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3話 もしかしてお姫様?

翌朝僕が家のドアを開けるとそこには美波さんが待っていた。

「おはよう。淳史君♪」

僕は驚いて後ずさる。すると彼女は言った。

「そんなに驚かなくても良いじゃない」

「だって……」

すると彼女は笑って言った。

「昨日ぶりね」

僕は緊張して声が出ない。そんな僕を見て美波さんは言う。

「あら?緊張してるの?」

そう言って僕の頭を撫でる。僕は恥ずかしくて俯くことしか出来なかった。

「淳史君は可愛いわね♡このまま家で飼いたいくらいよ」

僕は思わずドキッとした。すると彼女は言った。

「ふふ、冗談よ。ほら重い荷物を持ってあげるから早く学校に行きましょう」

そう言って僕の荷物を取ると、僕に手を差し出してきた。僕は戸惑いながらもその手を握った。

「さぁ行きましょう♪」

そう言って美波さんは僕の手を引いて歩き出した。

「あのどうして手を…」

「そんなの決まってるじゃない。貴方を逃がさない為よ」

そう言って彼女は微笑む。その笑顔はとても怖かったが、同時に可愛いとも思ってしまった。

「向こうに車を待たせてあるから。早く乗りましょう?」

そのまま僕の手を引いて歩いて行く。まるで僕がお姫様みたいだ。そんなことを考えているうちに車までたどり着いた。仕方がないので僕は助手席に乗り込もうとする。

「何してるの?」

後ろから美波さんに指摘されてひっとなる。

「でも、僕みたいなのはここで…」

「ダメ。一緒に後部座席に座りなさい」

そう言って僕を強引に引っ張ると、そのまま車の中に引きずり込んだ。


僕はできるだけドアの近くに座った。隣に美波さんがいるので緊張しかしないのだ。すると彼女は言う。

「何で離れて座っているの。こっちに寄ってもいいわ」

そう言って長い腕で僕の身体を抱き寄せる。身体が美波さんに直接触れてしまう。

「ちょ、美波さん?!」

「何緊張してるの。このぐらい普通よ?それにいずれはもっと凄いことを毎日するんだから慣れておかないとね」

「え?」

「あら鈍感なのね。それとも鈍感なフリをしているのかしら?」

「え?」

「ふふ、まだ分からないのね。でもすぐに分かるわ」

僕の顔に指を這わせながらそう言う彼女。何か僕は安心感を感じていた。

そんな問答をしていると学校についてしまった。

「さぁ着いたわよ。早く降りなさい」

そう言われて僕は車から降りる。すると美波さんは僕に荷物を渡してそのまま何事も無いように「おはよう」と言って他の生徒に声を掛けに行った。


梨奈は普通に学校に登校していた。

「あ~。ダル~。こういう時にあっちゃんが隣にいてくれたらな~」

そんなことをぼやいていると、そこに淳史が現れた。

「おはようあっちゃ…」

その時目の前にあったのは衝撃の光景だった。


海城淳史が車から降りて来たのだ。流石に学年で成績がワーストクラスの梨奈でさえあんなバカ高い車をこの高校の誰が持っているかなど知っていた。あんな青い特徴のある車なんか神崎美波の家みたいなものだろう。

「なんであっちゃんがあの女と一緒に登校してるの…」

梨奈は言葉が出なかった。

「ん?梨奈どした?」

後ろから同級生が声をかけてくる。

「あ、いや何でもない!」

梨奈はその場を取り繕うようにして友人と歩いて行った。


学校に着くと美波さんは僕から離れた。そして言った。

「じゃあまたね♪」

そう言って彼女は自分の教室に戻って行った。僕は彼女の後ろ姿を見て思った。

(やっぱり綺麗な人だな……)

そう思っていると後ろから肩を叩かれた。振り向くとそこには梨奈さん達ギャル集団がいた。

「やっほ~あっちゃん♪」

「り、梨奈さん……」

僕は驚いて後ずさる。すると彼女は言った。

「そんなに驚かなくてもいいじゃん」

そう言って僕の両側をギャルが挟み込む。

「暴れても無駄だって。海城君の力じゃ振りほどけないよ?」

そう言われて僕は抵抗するのをやめた。すると……

「いい子良い子♪」

そう言って梨奈さんは僕の頭を撫でた。

「ねぇ?会長となに話してたの?」

そう聞かれて僕はどう答えればいいのか分からなかった。すると……

「もしかして告白でもされたとか?」

そう言われて僕は慌てて否定する。

「ち、違います!そんなんじゃないです!」

そんな僕を見てギャル達は笑う。

「あっちゃん慌てすぎw」

「そうだよ。別に隠さなくても良いじゃん」

「で、でも……」

「怖がらなくていいよ~。ウチアンタのこと嫌いになんないよ?」

そう言って両脇のギャルが僕のことをつつく。

「もちもちほっぺ~♡」

そう言って僕の頬を触る。

「や、やめてください……」

僕がそう言うとギャル達はさらに強く触ってきた。そして……

僕は階段から足を踏み外して階下に落ちてしまった。や、やらかしてしまった…僕の身体が硬い床に叩きつけられる

ことはなかった。僕の身体は柔らかいものに包まれた。

僕は梨奈さんにお姫様抱っこをされていたのだ。

「あっちゃん大丈夫そ?」

僕の体重を軽々と支えている。

「う、うん。ありがとう梨奈さん……」

僕は恥ずかしさで前が見えない。

「あっちゃん。お姫様みたいで可愛いね」

「お、お姫様って…」

僕があわあわしても他のギャルたちはニヤニヤして写真を撮っている。

「可愛い~」

「壁紙にしていい?」


「だ、ダメだよ…」

怖くて震える僕に梨奈さんは優しく声をかける。

「大丈夫だよ~。ウチがずっと守ってあげるからさ」

「え?」

「このまま教室まで運んであげるからね~」

そう言って僕を持ち上げた状態で梨奈さんは歩き出す。

「え?ちょ…」

梨奈さんが歩いていると段々手が僕のお尻に近づいている気がする。

「あ、あの梨奈さん?」

「ん?どうかしたん?あっちゃん」

「手がお尻に…てか揉んでない?」

「あら?手が滑ったわ。でもいいじゃん。ウチとアンタの仲なんだしさ」

「だ、ダメだよ!」

僕はじたばた暴れるが梨奈さんの腕力の前には無力だ。更にはもっと強く抱きしめられる始末。僕は茹でダコのようになりながら教室に着いたのだった。

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