第二節:漆黑の强襲と、引き裂かれる日常
日本、かつて悲劇の始まりとなった抗爭の傷跡が辛うじて癒え、靜かな生活を取り戾しかけてゐた美波の母と姉。
彼女たちは、美波が遠い異國の地で今なお「機械の一部」として搾取され續けてゐる事實など知る由もなく、ただ愛する娘の無事を祈るだけの日々を送ってゐた。
しかし、そのささやかな平穩は、ある嵐の夜、突如として完璧に粉碎されることとなる。
――パリン!!!
ガラスの割れる不快な金屬音とともに、無施錠の窓から漆黑の特殊部隊が雪崩れ込んできた。
「な、何、誰よあなたたち……!?」
悲鳴を上げる姉の髮を、プロフェッショナルの兵士たちが容赦なく掴み、冷たい床へと組み伏せる。
「靜かにしろ、檢體DおよびEだ。最高權力者のアジトへ移送する」
抵抗する氣力すら奪う電擊銃の靑白い火花が走り、母と姉の身體は一瞬にして硬直した。かつて新ボスの時代に味わったあの奈落の恐怖が、より洗練された、抗うことのできない壓倒的な武力となって、再び彼女たちの五體を縛り上げる。
衣服を剥ぎ取られ、嚴重な麻醉藥を注入された二人は、特製のコンテナへと收容され、プライドも尊嚴もすべてを剥奪された「新たな貨物」として、南アフリカの白亞の檻へと向かうプライベートジェットの貨物室へと運び込まれていった。すべての因緣は、首席という新たな怪物の手によって、より巨大な地獄の輪へと收束していく。




