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…ある人物を探していただきたいのです」
客用のソファに座り、深刻そうな面持ちでそう告げる依頼主。先程電話をかけてきた人物に相違ないだろう。
そうして、依頼主は1枚の写真を取り出し机の上に置く。そこには美しい30代くらいの女性が依頼主と共に写っていた。
「なるほど。この女性を探して欲しい、とのことですね?」
「えぇ…実は数年前離婚した元妻でして…。会いたいという訳では無いのです。消息だけでも掴めれば…」
「分かりました。他に情報がありましたら、出来るだけご提示くださると助かります。発見し次第ご連絡入れますので」
「はい、お願いします…!! 僕にはもう彼女しかいないんです…!!」
「失礼致しますわ。粗茶ですの」
「あ、あぁ…ありがとうございます」
慣れた手つきで麗花が依頼主の前にもてなしの茶を置く。その所作が実に似合っていて、依頼主の男はつい麗花に目を奪われる。
「…では、もう少し詳しい話を。その後は契約書に判と直筆のサインをお願いします」
その男の視線に少しだけ表情を変えた冠城だったが、すぐにいつもの無表情に戻り淡々と話を進めていく。
男は探している女性の情報をあるだけ提供し、契約書を作成した後に事務所をあとにした。
「…あー、面倒だな…。人探しが1番時間かかるし割に合わん」
依頼主の男が帰ったのを確認した後、冠城は心底怠そうに愚痴を吐く。ソファに寝転がり仕事モードから打って変わって完全にだらけモードに移行している。
「ふっつーの依頼でしたわね。私が来てから3回目くらい?ですの?」
「あぁ。こっちは本業ではあるけどメインでやってる訳では無いからな。正直金には困ってないし、やりたくないんだが…」
「でも、やらないとダメなのでしょう? こっちをこなさないと、あっちが儘ならないって自分で言ってたじゃないですの」
「ん、まぁなー…。こっちも定期的にやっておかないと、『あいつ』が満足しないし…何もしてない探偵事務所とかカモフラージュにもならんしな」
「というか、何で探偵事務所なんですの? あっちの仕事を隠すなら別に探偵じゃなくても…」
「いやー、だって普通に働きたくないし。何より『あいつ』がそういうの好きでね。何かしらやってないとダメってんならこれが1番角が立たない」
「あー…『あの人』の命令なら仕方ないですわね。まぁ、事務所っていう体なら私が居ても何も問題無いのポイント高いですの」
「そういうこった。後者は完全に成り行きだけどな」
表の仕事は私立探偵。裏の仕事は殺し屋。なんというか、どちらも依頼を受けて仕事をするという体ではあるので、体裁は良いと言えるかもしれない。
が、先程の麗花の発言から察するに探偵の方の仕事の方はあんまり芳しくないらしい。月に1度依頼があればいい方だとか。
とはいえ、冠城にとっては嬉しいことかもしれない。彼はそもそもアグレッシブに動く人間ではない。むしろ麗花が来るまではどうやって生活していたか疑問に思うレベルである。
「貴方様のやる気の無さにはもう慣れましたけど…私が来るまでどんな生活をしていたんですのよ」
「…不健康極まりないというか。死ぬギリギリまで食わないとかザラにあったなぁ。本当今は助かってるわ」
「今でもそこまで健康体には見えないのに、昔はもっとやばかったんですのね…。『あの人』に何と言えば…」
「や、やめてくれ。殺される。基本的に放任主義だが、流石に過去の惨状が知られれば『あいつ』なら殺りかねん」
「それは困りますわ! 私を殺すまでは五体満足でいてもらわないと!!」
「いつも通り欲望丸出しだな…。…取り敢えず、今日は情報整理して、明日には本格的に捜索始めるぞ」
「はいですの!!」




