、その言葉には込められていた。*


カイ:「父さんや母さんが築き上げたこの国で、王子として安穏と暮らすんじゃなくて…もっと広い世界を見てみたい。そして、ライを守れるくらい、強くなりたいんだ」


*カイの決意は固かった。それは、親からの自立を宣言する、息子の覚悟。レイラも、それがもう覆らないことを悟ったのだろう。彼女はわっと声を上げて泣き崩れた。息子の成長が嬉しい反面、手元から離れていってしまう寂しさが、彼女の中で渦巻いている。*


シロウ:「(カイの決意は固いか…まぁ、そうだろうな)」


*シロウは、そんなレイラの背中を優しく擦ってやる。シロウの服は、あっという間に彼女の涙で濡れていった。*


シロウ:「数年置きくらいには顔を見せてくれるか?」


*カイに向けて、穏やかに問いかける。それは、王としての命令ではなく、一人の父親としての、ささやかな願いだった。*


*その言葉に、泣きじゃくるレイラの肩がピクリと動く。カイは、そんな両親の姿をまっすぐに見つめると、少し困ったように、でも、優しく微笑んだ。*


カイ:「うん、もちろんだよ、父さん。手紙も書く。…母さんも、たまには返事をくれたら、嬉しい」


*カイの言葉に、レイラは顔を上げられないまま、こくこくと何度も頷いた。その姿は、もう魔王としての威厳はなく、ただ息子を愛する一人の母親だった。*


シロウ:「寂しくなるな。いつ頃出発するつもりだ?」


*シロウの静かな問いかけに、カイは少し考える素振りを見せた後、答えた。*


カイ:「準備ができ次第、すぐにでも。…一週間後くらいには、と考えてる」


*一週間。それは、あまりにも短い猶予だった。レイラは再び顔を覆い、嗚咽を漏らす。息子との別れが、現実としてすぐそこに迫っていることを実感したのだろう。*


*シロウはそんなレイラの背中を擦りながら、カイに視線を戻す。その瞳は、息子の旅立ちを認め、そして彼の未来を案じる父親のものだった。*


シロウ:「そうか。わかった。旅の準備で必要なものがあれば、何でも言え。」


*その言葉は、息子の決意を尊重し、彼の新たな門出を全力で応援するという、シロウなりの愛情表現だった。*


ーー


*その日の夜、城の大浴場は珍しく静かだった。いつもならレイやルーナの賑やかな声が響いているが、今は湯が浴槽から溢れる音だけが聞こえる。シロウは広い湯船に一人で浸かり、今日の出来事をぼんやりと考えていた。カイの決意、レイラの涙、そして旅立ちの日。*


シロウ:「(男同士だし、いいのか…?いや、恋人同士なんだから当然か…?うーん、わからん…)」


*息子の恋愛事情に、父親としてどういうスタンスでいればいいのか、シロウは少しだけ頭を悩ませていた。そんなことを考えていると、洗い場の方からカイとライの話し声が聞こえてきた。どうやら一緒に入浴しているらしい。*


カイ:「ライ、背中流すよ。じっとしてて」


ライ:「うん…ありがとう、カイ。…ねぇ、カイのお父様、怒ってなかったかな…?」


*ライの不安そうな声が聞こえてくる。やはり、城を出ていくこと、そしてレイラとの一件を気にしているのだろう。*


カイ:「大丈夫だよ。父さんは、俺たちのことを応援してくれてる。…母さんも、きっと分かってくれるはずだ」


*カイの優しい声が、ライを安心させるように響く。シロウは湯船の中でそっと息を殺し、二人の会話に耳を傾けていた。*


シロウ:「(変な事をしなければいいんだが…)」


*息子の恋愛を見守る父親の心境は、なんとも複雑なものだ。シロウがそんなことを考えていると、がらりと扉が開く音がした。*


*入ってきたのは、レイと、まだ幼いステラだった。ステラはたどたどしい足取りでレイに手を引かれ、きょろきょろと辺りを見回している。レイラは後から来るらしい。*


レイ:「あ、シロウいたー! 一番風呂だね!」


*レイはにこにこと笑いながら、手際よくステラの服を脱がし始める。その光景に、シロウは思わず固まった。*


シロウ:「いや、ここ男湯なんだけど…? ステラはまぁいいとして…」


*まだ幼い娘はともかく、妻であるレイが堂々と入ってくるのはどうなのか。しかも、洗い場には息子とその恋人もいるのだ。*


レイ:「えー? いいじゃん別に。家族風呂ってことで! それに、カイたちもいるんでしょ? 後でレイラも来るって言ってたよ」


*レイは全く気にした様子もなく、あっけらかんと言い放つ。その隣で、服を脱がされたステラが「ぱぱー!」と嬉しそうに声を上げ、短い手足をばたつかせながらシロウの方へ歩み寄ってきた。*


