第三節:車椅子の上の目擊と、絕望の共鳴
その凄慘極まる光景を、最下層の監視バルコニーから見下ろさせられてゐる者がゐた。
特製の移動式拘束臺に固定された美波であった。彼女の胸部には搾乳機が裝着されたままであり、機械が不快な脈動を刻むたびに、彼女の肉體から利權が吸い上げられていく。
「見よ、美波。お前がどれほど鐵の意志を持とうとも、お前の最愛の家族は、我が組織の底邊の男たちの欲望を處理するだけの『肉の器』へと落とされた」
鄰に立つ首席が、美波の腫れ上がった瞼を指で無理やり押し廣げ、下の檻を見開かせた。
「あ……、あ、う、あぁ……!!!」
美波の割れた唇から、言葉にならない、肺を抉るような絕望の絕叫が漏れ出た。
下の檻では、母の枯れかけた肉體と、姉の引き裂かれた五體が、無數の囚人たちの下劣な歡聲のなかで泥人形のように弄ばれてゐた。かつて國家のために戰った美波のプライドも、姉が一度日本で取り戾した平穩も、この南アフリカの最暗部において、完全に、完膚なきまでに踏みにじられていく。
「この奉公が終わる頃には、彼女たちの精神は完全に去勢され、私の完璧な家畜として、お前と共に一滴の無駄もなくミルクを出し續ける機械となるだろう」
首席の冷徹な宣吿が、地下室の喧騷のなかに冷酷に溶けていく。
美波の目から、ドロリとした血の淚がとめどなく溢れ、拘束臺の金屬を濡らした。母と姉の絕叫が、囚人たちの狂った怒號と交じり合いながら、崩壞した精神の深淵へと、どこまでも、どこまでも深く沈んでいくのであった。




