53話 そして僕らは……(前編)
夏祭りから数年経ったある日スーツを着た京極晃は緊張の面持ちで椅子に座っていた。
「まさかこの日が来るとはなぁ……」
「ん?あぁそうか。めでたいな!」
目の前で啓馬は目の前の飯にがっつこうとして晃に視線で止められている。
「お前今日が何の日か分かってんのか?」
「何の日ってそりゃ新たな時代が開幕する日だろうよ。晃さんよ」
「お前そのめでたさで良くバスケ選手になれたなぁ」
浅香啓馬は仙石学園を卒業した後で某大学に推薦で進み、その後バスケットボール選手になった。その成績はすさまじく若くして次世代の日の丸を背負う一角である。
「その呼び名は止めろ啓馬。今の俺は野球選手じゃない。アイツの親友だ」
「フン。俺らの中で一番成長したのはお前だからな。ほら!」
啓馬は晃に複数枚の紙を出す。
「これは?」
「これ全部お前宛のサイン色紙だ!」
「何で俺宛のサイン色紙がそんなにあるんだよ!俺今警察官だぞ?」
「失礼だな。俺用だろ?実家用。職場用、それと諸々用だ」
「却下。何で俺がお前のために一肌脱がにゃならねぇんだ。大体お前の方が何倍も有名だろうが」
「頼むよ~!」
「大体お前は気楽なもんだな。読むんだろ?スピーチをよ。まぁ奴がお前を指名したことに関して疑問を持つ奴はいねぇよ」
「あぁ!ちゃんとチームの先輩たちに聞いて来たぜ!」
「大丈夫か?間違っても三つの袋の話とか止めろよ?今は令和なんだからさ」
「あたぼうよ!俺のスピーチに酔いしれやがれ」
二人が盛り上がっていると奥から釘をさすものが現れる。
「男子勢二人は気楽だね~」
「え、恵麻。お前随分と雰囲気変わったな」
「フフン!だってウチは今体育の先生だもん!」
恵麻は胸を張る。
「まさかバカ四強のお前が副教科とはいえ学校の先生になるとはね……」
「やっぱりあっちゃんのおかげか?」
「うん!学部違うけど同じ大学に進学したからさぁ……色々教えて貰っちゃったね」
「全くお前教育学部で淳志理工学部だろ?入試難易度は違うとはいえ良く協力してもらったな」
「それもこれも全部梨奈が繋いでくれたおかげだよ~。この髪も梨奈にセットしてもらったんだ~」
「梨奈アイツ美容師だからな。今自分の店持つために修行中なんだっけ?」
「そうそう。あ!来たよ!」
恵麻がそう言うとそこに来たのは綺麗に髪をまとめた金髪女子だった。
「啓馬&晃お久~!」
「あぁ久しぶり。成人式の同窓会以来か?直接会うのは」
「そうだね~まぁいずれこの街には戻ってくるつもりだけど。啓馬には会えないか」
「フフン。これでも近くのチームに所属した俺をほめやがれってんだ!」
「何がよ。近くのチームしかとってくれなかったくせに」
苦言を呈するのは園田明菜だ。彼女もまた綺麗な服を着ていた。
「ちげぇし!俺はこれから飛躍するためにそこで実績を積もうっていう考えだよ!」
「はいはい頑張れるといいわね」
「仲のいいことで。でも梨奈も明菜も来たのかてっきり来ないかと思ったよ」
晃はそう梨奈の方を向いて言う。
「失礼だな~。せっかく招待状来たんだから行くよ。元々恋愛云々抜きでも仲良かったしね後は人脈づくり?」
「人脈ねぇ……そりゃそうかもな。だってここに要人がめっちゃいるからな。ほらあそこに居るのは県警のお偉いさんだよ。挨拶してこないと」
晃はそう言って席を立った。
数年後このメンバーが再び集まったのには一つの大きな理由があった。
アナウンスが鳴る。
「ただいまより結婚式を開始いたします」




