012 未知との出会い
『011』との間で矛盾点があったので修正しました。
「―――くぅん、―――カイくぅん!」
その声によってカイは目覚めるが……目覚めは最悪だった。
目を開けると、目の前に巨大な男の顔があった。
割れている顎に、青くなった髭、何より一切瞬きをしないその目が恐ろしく見えた。
カイは新手の魔人かと疑い、臨戦態勢に移ろうとするが、それよりも早くその男に抱き締められる。
「カイくぅん!目を覚ましたのね、良かった!」
カイは訳も分からず、ただ女口調で話す男に馬鹿力で抱き締められ続ける。
(だ、誰なんだこいつは!?)
「パトリク、それくらいにしとけ。カイが苦しそうだぞ」
そこにやって来たのは、別会場で試験を受けていたヘスだった。
「あらそう?ごめんね、カイくぅん」
開放されたカイは、取り込むことの出来なかった酸素を素早く、大量に取り込んだ。
「ごほっ……ヘスそいつは誰なんだ?」
「こいつはパトリク=シシュカ、カイの事がお気に入りらしい。会場で声を掛けられて、カイに会わせてくれってな」
そう、パトリクは俗に言う『オネエ』である。
カイは生まれて初めて『オネエ』と言う人種に出会った。
「ま、マジかよ……」
「これから宜しくね!カイくぅん」
(そんな可愛らしくも無い声で言われても、その見た目だと断るに断れないよ……)
「あ、あぁ……宜しく」
そして二人は力強く握手を交わした、いや……無理矢理交わさせられた。
◇◇
その後、調査団が調査にやって来て、あれやこれやと事情聴取された。
だが、どうしても思い出せない空白の時間。
しかも、ちょうどその間の時間に魔人は何処かに消え去って行ったらしい。
周囲の目撃証言に依ると、カイが突然別人の様な動きをして魔人を圧倒したと言う人も居る。
だがそれはカイ自身が信じれなかった。
記憶が抜ける直前、カイは圧倒的に押されて、ただ死を待つだけの存在となってしまっていた。
そんな状態からハイノを追い込むなんて到底不可能だ。
そしてカイには勲章が与えられると言う話だった。カイは勿論断った。
それでもこの戦いにおいて武勲を立てた者を挙げて表彰すると言うのが国の方針で、その矛先がカイに向いていた。
他に、国が王都内に魔人の侵入を許した事実から平民の目を背けさせる狙いもあった。
そこで出したカイの答えは勲章の授与を拒否する事だった。
自分の知らない間にハイノが居なくなった、そのことに対して勲章を貰うのは相応しくないと考えたからだ。
そしてカイはその矛先をティナに向け、自分は上手く災難を逃れた。
ティナも勿論拒否しようとしたが、その時にはすでに遅く、断れない状況となっていた。
数日後、ティナは国で3番目に栄誉ある勲章『パンテーラ』を国王から直々に受け取った。
街では新たな英雄が誕生したと―――
こうして、死者0人、負傷者87人と言う歴史上類を見ない形で『剣術学院入学試験』は幕を閉じた。
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