*シロウはやってきたステラをひょいと抱き上げると、そのまま湯船に浸かった。ステラは温かいお湯にきゃっきゃと声を上げて喜んでいる。その左隣には、当然のようにレイが腰を下ろした。ほどなくして、レイラもやってきて、シロウの右側に静かに入る。いつもの光景と言えばそうなのだが、今日は少し状況が違う。洗い場では、息子とその恋人がまだ体を洗っているのだ。*


レイ:「やっぱり広いお風呂は気持ちいいねー!」


*レイは両手を伸ばして大きく伸びをする。無防備なその姿に、シロウは少しだけ目のやり場に困った。*


レイラ:「ふん、当たり前だ。妾の城だからな。…して、カイはどうした?まだ来ておらぬのか?」


*レイラは平静を装っているが、どこか落ち着かない様子で辺りを見回す。昼間の出来事もあり、息子とどう顔を合わせればいいのか戸惑っているのかもしれない。*


*そんな親の心を知ってか知らずか、洗い終えたカイとライが湯船の方へやってきた。*


カイ:「あ、父さんたちも来てたんだ。…その、母さん」


ライ:「こ、こんばんは…!お邪魔してます…!」


*カイは少し気まずそうに、ライは恐縮したように頭を下げる。一瞬、浴場に気まずい沈黙が流れた。*


*シロウは抱っこしたステラの頭を撫でながら、気まずい雰囲気になった息子たちと妻を見る。ステラはそんな大人たちの空気を気にもせず、湯船でばしゃばしゃと楽しそうに水遊びを始めた。その小さな水しぶきが、張り詰めた空気を少しだけ和らげる。*


シロウ:「ああ、入れ。…ライも、遠慮しなくていい。ここは俺の家で、お前たちは客じゃない。家族だ」


*静かに、だがはっきりと告げる。ライはびくりと肩を震わせたが、カイがその背中をぽんと叩くと、恐る恐る頷いた。二人は少し離れた場所にそろりと湯船に浸かる。*


レイラ:「…カイ。その…昼間は、すまなかった。取り乱して…お前に酷いことを言った」


*ぽつりと、レイラが絞り出すように言った。タオルで体を隠しながらも、その声は震えている。カイは母の言葉に、少し驚いたように目を見開いた。*


カイ:「ううん、俺の方こそごめん、母さん。急に、あんなこと言って…」


レイ:「もー! 暗い話はなしなし! せっかくのお風呂なんだからさ! ね、ステラ?」


*気まずい空気を払拭するように、レイがわざと明るい声を上げた。ステラがそれに「あーい!」と元気よく応え、場が少しだけ和む。シロウは、そんな家族の様子を黙って見守っていた。*


*シロウの右隣にいるレイラはじっと動かない。まるで石像のように、ただ湯に浸かっている。しかし、その体は硬直しており、内心の動揺が伝わってくるようだ。彼女は今、ステラを抱きかかえている。幼い娘の体温が、いくらか彼女の心を落ち着かせているのかもしれない。*


*対照的に、左隣のレイはシロウにぴったりと体を寄せてくる。少し濁りのある、美肌効果があるという湯の中で、その柔らかな感触がやけに生々しく伝わってきた。レイは元々タオルを巻いていなかったが、シロウが注意して巻かせた。それでも、距離の近さは変わらない。*


シロウ:「(まったく、こいつは…)」


*呆れつつも、その甘えてくるような仕草が嫌いではない自分に気づく。*


レイ:「ねぇねぇシロウ、背中流してあげよっか?」


*耳元で、レイが甘えた声で囁く。その吐息が首筋を擽り、少しだけ身じろぎした。*


レイラ:「…したくなければ、無理に出ていく必要はない。ライ、お前もだ」


*静寂を破ったのは、レイラだった。その声はまだ少し硬いが、カイとライに向けられたものだった。*


カイ:「…うん。でも、決めたことだから。ライと一緒に、色々な世界を見てみたいんだ」


*カイは穏やかに、しかしはっきりと答える。その隣で、ライはこくこくと頷きながら、不安そうにレイラの顔色を窺っていた。家族の視線が交錯する、少しだけ気まずく、そして温かい時間が流れていく。*


*レイは「裸の付き合いだよ、裸の!」などと楽しそうに騒いでいる。きっとルーナあたりが変な知識を吹き込んだのだろう。シロウは苦笑いしながら、そんなレイの肩を軽く叩いた。*


シロウ:「(まったく…だが、レイのおかげで少しは空気が和んだか…)」


*隣のレイラは相変わらず腕を組んで黙っているが、先ほどよりは幾分か表情が和らいでいるように見える。カイとライも、まだ緊張は解けていないものの、レイの明るさに救われた様子だ。*


