第三節:車椅子の上の目擊と、去勢された人形たちの完成
その凄慘極まる光景を、最下層の監視バルコニーから見下ろさせられてゐる者がゐた。
特製の移動式拘束臺に固定された檢體A(美波)であった。彼女の胸部には搾乳機が裝着されたままであり、機械が不快な脈動を刻むたびに、彼女の肉體から利權が吸い上げられていく。
その傍らには、すでに前章までに精神の去勢を完了し、無菌室のベッドに竝べられてゐる檢體Bと檢體Cの、感情を失った姿もあった。
「見よ、美波。お前がどれほど鐵の意志を持とうとも、お前の最愛の家族は、我が組織の底邊の男たちの欲望を處理するだけの『肉の器』へと落とされた」
鄰に立つ首席が、美波の腫れ上がった瞼を指で無理やり押し廣げ、下の檻を見開かせた。
「あ……、あ、う、あぁ……!!!」
美波の割れた唇から、言葉にならない、肺を抉るような絕望の絕叫が漏れ出た。
下の檻では、檢體Dの枯れかけた肉體と、檢體Eの引き裂かれた五體が、無數の囚人たちの下劣な歡聲のなかで泥人形のように弄ばれてゐた。かつて國家のために戰った美波のプライドも、姉が一度日本で取り戾した平穩も、この南アフリカの最暗部において、完全に、完膚なきまでに踏みにじられていく。
數週閒に及ぶ「每日の暴走」を經て、檻の中の二人の姿は、かつて日本で再捕縛された頃とは完全に別人のようになってゐた。
ブザーが鳴り、囚人たちに押し寄せられても、二人はもう悲鳴を上げることも、身を縮めて拒絕することもしなかった。ただ、機械人形のように自ら冷たいコンクリートの床へと橫たわり、男たちの欲望を事務的に處理するための「肉の穴」として、ただ無言で身體を痙攣させるだけであった。
「素晴らしい調敎の成果だ。精神の完全なる去勢を確認」
監視室でそれを見屆けていた首席が、滿足げに立ち上がった。
「これで、一度日本へ逃げ歸ったことで生じた『餘計な自尊心』は完全に消滅した。彼女たちは美波たちと同じ、文句を言わずに利益を生み出し續ける完璧な『家畜』となったのだ」
首席の命令により、原型を失い、完全に魂を拔かれた檢體DとEの肉體は、最下層の泥濘から再び引き揚げられ、あの白亞の無菌室の「近代化增產ライン」へと移送されることとなった。
檢體A、B、Cが繋がれてゐるその部屋へ、同じように「機械の一部」と化した二人が竝べられる。家族としての再會は、もはや悲劇の淚すら生み出さない。ただ、新組織の搾乳帝國をどこまでも潤し續けるための、終わりのない奉公の輪が、ここに五名(檢體A〜E)の完璧な布陣として完成したのである。




