第三節:白亞の無菌室での再會と、絕望の共鳴
數日後、地下工場の可動式ベッドに固定されてゐた美波の耳に、重厚な電子ロックが解除される音が響いた。
腫れ上がった瞼の奧で、ぼんやりと視線を動かした美波の瞳に映ったのは、信じがたい、そして最も見たくなかった光景であった。
新しく增設されたブースのベッドへ、かつて自分と同じ地獄を經驗し、そして再び捕らえられた最愛の「母と姉」が、拘束具で完全に固定された狀態で運び込まれてきたのである。
「う……あ……お母、さん……お姉ちゃん……」
機械式搾乳吸入器を裝着された美波の裂けた唇から、魂を削り取るような絕哀の呻きが漏れた。
目を覺ました母と姉は、自らの胸部に裝着された冷たいステンレスの器具と、鄰のベッドで完全に「繁殖と搾乳の機械」へと成り下がってゐる美波の無慘な姿を見て、喉をかき消すような悲鳴を上げた。
「素晴らしい再會だな、美波」
ブースに現れた首席が、冷徹な品定めをする眼差しで、新たに竝べられた三體の「家族という名の檢體」を見下ろした。
「これでお前の利權は三倍となる。前の男たちのような無計畫な暴力は使わん。お前たち家族の血統を、この近代的な工場で極限まで有效活用してやろう」
「いやぁぁぁっ! 離して、離してよ!」
絕叫する姉の體に、容赦のないホルモン投與の注射針が突き立てられる。
美波、エレーナ、クロエの三人が辿ったあの終わりのない宿命の輪が、今度は母と姉の肉體をも完全に卷き込み、新たな「增產ライン」として稼働を始めようとしてゐた。機械の無機質な脈動音と、家族の絕望の嗚咽が白亞の空閒に冷酷に響き渡り、新組織の搾乳帝國は、さらなる狂氣と利權の深淵へと、一氣に加速していくのであった。




