第二節:檻の中の「日常」と、囚人たちによる每日の暴走
最下層の監獄での生活は、濕ったコンクリートの冷氣と、鐵錆、そして男たちの汚濁の臭氣がすべてを支配する、逃げ場のない「破滅のルーティン」であった。
檢體D(母)と檢體E(姉)には、一筋の衣服も與えられず、ただ冷たい鐵格子に圍まれた巨大な檻の中に常に放置されてゐた。彼女たちに與えられるのは、肉體の生命維持と次なるミルクの分泌適性を維持するためだけに計算された、泥狀の榮養劑と最小限の水だけであった。
定時を吿げる不快なブザーの音が、一日に何度も地下室の冷たい空氣を引き裂く。
それと同時に、最下層に幽閉されてゐる粗暴な囚人たち――組織の罪人や現地マフィアの捕虜たちの、獸のような足音と下劣な怒號が鐵格子を激しく搖らした。彼らにとって、この檻の中に橫たわる二人の女を消費することは、首席から與えられた唯一の配給であり、過酷な監禁生活における最惡の娛樂であった。
「おい、今日の奉公の時閒だぞ! 極道の女ども!」
見張りの兵士が笑いながら鐵格子のロックを解除すると、飢えた男たちが一齊に檻の中へと雪崩れ込んでくる。
かつて新ボスの時代に一度捕らえられ、その後クーデターの混亂で日本へ逃げ歸ってゐた頃の記憶は、每日のように繰り返される壓倒的な暴力と、囚人たちによる容赦のない肉體的結合の前に、完全に消し飛ばされてゐた。
最初の頃に上げてゐた姉の喉を引き裂くような絕叫も、我が子を庇おうとしてゐた母の必死の抵抗も、今や見る影もなかった。二人はブザーが鳴り、汚れた男たちの群れが檻に押し寄せてきても、もう身を縮めて拒絕することもしなかった。ただ、精神を完全に去勢された機械人形のように、自ら冷たいコンクリートの床へと橫たわり、男たちの欲望を事務的に處理するための「肉の穴」として、ただ無言で身體を痙攣させるだけの「日常」を淡々と送ってゐた。囚人たちの暴走は、彼女たちの皮膚に靑黑い痣と擦り傷を絕え閒なく刻み付け、その肉體は男たちの汚濁によって一刻も淸淨な時閒を許されなかった。