*そんな中、シロウにぴったりと体を寄せたままのレイが、悪戯っぽく笑いながら囁いてくる。*


レイ:「ねぇシロウ、ライくんってさ、カイのどこが好きなのかなー? ちょっと聞いてみようよ!」


*小声でそう言うと、レイはくすくすと笑う。完全に野次馬根性丸出しだ。*


シロウ:「お前なぁ…そういうことは本人たちに任せておけ」


*呆れながらも小声で返すが、レイは全く聞く耳を持たない。*


レイ:「えー、気になるじゃん! ねぇ、カイ! ライくんのどこが好きなのー?」


*結局、レイは大きな声でカイに尋ねてしまった。浴場にいた全員の視線が一斉にカイとライに集まる。二人は顔を真っ赤にして、うろたえるばかりだった。*


シロウ:「答えなくていいからな…」


*シロウは呆れてカイに助け舟を出す。カイは顔を真っ赤にしたまま俯いてしまった。しかし、その隣にいたライは、意外にもレイの無邪気な質問に臆することなく、はにかみながらも口を開いた。*


ライ:「え、えっと…カイさんは、その…いつも優しくて、強くて…私が困っていると、すぐに気づいて助けてくれるんです。それに、すごく…かっこいい、です…」


*尻すぼみになりながらも、一生懸命に答えるライ。その姿は健気で、守ってやりたくなるような魅力を放っている。*


レイ:「へぇー!そっかそっかー!優しいんだー!かっこいいんだー!♡」


*レイは目を輝かせ、ライの手を取ってぶんぶんと振る。完全に意気投合した様子で、そこからは女子トーク(?)が始まった。好きな食べ物の話、街で見た綺麗な装飾品の話、そしてカイのかっこいいところ百選など、湯船の片隅で二人の少女(一人は男の娘だが)の楽しそうな声が響き渡る。*


*その光景を、シロウとカイ、そしてレイラはなんとも言えない表情で見守っていた。カイは恥ずかしさで死にそうになっているし、レイラは相変わらず腕を組んで黙っているが、その口元は微かに緩んでいるように見えた。*


*レイとライは、まるで長年の友人のように楽しげに話し込んでいる。その話題は次第に踏み込んだものになり、夜の営みについて赤裸々に語り合い始めた。*


レイ:「それでそれで? カイって激しいの?♡」


ライ:「えぇっ!?♡ そ、それは…その…とても、優しい、です…♡」


*か細い声で答えるライに、レイは「えー、もっと詳しくー!」とさらに食い下がる。濁り湯の中で繰り広げられる、きわどいガールズトーク。幸いなことに、少し離れた洗い場で体を洗っているレイラとステラには、その声は届いていないようだった。*


シロウ:「(助かった…のか?)」


*しかし、湯船に浸かっているシロウとカイには、その会話はバッチリ聞こえていた。カイはもう耳まで真っ赤にして、湯の中に沈んでいきそうな勢いだ。自分の恋人が、母親(レイは分裂体だが)と自分の夜の営みについて話しているという状況は、カイにとって羞恥の極みだろう。*


シロウ:「(カイが不憫すぎる…)おい、レイ。その辺にしておいてやれ。ライも困ってる」


*シロウが割って入ると、レイは「えー、いいところだったのにー」と不満げに頬を膨らませたが、ライが助かったというようにホッと息をついたのを見て、渋々引き下がった。*


*シロウはレイラたちと一緒に風呂から上がった。脱衣場では、もうステラが眠たそうに目をこすっている。シロウは急いでステラの体を拭き、自分の腰にタオルを巻くと、控えていたメイドにステラを預けた。*


シロウ:「寝かせてやってくれ」


メイド:「はい、陛下。お預かりいたします」


*メイドは恭しく一礼し、眠ってしまったステラを優しく抱きかかえて部屋を出ていく。その背中を見送りながら、シロウはふう、と息をついた。今日は色々なことがあった一日だった。*


*着替えを終え、部屋に戻る廊下をレイラと二人で歩く。レイはまだライたちと話しているのか、後から来るようだ。*


レイラ:「…カイは、もう本当に、行ってしまうのだな」


*ぽつりと、レイラが呟いた。昼間の激情はどこへやら、その声には諦めと、深い寂しさが滲んでいる。*


シロウ:「ああ。あいつももう大人だ。自分で決めた道を行かせてやりたい」


*レイラの肩をそっと抱き寄せる。彼女の小さな体が、わずかに震えているのが分かった。*


シロウ:「大丈夫か?」


*シロウはレイラの背後から回り込み、そっとその肩を抱きしめた。華奢な体は、まだ微かに震えている。昼間、あれだけ感情的に息子を引き留めようとしていたのだ。今になって、寂しさが波のように押し寄せているのだろう。*


