22話 京極晃の自宅訪問(前編)
今日晃は学校を休んだ。何ということは無いただの風邪らしいが。
「へぇ~晃風邪なんだね……」
僕はそう啓馬に言った。
「まぁ……そうみたいだなぁ……まぁバカは風邪ひかないとかいうけどアイツは唯のバカじゃないんだな!」
いや……バカは風邪をひいたことに気づかないだけで晃の体内にどんな病気でも治せる特殊な抗体がある訳ではないと思うんだけどな……
「まぁしかしこの期に及んで今日俺はその晃の家に授業のプリントだけ置いてかなきゃならないと来た」
啓馬は右手に茶封筒を持っている。あぁそういえばこの高校でも欠席した生徒の家にプリントを置いてくるとかいう風習はあるんだったね。
「三条先生に『啓馬は晃君の家知ってますよね』とか言われてよ……留年回避のために媚びるために受けといた。あっちゃんも一緒に行こうぜ。アイツの家行くの久々だろ?」
啓馬は僕を誘う。まぁ僕も行きたくないわけではないけど……一回だけ行ったけどあそこの家の人ちょっと怖いんだよなぁ……まぁそんなことを考えながら僕と啓馬は晃の家に向かっていった。
「ゴホゴホ……ありがとよ。啓馬、淳志……」
晃はマスクをして家から出てきた。顔色は少し悪い。
「おうよ。バカは風邪ひかねぇとか言うくせにお前は引くんだな」
「バカめ。俺が風邪なんか引くかよ!こんなのかすり傷だ」
晃はそう虚勢を張るが、病気の話をしているのにかすり傷とはいったい……
「まぁ今日は特に酷いけどよ。医者曰く薬飲んでゆっくり養生してれば明日には治るんじゃないかってよ」
そうして僕は外で受け渡しをした。しかし何で晃は僕たちを家に上げないのだろうか。それを察したのか晃は口を開く。
「家散らかってるからよ。悪いがお前らを上げれる状態じゃないんだ」
晃がそう残念そうに答える。まぁ僕も家にわざわざ挙げてもらう様なことはしてないのでいいが……
そんなことをしていると奥から声が聞こえてきた。
「晃~?玄関で何してるの?」
「げっ!母ちゃん?!こいつらすぐ帰るってよ!」
晃はそう奥へと叫ぶ。母は完全に呆れ顔だ。
「誰かと思ったら淳志君と啓馬君じゃない。いつも学校でお世話になってるんだからちゃんともてなさなきゃダメでしょ」
「いや……そういう訳にもいかねぇだろ……」
「丁度頂き物のお菓子があるじゃないの」
晃の母親はそう晃をたしなめる。
「いや……まぁいいか。どうせまだ帰ってこないべ」
晃は壁掛け時計を見てからそう言った。
僕と啓馬は晃の部屋に座ってお菓子を食べていた。
「晃は凄い良い人ですよ。まぁどのくらいかと言うと僕といつも遊んでくれます」
「そうだな。晃は良いやつだ!バカだけど……」
「おいおいバカなのはお前も一緒だろうが」
「晃にも高校の友達ができてよかったわ。まぁバカだけど」
「母ちゃんまで……」
晃はそう母親をたしなめる。
「でもまぁ……お前らが仲良くしてくれてるおかげで俺も生活できるんだからな。そこは感謝するぜ。啓馬とは持ちつ持たれつだがな」
晃はそう言って笑ったので僕たちも笑う。部屋を見回すとそこかしこに野球選手のポスターがあるし、バットの抱き枕まである。
本当に野球が好きなんだなと思った。
ガチャと玄関のドアが開いた。
「ただいま~!」
玄関からそう澄んだ女性の声が聞こえてくる。
「誰だろ?あっちゃん知ってる?」
「いや知らないよ。俺晃の家の子じゃないもの」
僕は晃の方を見てみる。晃は灰になっていた。
「か、帰ってきやがった……クソ姉貴が帰って来やがったァ。何だ今日はバイトじゃねぇのかよ」
晃はそうぼやく。どうやら晃の姉が帰ってきたみたいだ。
「あれ?もしかして晃って姉が苦手なタイプか?」
啓馬は面白そうに聞くし、僕も意外な弱点を知ったので興味深く思った。
「まぁな……世の姉なんて弟を奴隷としか思ってない種族だ。ライトノベルの幻想に浸るのは諦めた…だが俺の姉貴はそれだけじゃないんだよな」
晃は立ち上がると扉を開けた。
「ちょっと俺が応対するから部屋の中で待っててくれ。特に淳志お前は出てくるな」
そう言って晃は部屋を出て行った。いったい何があるというのだろうか。




