001 違和感 その1
モンスターの名称を「モンスターラビット」から「魔物兎」に変更しました。
*002,003も同様です。
ある日の朝―――
その日は青い空に所々と灰色掛かった雲が漂っている、そんな天気だった。
その空の下で、刀身に空の青さを写すほど何者にも汚されていない剣をカイは見詰めていた。
そう、今日は『剣士等級試験』当日。
国中の受験者はこの日に合わせて両親や祖父母などに剣を買ってもらう。
カイも例外では無く、父から一級品の剣を買ってもらっていた。
カイはそっと柄を握り、感触を確かめる様に静かに振るう。
剣は以前に増して鋭い音を放ち、虚空を切り裂く。
「よし……イケそうだな……」
その感触は良かったのか静かに喜びの声を挙げる。
その後、数回余韻を愉しむように剣を振るい、満足して鞘に仕舞って、身支度を済ませ、集合場所である【中央広場】にヘスと向かった。
◇◇
【中央広場】に到着した二人は脇目も振らず受付へと向かう。
「すみません、受験するカイ=ヴェルナーとヘス=ヴェルナーです。手続きをお願いします」
「カイ=ヴェルナー君とヘス=ヴェルナー君ですね、少々お待ち下さい」
そう言って受付の女性は丁寧に積み上げられた資料の中から慌ただしく2枚の受験票を取り出して二人に手渡す。
「こちらが受験票となっています。無くさないように注意して下さい」
「「分かりました」」
どうやらカイとヘスが最後だった様でその後直ぐに試験の説明が始められた。
試験の内容は至って単純で、モンスターの討伐だ。モンスターと言っても討伐対象は主にモンスター化した動物達である。
ゴブリンやオークと言ったモンスターもいるのだが、それらは知能がモンスター化した動物に比べて格段に高く、試験には不適切な為に除外されたらしい。
それでも結局は上級のモンスター化した動物を狩ることになるのでそこまでの大差は無いらしい。
粗方の説明が終わり、今から班での行動になる為、五人一組の班が発表される。
カイとヘスは偶然にも同じ班であった。その他の班員は大貴族の息子と平民の娘、そして一人の異様なオーラを放つ少女であった。
ティナ=キスト、カイと遜色無い剣の実力を持ち、『神童』と人々から呼ばれている。
何故、拮抗した実力を持つ二人の間にこの呼び名の差が出来たのかは、彼女が聖剣【ラファール】の所有者である事が関係している。
聖剣【ラファール】
太古よりその剣は伝わり、世界に10本存在する聖剣のうちの1本だ。
脈々と受け継がれてきたその剣は、これまで幾度となく魔王を地の底に葬ってきた。
ただ、魔王は復活する、それは常識である。
それも魔王は復活するその毎に力を増していき、今は歴代最強と言われている。既に9人の【所有者】が挑んだがその悉くを軽く往なされた。
そんな中現れた10人目の【所有者】、その知らせは国中を大きく沸かせた。
運悪く、『国の英雄』がカイと同じ班であった。カイは僅かに肩を落とす。
ティナはそんなカイに不意に近づき、手を差し出す。
「宜しくね、カイ=ヴェルナー君。楽しみにしてるわ」
不敵に笑うティナの内心を感じ取ったカイは、それに受けて立つ意思を持って握手を交わした。
「あぁ……宜しく」
今ここに今年の再から最強を決める戦いが幕を開けた……
◇◇
場所は変わり、ルギフ王国から南に馬車で約1時間ほどの所に位置する世界三大森林の1つ【ケニル大森林】
一歩踏み入れるとまるで別世界の様な感覚を味わう。
寒くも無いのに肌に刺さるような空気、鬱蒼として暗い雰囲気―――
それでも時々、木々の隙間から漏れ出る光が無数の幕を創り出し、至る所で交差し、また不思議な光景を生み出す。
それは余りにも幻想的で、この森の中に惹き入れられてしまうほどに―――
カイ達の班は試験官一人を加えた編成で森の中を突き進む。
しばらく経って全員の足が止まる。近くに、この森の不穏な気配とはまた違う〈獣〉の気配を感じ取る。
その方向に目をやると、如何にも気持ち良さそうな体毛、長くて白い耳、口に収まらないほどの前歯、そしてなんと言ってもモンスター化した証拠である、紅の瞳を持ったウサギの群れがいた。
魔物兎と呼ばれ、非常に低級のモンスターで駆け出しの剣士でもそこまで苦戦はしない相手である。
試験官が一同を見渡しておもむろに言葉を発する。
「取り敢えず肩慣らしだ。一人ずつあの魔物兎を討伐してもらう。まずは……ティナ=キスト、君からだ」
「分かりました」
そう短く答えたティナは鞘から剣を抜き構える。
そして軽く地面を蹴ったかと思うと、10m以上はあった距離が刹那の間に0となり、振り下ろされた剣が魔物兎に猛威を奮う。
魔物兎は斬られたことにすら気づかない様子で、断末魔をあげることも無く、その体を2つにした。
その驚異の身体能力に班員の誰もが唖然とする。
聖剣持ちは驚異的な身体能力を持つと聞いたことがある。それは聖剣によって底上げが成されているかららしい。
ティナも聖剣の恩恵を受けているのだろう。
「はっ……!つ、次はヘス=ヴェルナー、君だ」
ティナの戦闘を見て唖然としたのは試験官も例外では無かったらしい。
慌てて我を取り戻し、職務に努める。
「は、はい……分かりました」
そこからティナ程では無いものの、それぞれが素晴らしい剣を披露していく。
そしてカイの順番が回って来る。
同じ様に剣を抜いて構える。
カイは、地を蹴り、その間合いを一気に詰める。
そして剣を横に薙ぎ払う―――が……
「えっ……?」
カイは思わぬ手応えに困惑の声を顕わにした。
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