29話 もしかしてデート?④
二人が卒倒しているのを尻目に僕はトイレに行くことにした。
これはその間の話である。
「それで佐竹ちゃんは何でぼっちでカフェテリアにいるんや?」
「ふぁっ!」
武史先輩のノンデリ質問に佐竹は面食らったらしくソファに身体を打ち付けた。先輩あんまりそう言うのを言うのは止めようよ……佐竹さんだって一人で買い物に来たっていいじゃあないか人間だもの。
「別に私はただ一人でいるわけでは……」
「嘘仰い。ワイらを盗撮してたんはバレバレやで!」
「凄まないでくださいよ。私が武史先輩と優香先輩のラブラブデート撮って何が楽しいんですか」
佐竹は淡々と3人に話していく。
「ふぅむ……ってことはまさか目的は会長……の隣にいる淳志の盗撮か?!おいおいそりゃこの世の何らかの法に触れるんちゃうかな?優香よ」
「そうだね…他の男子ならいざ知らず淳志くんを盗撮するって言うのはね……「仙石学園海城淳志くんファンクラブ」会員番号5番の僕からしてみれば下手な女子を撮るより重罪だねぇ……」
「せやな。てか何やそのファンクラブ。アイツと付き合いの長いワイでも初耳やぞ。お前それ創部したんかいキモォ!」
「武史は淳志くんと中学が一緒らしいのに知らないのかい?僕のクラスから仙石高校で既にじわじわと侵略して来ている部活だよ?クラスメイトの美波会長も知ってるだろう?」
「え、えぇ把握しているわ……(なんせ2年前にあの子が入学してすぐにそれを創始した教祖、会員番号0番のプラチナ会員は私なのだから……)」
美波は生徒会として淳志が入学したのを見届けた。そのすぐ後に偶然対面し、彼の無類の可愛らしさにあてられてそれ以来淳志への恋の沼に落ちてしまった。しかしその時の淳志は高校1年生でその無警戒さから攫われたり、お尻を触られたりする危険があると考えた。
そのため美波はその後その場のノリで淳志を不審者から守ろうと優香たちクラスメイトの女子4,5人とファンクラブを始めたのがそれだった。今は30人いるが、おそらく潜在的な教徒は倍近いだろうというのが美波の勝手な見立てである。
女子だけで始めたのでクラスも違うし男子の武史が知っている訳もない。そもそもそんな親衛隊があることなど当の淳志も知るわけがない。多分知ったら彼は自分を邪な目で見る女子たちに恐怖してしまうだろう。
「え?えぇ……それごっつ引くんやけどなぁ……」
「大丈夫よ。こちらのテーマは『イエス!あっちゃんノータッチ!』だから」
美波はそう驚く武史に微笑んだ。
「よ、よう分からんこっちゃなぁ……淳志ってそんなにか?ただチビで童顔なだけやろ」
「はぁ……武史には分からないんだね…彼はただの童顔ではないよ。女子たちにも力で絶対勝てない体躯、サラサラの髪、そしていつも僕たちをうるうる見上げてくるその性格。完全に無意識で女子を誘ってるよね。本当に悪い子だよ」
「えっ……えぇ……俺未だにこの高校に重度のショタコンが少なくとも30人はいるという事実に耐えられんのやけど……」
「私とタメの16歳の淳志君を溺愛しても別にショタコンに入りませんけど。そもそも先輩だって淳志君のこと気に入ってるじゃないですか」
「そりゃ。美波とか優香とか明菜とかが生徒会室でずっとその話してくるからやろ!その関係なかったら俺アイツと話してないかもしれんな……いやどうせ啓馬とか晃経由で近づいてくるか。まぁアイツ素直でいい奴やけどさぁ……」
武史は質問してきた佐竹に対してそう苦笑する。
「てかそもそも生徒会室で別に生徒会じゃない一人の男子の話ばかり出るって危なくないか?犯罪案件になってポリ公の世話なっても知らんで……」
「あら、私が警察に捕まるとでも?」
美波はそう武史に微笑んだ。
(そやった……アイツ学園でも有数の金持ち財閥の娘やったなぁ……ほなそのくらいちょちょいと事件抹消やな……いかんワイも消されるか……)
武史はそう思いつつ美波たち生徒会の女子たちの恐ろしさを理解したのだった。




