第十六章の第一節:利權の飽和と、次なる「增產」への布石
白亞のアジトの地下に新設された「近代化搾乳工場」は、首席の冷徹な計算通り、新組織に神話的な富をもたらし續けてゐた。
美波、エレーナ、クロエの三人の肉體から機械的に吸い上げられるプレミアム・ミルクは、世界中の裏大富豪たちの閒で狂信的な人氣を博し、ダークウェブのオークションでは常に價格が高騰してゐた。
しかし、需要の爆發は、同時に首席の底知れぬ貪欲さをさらに刺激する結果となった。
「首席、歐米および中東の有力なコレクターたちから、現在の三倍の供給を求める聲が上がってゐます。現在の三名の檢體だけでは、二十四時閒フル稼働させても乳腺の疲弊が避けられず、これ以上の增產は不可能です」
データモニターを前にした醫師の報吿に、首席は仕立ての良い高級スーツのポケットに手を入れ、冷酷な薄い笑みを浮かべた。
「ならば、檢體を增やせば良いだけのこと。幸いにして、我が組織のデータベースには、すでに最高の『血統』に關する記錄が殘されてゐる」
首席の銳い視線が向かったのは、かつて前支配者たちの時代に、美波の絕望を極限まで引き出すために南アフリカへと連行され、その後行方不明となってゐた、日本に殘された「美波の母と姉」のカルテであった。
「美波と同じ血を引く女たちだ。彼女たちの乳腺と子宮の適性は、すでに證明されてゐる。あの野蠻な手下どもがアジトを壞滅させたドサクサで行方が分からなくなってゐたが、我が組織の追跡網から逃れられると思うな」
首席の短い命令とともに、最先端の裝備を纏った組織の「回收部隊」が、再び東洋の地へと音もなく放たれた。




