24話 京極晃の自宅訪問(後編)
晃の家を出発した二人を陰ながら見る影があった。美波とその使用人佐竹彩香である。
美波はいつも通り淳志の帰り道を陰ながら見守る(ストーキングとも言う)作業をしていると、彼は啓馬とともに帰っていた。何も珍しいことは無い淳志と啓馬は勉強と運動で適正が反対なのに幼稚園からの相棒同士であるということは非常に有名なことであり、そんなこと美波だって知っていた。
「この道…淳志君の家の方角ではないわね……」
美波はそうつぶやき、隣の使用人にも確認する。
「そうですね。あの町内は確か京極君の自宅の辺りかと……」
「あぁ野球部の晃君。淳志くんや啓馬くんとも仲が良いわねぇ…寄る用事があるのかしら?」
「今日京極君は休んでいたのでおそらく授業内容が入った封筒を渡すのが目的かと」
「なるほど流石彩香は淳志くんたちと同クラスなだけあって良く知ってるわね」
佐竹彩香は表向きは海城淳志や啓馬たちのクラスメイトでもあるが、その正体は幼いころから一緒に過ごしている主人である神崎美波の従者として付き従うことにある……はずなのだが実際には淳志に危険がないかクラスで見守っているようにと言う密命を受けさせられていたりもする存在である。ちなみに彩香が美波の従者と言う事実はほぼ誰も知らないことである。
そのまま二人が足を進めるとやはり二人は晃の家に着いていた。
扉を開くと中からマスクをした晃が出てきた。
美波が双眼鏡で覗くと啓馬は晃に封筒を手渡していた。どうやらあれは欠席者に渡す封筒らしい。
「家に入れればいいのにどうして庭先なんかで渡すのかしらね。まぁ観察しやすいからいいけど」
「おそらく部屋の中の18禁の本を見られたくないからじゃないでしょうか?京極君にはそういうところがありますから」
「……あなたねぇ」
美波は渋面を作るが、しばらくすると後ろの扉から声が聞こえてきたらしく晃は嫌そうな顔をしながら二人を家に招き入れる。
「ま、まさか私が淳志くんを見守っていることがバレたのかしら?」
「そんなことはありません。京極君は速い球を見切ることはできますがそれ以外に対してレーダーは働かない体質のはずなので」
美波は心配そうにつぶやいて使用人の方を見るが彼女はそんなことを言わずに双眼鏡で見ている。
しばらくすると流れが変わる。何か女性が来たではないか。
「だ、誰なのかしらあの女性は……」
「京極君の母親ではないようですね。そういえば彼には大学生の姉がいるという情報を小耳にはさんだことがあります」
美波は動揺した。
「だ、大学生の姉?アウトじゃないかしら……もしかして狙っている可能性は?」
確かめてみましょう。と彩香はスパイ映画さながらに高速で移動して窓から覗き込んだ。
彩香は非常に高い身体能力を有しており、それで陰ながらクラスに貢献している。
美波もそれに続いていく。
窓から覗き込んで彼女たちは驚いた。何かさっき入ってきた女性が淳志に抱き着いているではないか……
「ふぅん…淳志君をたぶらかすのね……」
「完全にアウトですね。あの女はショタコンで決まりですね。110番しましょう」
そう言ってスマホを出した彩香を美波は制する。
「まぁ待ちなさい。ここで電話したら私たちが覗いていることもバレてしまうわ」
「ハッ……そうでした申し訳ありません」
彩香はペコリと頭を下げる。
「でも許せないわ。今この間も淳志君があの女に犯されているかもしれないなんて」
「一応浅香君と京極君のお二人がいるので大丈夫ではないですかね…あの二人だってちゃんと対応できるでしょう。バカですけど」
「まぁそうね。少しは頼りになるわねバカだけど」
しばらくして淳志と啓馬は晃の家から出た。その時も謎の女性は付いてきていた。
二人は頭を下げて出て行った。
「行くわよ彩香?」
「はいお嬢様」
そう言って二人も去ろうとした時……
「あ!会長と佐竹じゃねぇか!」
そう啓馬の大きい声が聞こえた。どうやら二人のことを見つけたらしい。
「啓馬君じゃない。それに淳志君も」
「こんにちは会長」
淳志も頭を下げる。
「お二人とも一緒ですか?」
「いや。丁度ここで鉢合わせたのよ。ね?佐竹さん?」
「うん。そうだよ?偶然ここでお嬢、じゃなくて会長と鉢合わせただけだよ。ねぇ会長?」
二人はぎこちない動きで淳志と啓馬に挨拶する。
「何だ!やっぱ偶然っていうのはあるもんだな!さてと…じゃあ俺も帰るか!」
「じゃ僕も……じゃあね美波さん。佐竹さん!」
そうして覗かれていることにも気づかなかった二人は帰っていったので二人は手を振って見送った。
「やっぱり淳志様には危機感がないのでは?」
「そうね。だから守るためにあなたがいるんじゃない」
彩香の肩を美波は優しく叩いた。