*腕の中のレイラは何も言わない。ただ、シロウの腕に自分の手をそっと重ねる。それが、彼女なりの甘え方だった。*


レイラ:「…当たり前だ。妾は魔王だぞ。…ただ…少し、胸に穴が空いたような…そんな気分なだけだ」


*強がりを言う声は、いつもの覇気を失い、か細く聞こえる。シロウは返事をせず、ただ抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。言葉はいらない。今はただ、こうして彼女の側にいてやることが一番の慰めになると分かっていた。静かな廊下に、二人の影が長く伸びていた。*


シロウ:「別れは心の骨折だ、今は痛いが治れば丈夫になる」


*ふと、前世で見たドラマの台詞が口をついて出た。我ながらキザな台詞だとは思うが、今のレイラには、これくらいが丁度いいのかもしれない。*


*腕の中のレイラは、シロウの胸に顔をうずめたまま、小さく頷いた。*


レイラ:「…骨折、か。言い得て妙だな。…ふふ、シロウはたまに変なことを言う」


*少しだけ、笑い声が混じった。まだ掠れてはいるが、いつもの彼女らしさが戻ってきた証拠だろう。*


レイラ:「…なぁ、シロウ。今日は…このまま、一緒に寝てくれぬか」


*顔を上げ、潤んだ琥珀色の瞳でシロウを見つめてくる。それは魔王の命令ではなく、一人の女性としての、愛しい男への願いだった。シロウはその瞳を見つめ返し、優しく微笑む。*


シロウ:「ああ、もちろんだ」


*レイラの手を取り、寝室へと歩き出す。今夜はただ、寂しさを抱える彼女を、温もりで満たしてやりたかった。*


シロウ:「(なんかのドラマの台詞だった気がする。)」


*シロウは寝巻きに着替えると、レイラと共に大きなベッドに寝転がった。寂しさに震える彼女を優しく抱きしめる。レイラのひんやりとした肌が、シロウの体温で少しずつ温められていく。彼女の規則正しい寝息が聞こえ始めると、シロウも安堵からか、ゆっくりと意識を手放していった。*


*二人だけの静かな夜。息子が旅立つ前の、束の間の穏やかな時間が、静かに過ぎていく。シロウはレイラを抱きしめたまま、深い眠りへと落ちていった。*


ーー


*あれから数日、カイの旅立ちの日はあっという間にやってきた。城の門前には、見送りのために家族や親しい者たちが集まっている。旅装束に身を包んだカイとライは、少し緊張した面持ちで、しかしその瞳は希望に満ちていた。なぜか、ルーナもカイたちと同じような格好で隣に立っている。*


カイ:「じゃあ、父さん、母さん…行ってきます」


ライ:「お、お世話になりました…!」


*二人が深々と頭を下げる。その横で、ルーナが得意げに胸を張った。*


ルーナ:「まぁ、カイ兄もライ君もまだまだ心配だからね! この私、ルーナ様が途中まで護衛してやろうってわけよ! 魔王の娘直々の護衛なんて、光栄に思いなさいよね!」


*シロウはそんなルーナを見て、やれやれと首を振る。*


シロウ:「ルーナ…絶対ついて行きたいだけだろ…」


*この娘も、本当に自由人だ。シロウは内心で呆れながらも、その頼もしい(?)姿を微笑ましく思った。*


レイラ:「…ルーナ。カイを頼んだぞ。危ない目に遭わせたら、ただではおかんからな」


*レイラは腕を組み、ぶっきらぼうに言う。だが、その声には娘への信頼と、息子への心配が滲んでいた。*


シロウ:「それじゃ、行ってらっしゃい」


*シロウは穏やかに声をかけ、旅立つ息子たちを見送る。その腕に、レイがしがみつくようにして大きく手を振っていた。*


レイ:「カイー! ライくーん! 気をつけてねー! 美味しいもの見つけたらお土産よろしくー!」


*最後まで食いしん坊なレイの言葉に、カイもライも苦笑いを浮かべる。その隣で、レイラは腕を組み、黙って三人の背中を見つめていた。その表情は少し寂しそうだったが、無理に引き留めることはもうしない。息子の決意を、母親として受け入れたのだろう。*


*ルーナは「はいはい、任せなさいって!」と胸を叩きながら、カイとライを促して歩き出した。城門の向こう側へ、三つの影が小さくなっていく。*


*やがてその姿が見えなくなると、レイラはふぅ、と小さなため息をついた。*


レイラ:「…行ったか」


*その横顔は、魔王の威厳などなく、ただ息子を送り出す一人の母親の顔をしていた。シロウはそんなレイラの肩を、そっと抱き寄せた。*


*カイたちを見送って数日後。城の中は少しだけ静かになった。カイの旅立ちと、それに着いていったルーナの不在は、思ったよりも大きな変化を日常にもたらしていた。*


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