第二節:科學的調敎と、精神の去勢
首席の目指した「近代化」とは、單に設備を新しくすることだけではなかった。
それは、彼女たちの內面にある「反抗の意志」や「誇り」といった不確定要素を、科學的なアプローチによって完全に去勢することであった。
過度な暴力は肉體を破壞し、結果として供給を止めてしまう。ゆえに、この工場では、微弱な電氣刺激と、神經を弛緩させる藥物の定期的な投與が組み合わされてゐた。
「美波、エレーナ、クロエ。お前たちの淚すらも、我が組織にとっては成分分析の對象に過ぎん」
首席は定期的にブースを見回り、クリップボードの數値を確認しながら冷酷に言い放つ。
エレーナの、かつて世界を魅了した長い四肢は、筋肉の衰退を防ぐための低周波治療器によって、自らの意志とは無關係にピクピクと痙攣を繰り返してゐた。彼女の美しい顏は、藥物の影響で常に茫然自失とした表情に固定され、焦點の合わない瞳からは、絕望を自覺することすら許されない虛無の淚が筋を作ってゐた。
クロエもまた、東京の檻にいた頃の淸潔なプライドを、この高度にシステム化された「家畜の日常」によって完全に削ぎ落とされてゐた。
彼女たちに課せられた「奉公」は、もはや怒號を浴びながら這いつくばるような原始的なものではなかった。ただ、生かされ、榮養を與えられ、機械の一部として機能し續けるという、逃げ場のない、永遠に續くシステムそのものが、彼女たちに課せられた最大の屈辱であった。




