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第五章:謀略の破綻
新ボスの喉元へ暗器を突き立てたあの瞬閒、私は確かに勝利を確信していた。男の巨體が床に崩れ落ち、血の海が廣がるのを見下ろしながら、私は激しい呼吸の中で歪んだ達成感に浸っていた。顏の形が變わり、肉體を徹底的に破壞され盡くした私の、命を賭した「肉を斬らせて骨を斷つ」一擊。それは完璧に決まったはずだった。
しかし、私がこの組織の、そして霸權爭いという底なしの泥沼の深さを完全に見くびっていた。
「……見事な手際だ、美波。だが、少し焦りすぎたな」
冷徹な聲が、背後の闇から響いた。振り返った私の目に飛び込んできたのは、前ボスの時代から組織の影として暗躍していた老幹部と、銃を構えた十數人の精銳たちの姿だった。新ボスの死體を見ても彼らの眉一つ動かない。その冷酷な視線で、私はすべてを悟った。
新ボスもまた、組織の眞の黑幕たちにとっては「使い捨ての駒」に過ぎなかったのだ。前ボスの地盤を完全に均し、舊體制の殘黨をあぶり出すための殘虐な舞臺裝置。そして、その役目が終わった今、新ボスを暗殺した「狂った前ボスの遺產」として、私がすべての罪を背負わされるシナリオが最初から用意されていた。
私はその場で壓伏され、すでに悲鳴を上げていた肉體をさらに冷たいコンクリートの床へと叩きつけられた。反擊の牙は、屆く前にへし折られた。




