第二十章の第一節:限界の警吿燈と、二度目の沈默
新組織がアジト最深部に構築した「近代化搾乳工場」は、五名の檢體を揃えたことで神話的な富を生み出し續けてゐた。しかし、どれほど科學的に管理され、ホルモン劑が投與されようとも、彼女たちの肉體は無限の資源を產み出す魔法の泉ではなかった。
第十一章における手下二人の時代に一度完全に枯渴した乳腺を、新組織の醫療技術で無理やり「再生」させ、さらに最下層での過酷な生活によって母と姉までをも卷き込んだその代償は、ある日突然、より深刻な形でラインの全停止という現實となって現れた。
ピーーー、ピーーー、ピーーー。
無菌室の靜寂を引き裂くように、赤く點滅するエラーの警吿音が電子モニターから鳴り響いた。
「首席! 檢體A(美波)、B、Cの三名、乳腺の分泌値がゼロに急降下しました。ホルモン劑の最大投與を行っても、腺組織が完全に線維化し、一滴の分泌も拒絕してゐます!」
技術員の悲鳴のような報吿に、首席は手にしていたクリップボードを强く握りしめ、眉をひそめた。さらに、その鄰のモニターの數値も次々に暗轉していく。
「……檢體D(母)およびE(姉)も同樣です。最下層での强制的な繁殖フェーズによる疲弊が想定を超え、ラインが完全に凍結しました」
かつてレフティらの時代に起きたあの「ミルク枯渴」という惡夢が、より大規模に、より逃げ場のない完全な沈默となって、白亞の近代化工場へと再び襲いかかったのである。




