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「…ねぇ、貴方様?」
「どうした、お嬢さんよ」
「さっき久しぶりにあっちの方の依頼がありましたわよね?」
「あったなー、珍しいことに女性からの依頼だったわ」
「因みに昨日は本業の方の依頼がありましたわよね?」
「おう、そうだなー。昔別れた元妻を探して欲しいとかなんとか」
「その時その女性の写真貰いましたわよね?」
「貰った貰った。ついでにさっきの依頼主からターゲットの写真も貰ったな」
「…気付いているとは思いますけども」
「うん」
「…これ、一緒の写真じゃありませんこと?」
「おう…こんな偶然あるのな…」
日付が変わってしばらくして。久方ぶりに冠城の仕事用の携帯に着信があった。曰く、急ぎの依頼らしく取り敢えず会って話すことに。依頼主の女性は「ある男を殺してほしい」と告げ、契約書を書きついさっき帰っていった。
その時に置いていった、殺害対象の写真にはどこか見覚えが。具体的に言えば、つい昨日受け取った写真と全く同じものを渡されたのである。
「えっと、つまり…昨日の男性は今日の女性を探していて…」
「…今日の女性は昨日の男性を殺したい、と」
麗花と冠城はお互いに目を見合わせて、昨日今日の依頼を振り返る。
どうにもこうにも流石にこんな奇跡が起こることは滅多に無いだろう。とはいえ、この奇跡は冠城にとっては幸運であることに違いない。
「いやー、でも助かったな。数日はかかると思ってたけど、今日中には終わりそうだわ」
「そうですわね。そうと決まれば早めにお2人に連絡を取らないとですわ」
男の依頼は、『写真の女性の探して欲しい』とのこと。会いたいとかではないと言っていたが、会わせても何も問題は無いどころか彼にとっては最良だろう。
女の依頼は、『写真の男性を殺して欲しい』とのこと。普段は依頼を受理した後には基本的に関わらないのだが、今回は例外として現場に立ち合ってもらうことになる。
「にしてもですわ」
「ん? どした?」
「この男性、羨ましいですわね…」
「またそれか…」
「だって、目的が達成された上で貴方様に殺していただけるのでしてよ!? これ以上の幸福があるのかどうか…否、ありませんわ!」
「まぁ、お嬢さんならそうだろうなぁ…」
男性の境遇は、麗花にとっては垂涎もの。例えて言えば、二兎追って二兎仕留めたみたいなものだろうか。あくまで麗花にとっては、の話だが。
「ま、お2人さんは平等っちゃ平等かな」
「どういうことですの?」
「哀楽の順序が違うだけ、って話だよ」
最終的に得をするのは自分だけ、とでも言いたげな冠城の微笑を、麗花は全てを理解した様子で見つめていた。




