第三節:白亞の無菌室への歸還と、五名の增產ラインの完成
數ヶ月に及ぶ最下層の檻での生活を經て、首席のカルテには豫定通りの「數値」が刻まれることとなった。
「首席、檢體D、Eともに陽性反應が完全に定着。最下層での飼育による繁殖フェーズは成功を收めました。直ちに上層の白亞の無菌室へ移送し、分泌促進フェーズへと移行します」
醫師たちの無機質な聲とともに、原型を失い、完全に魂を拔かれた母と姉の肉體は、最下層の泥濘から再び引き揚げられ、あの最先端の設備が竝ぶ無菌室へと運ばれた。
嚴密なホルモン投與と高榮養の點滴により、過酷な蹂躙で衰弱してゐた二人の五體は、次の「ミルク利權」を最大化させるために、乳腺と子宮だけを强制的に肥大化させられた、奇形的な肉體へと仕立て直されていく。
無菌室のベッドには、檢體A(美波)、檢體B、檢體Cの三名と竝んで、同じように「機械の一部」と化した母と姉が固定されてゐた。彼女たちの胸部には、最新型の機械式搾乳吸入器が容赦なく裝着されてゐる。
「う……あ……」
檢體A(美波)は、腫れ上がった瞼の奧の濁った瞳で、鄰のベッドで完全に「繁殖と搾乳の機械」へと成り下がってゐる最愛の母と姉の姿を見つめてゐた。かつて國家のために戰い、どれほど過酷な折檻を受けても反擊の隙を狙い續けていた彼女の鐵の意志も、この高度にシステム化された「家族全員の家畜化」という絕對的な絕望の前には、ただ血の淚を流すことしかできなかった。
機械の規則的な驅動音とともに、透明なチューブを通じて、五名のミューズたちの肉體から、一滴の無駄もなく濃厚なミルクが吸い上げられ、ステンレス製の保存タンクへと流れ込んでいく。
ボスが變わり、組織が變わり、どれほど科學的に近代化されようとも、彼女たちに用意されていたのは「怪物の利權を潤すための生贄」という、逃れられない殘酷な終着點であった。
南アフリカの乾いた大地の最深部で、新組織の搾乳帝國は、五名となった人形たちの終わりのない嗚咽と機械の脈動を響かせながら、さらなる狂氣と富の深淵へと、どこまでも深く、冷酷に突き進んでいくのであった。




