48話 夏なのでプールに行こう!④
僕は水鉄砲をもって潜伏していた……
「啓馬…向こうの様子はどんな感じ?」
「あぁ今仁木が梨奈にやられたらしいぜ」
僕らの頭には金魚すくいのポイが付いている。互いに水鉄砲で撃ち合い全員のポイを破った方が勝ちと言うルールだ。ちなみに僕のチームは剛先輩、啓馬、僕、明菜、仁木さん、恵麻さん、渋川君で武史先輩のチームが、武史先輩、優香さん、晃、英二、梨奈さん、アンジェリカさん、光士郎に分かれている。これ一式がプールの奥にあるレジャー施設らしい。互いにカラフルなブロックの中に隠れているが……これが案外楽しい。
「ぎゃー!」
今光士郎の悲鳴が聞こえた。
「フフフ。毎日FPSで鍛えている私に勝てると思いかな?」
あぁ渋川君が居たよ……凄いなぁ……これで6対6だ……
「サバゲーではデカい的は不利デース。隠れられてませんヨ?」
「ぐぬぬっ!」
今5対6になったね……剛先輩……僕は貴方のことを一生忘れませんから……
その後英二が明菜に敗れ、優香さんを狙おうとした恵麻さんが何故か飛んできた武史先輩と相打ちになるなどあり……残ったチームは啓馬&僕vs渋川君&梨奈さんになっていた。
「あっちゃん…俺渋川を倒しに行くよ……」
「そ、そんな啓馬生きて帰って来るよね?」
啓馬は頷き、俺の頭にゴーグルを乗せた。
「俺はきっとこれを取りに帰ってくるから待ってろ」
啓馬~!僕は心の中で大声で叫んだのだった。
啓馬は帰ってこなかった。渋川君を倒しに行ったはずなのになぜか梨奈さんを追いかけた上に隙を見せて後ろから渋川君にズドンと殺られたのだった。
「クフフ。これは非常に気分が良いですぞ!いつもキラキラしている啓馬にこの陰の塊である僕が勝つ感覚…これはまさにたまらない。淳志殿も直ぐに送ってやりますからな……」
そうして僕のいたブロックに水鉄砲を向ける。
1人だけならどうせ動くと思ったのだろう。
「梨奈殿。挟み撃ちしますぞ」
「おけ♪」
二人はじりじりと僕のいるブロックに迫っていく。
「さぁお覚悟!っていない?!」
そう僕は小さな体を活かして既に別の方角に向かっていたのだった。油断を見せて空になった渋川君の頭(の上のポイ)を水鉄砲で思いっきり打ち抜いた。
「やられた~」
渋川君を倒し、最後は梨奈さんだけだ。でももう同じ手は使えない。
「あっちゃん~♪怖くないよおいで~♪」
甘い声で誘惑するけれど、僕はそんなのには乗らない!だって僕だって男だから。
こういう時は一気に近づくと間合いを取りにくいと聞いたことがある。僕は体を小さくして一気に突進していく……計画を立てたまでは良かったのだが。
既に水で濡れている床……そしてそれを年甲斐もなく走ったらどうなるか……そうです転びます。しかもただ転べば良かったのに僕の頭は梨奈さんの胸の中へ……
「うわあっ!」
「うわっ!」
僕は梨奈さんの豊満な胸にダイブしてしまった。頭の整理がつかない……何をやってしまったんだ僕は!
恐る恐る上を見てみると……梨奈さんの顔は赤かった。頭の上のポイは破けている……倒れた瞬間に水が飛んだのだろう。
「だ、大丈夫ですか……」
「う、うん……あっちゃんこそ大丈夫?」
「特に何も怪我は無いよ……」
周りの人も飛んで来て凄く凄く微妙な空気になる。
「と、とりあえず勝利は俺らの勝利だな!武史!俺ら七人の侍に何か奢れ!」
「はいはい……」
武史先輩が奢ってくれたのはやっすい100円の綿あめだった。でも僕はそれどころではない。僕が梨奈さんのおっぱいに……ダイブしてしまったこと。これは目の前の綿あめより重大なことである。隣に梨奈さんが座っていた。
「あっちゃん……ウチのおっぱいどうだった?」
「あわわ……す、すごく柔らかかったです!」
「フフ。正直♪」
奥で明菜が般若のような顔をして仁木さんに苦笑されていたけれど。
僕がすっころんで心配なのとこれで十二分に水を遊んだということで解散となり、僕と啓馬と晃と英二はN度目の失恋に打ちひしがれる晃のお姉さんを探しに行ってこれで僕らのプールは終わったのだった。
梨奈は男性勢が去った後で一つ考えた。
「あっちゃん……顔赤くして可愛かったなぁ」
彼女は頭の中で淳志の反応を反駁していた。
「マジ可愛いペットみたい……」
でも一つ考えてる。
でもウチの愛って彼氏に向ける愛なのかな……ペットに向ける親愛じゃないのかなと。
頭の中で淳志と誓いの口づけをする姿を思い浮かべる。どっちなのか分からない……
「梨奈?」
急に恵麻の発言で現実に引き戻される。
「あぁ今行く!」
梨奈の心の中にはまだ整理の付かない思いが残っていた。




