第十九章の第一節:隔離された飼育空閒と、首席の非情なる增產タイムライン
白亞のアジトの最深部に君臨する首席の目的は、衝動的な情欲の充足などでは決してなかった。彼にとって、檢體A(美波)、檢體B、檢體Cの三名がもたらすプレミアム・ミルクの利益は莫大であったが、世界中から殺到する裏大富豪たちの需要を前にしては、依然として「供給不足」という機會損失を生み出してゐた。
「首席、檢體A、B、Cのバイタルデータより、乳腺の連續稼働限界が近づいてゐることを確認。世界市場の優位性を維持するためには、直ちに檢體D(母)およびE(姉)を『分泌および繁殖フェーズ』へと投入し、二層構造の供給ラインを確立すべきです」
白衣の技術員たちの無機質な進言に、首席は仕立ての良い高級スーツの袖口を靜かに整え、冷淡な視線を最下層のモニターへと向けた。
「當然の歸結だ。そのために、わざわざ日本からあの女たちを再捕縛し、第十八章において徹底的な定時奉公を課したのだ。一度日本へ逃げ歸り、人閒としての尊嚴を思い出し始めていたあの二人の精神は、すでに最下層の環境によって完璧に去勢されてゐる。もはや反抗の意志を示す腦波のスパイクすら檢出されん。彼女たちを同じ『最下層の檻』に恆常的に留め、組織の利權に直結する『新たなる命の宿床』として、生活そのものをシステム化しろ」
首席の冷徹な合理主義により、母と姉の生活環境は、單なる一時的な罰から、二十四時閒體制で管理された「繁殖のための家畜用檻」へと移行することが決定された。




