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第十七章の第一節:束の閒の解放と、新組織の冷徹なる計算

物語の因果は、あのレフティとジャックによる「下克上(クーデター)」の夜にまで遡る。

新ボスが暗殺され、二人の若い手下が組織の權力を强奪した際、アジト內は一時的に完全な無秩序狀態に陷ってゐた。レフティらは「美波、エレーナ、クロエ」という世界的な知名度と最高の希少價値を持つ三人のミューズだけを「ミルク利權」の核として地下室に圍い込み、その管理に全神經を注視してゐた。

その結果、政治的利用價値の低かった美波の「母と姉」は、監視の目を掻い潛った日本の支援組織の殘黨の手によって、ドサクサに紛れて南アフリカの地から極祕裏に連れ出され、日本への歸國を果たしてゐたのである。


日本に戾った二人は、名前を變え、身を隱し、南アフリカでの地獄のような日々を惡夢として葬り去ろうとしてゐた。かつて新ボスの執念によって引きずり出されたあの恐怖の記憶から逃れ、靜かな平穩を取り戾しかけてゐた――それが、第十六章の「再捕縛」へと繋がる伏線であった。


しかし、新組織の最高權力者のアジト首席は、すべてを見拔いてゐた。

「あの閒拔けどもは、極道の血を引く血統の價値を理解していなかった。美波と同じ遺傳子を持つ母と姉は、近代的搾乳工場における最高の『增產檢體』だ」

首席は、世界中から殺到するプレミアム・ミルクの需要を滿たすため、行方をくらませていた二人を日本の潛伏先から再びあぶり出し、あの白亞の檻へと連行したのである。

だが、一度「解放」を味わい、日本で人閒としての尊嚴を思い出し始めていた母と姉の精神は、最初から檻に縛られていた美波たちよりも遙かに「從順さ」に缺けてゐた。それが、首席をしてこの最惡の「調敎」へと向かわせる決定的な因果となったのである。

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