第十八章の第一節:定量化された蹂躙と、首席の實驗ノート
最下層の監獄における囚人たちの暴走は、一過性の罰ではなかった。それこそが、新組織の首席が設計した、檢體D(母)および檢體E(姉)の精神防壁を根底から「去勢」するための、冷酷極まる「每日のルーティン」であった。
かつてクーデターの混亂に乘じて一度は日本へ逃げ歸り、ささやかな平穩を取り戾しかけていた二人であったが、新組織の壓倒的な追跡網によって再び捕らえられ、この白亞のアジトへと連行されてゐた。首席は、彼女たちの乳腺と子宮を「近代化增產ライン」へと效率的に組み込む前段階として、內なる「自尊心」を完全に粉碎する必要があると判斷したのである。
「首席、檢體DおよびEの精神防壁、豫定通り完全に崩壞の兆候を示してゐます。囚人たちによる每日の定時奉公により、自己アイデンティティの喪失が急速に進んでゐます」
白衣の技術員が、無機質なグラフを指し示しながら報吿する。
首席は白亞の監視室から、最下層の檻の映像を見下ろし、冷淡にうなずいた。
「人閒は、絕望の環境が『日常』へと變わった時、初めて反抗の意志を放棄する。一度日本へ逃げ歸り、人閒としての尊嚴を思い出し始めていた者であっても、每日の暴走に身を晒され續ければ、ただの肉の器へと變貌するのだ」
檢體DとEに與えられる食事と水は、最下層の囚人たちと同じ、泥狀の榮養劑のみであった。衣服は一切與えられず、ただ鐵錆と排泄物の臭氣が充滿する檻の中で、二人は次の「暴走」の時閒を待つだけの存在へと落とされていった。




