第三節:世界の富豪への出荷と、擴大する帝國
この工場で生產されたプレミアム・ミルクは、卽座に極祕のパッキングラインへと送られ、一本數萬ドルから數十萬ドルという破格の値段で、ダークウェブの特設オークションへと流されていく。
ボトルには、かつて世界を席卷したトップモデルたちの「血統」と、嚴密な榮養價の證明書が添付され、世界の裏舞臺に君臨する富豪たちの元へと、嚴重なセキュリティのもとで空輸されていった。
「首席、今月の總利益が前四半期比で二百パーセントを記錄しました。歐州のコレクター勢からの大口注文も確定しています」
部下の報吿に、首席は滿足げにうなずき、自らのデスクに置かれた白濁した試飮用のグラスを見つめた。
「素晴らしい。これこそが、知性なき前支配者たちには成し得なかった、眞の『搾乳帝國』の完成形だ」
その聲は、無菌室のスピーカーを通じて、美波たちの耳にも屆いてゐた。
美波は、かすかに動く指先で、鄰のブースへと續く壁をなぞろうとしたが、拘束具がそれを阻む。
ボスが變わり、アジトが變わり、どれほど最先端のテクノロジーに圍まれようとも、自分たちの運命は、この冷たい機械の脈動のなかで、組織の資本を增殖させるためだけに消費される「生贄」でしかなかった。
外界から完全に遮斷された白亞の迷宮の底で、三人の人形たちは、機械の不快な吸引音を子守唄代わりに聞きながら、終わりなき利權の深淵へと、さらに深く囚われ續けていくのであった。




