011 問題だらけの入学試験 その7
カイは死を悟った。
これから来るであろう痛みを覚悟し、無意識に体が恐怖に束縛される。
それから何秒経っただろうか……
しかし幾ら待てど、ハイノの剣がカイの命を刈り取る事はなかった。
やがてその束縛から開放されたカイは、後ろに振り向く。
そこにあったのはティナがハイノの剣を受け止めている姿だった。
「お前、何を……?」
そんなカイの疑問は、ティナの退場により流される。
ティナはハイノの剣の重さに耐えられず、吹き飛ばされ、激しく壁に打ちつけられて意識を手放した。
「とんだ邪魔が入ったぜ、さぁ仕切り直そうかっ!カイ=ヴェルナー!」
ハイノに再び剣先を向けられて、カイは恐怖に慄く。
何とか絞り出した勇気と気力で〈木の枝〉を構えるが、恐れを成して、最初の様な覇気を一切感じない。
そしてまたハイノが視界から消える。
もうカイを助ける者などこの場に立っておらず、全員がそれぞれの戦いで疲弊している。
次にハイノが視認出来たときは、それは死の数瞬前である。
(情けないのぉ〜)
突如、頭の中に聞き慣れない声が響く。
(今回は手を貸してやるぞよ)
その声が途切れた瞬間、カイの意識は一瞬にして失われた。
再びハイノが背後から現れて、首を刈り取るべく【メルクーア】を振るう。
「ははっー!これで終わりだっ!……何?」
ハイノの中では有り得ない事態が起こった。
ハイノの剣がカイの〈木の枝〉によって止められていたのである。
魔王軍幹部の中でもトップクラスの素早さを持つハイノがいとも容易く見切られていた。
一旦距離を取ったハイノは徐に口を開く。
「お前は、誰だ……?」
ハイノが感じたのはカイとは違う別の何かだった。
「ほっほ、この体は中々いい鍛え方をしているな」
カイの喋り方が老人のそれになっており、〈木の枝〉の構え方も全くの別物であった。
その老人と目が合ったハイノは、背筋が凍りつく様な恐怖心が全身を駆け巡った。
「ほぉ……お前はハイノだったかの……」
唐突に名を当てられたハイノは動揺を起こす。
「っ!何故、俺の名を……?」
「それは昔―――おっと、この話は止めておこうかの」
まるで口止めでもされているかの様に話を切る。
「さて……さっさと終わらせるかの」
そう言うと、カイの姿が視認出来なくなった。
ハイノが視認できないという事は、ハイノよりも速く動いている事を物語っている。
一拍置いて、ハイノの目の前にカイが姿を現したその瞬間、ハイノの体に30を超える傷が出来た。
神速の三十連撃を放ったカイは、静かに鞘に〈木の枝〉を仕舞う。
「ま……て……まだ戦いは、終わって……いないぞ……」
ハイノはまだ諦めて居らず、しぶとく立ち上がろうとするが、最早立ち上がる事すらできない。
突如、ハイノが独り言を始める。
「まだ、いける……!いやっ!まて……。ぐっ……分かったよ……」
ハイノが何かに屈服した途端に辺りが眩い光に包まれて、ハイノとワイバーンが忽然と姿を消した。
そして受験生一同は安堵し、その場に倒れ込んだ。
カイは意識を失ったままだった。
これにて入試編完結です!
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これからも私の拙作を宜しくお願いします!




