第十五章の第一節:自動化された監禁空閒と、計量される肉體
白亞のアジトの最深部に構築されたのは、最新のバイオテクノロジーと效率的なロジスティクスが融合した、文字通りの「近代化搾乳工場」であった。
かつてレフティたちが支配してゐた地下室のような、衝動的な暴力による損壞や衞生環境の惡化による生產能率の低下は、ここでは一切排除されてゐる。室溫は常に二十四度に保たれ、空氣は特殊なフィルターによって完全に無菌化されてゐた。
美波、エレーナ、クロエの三人は、それぞれ完全に獨立した「生產ブース」の可動式ベッドへと固定されてゐた。
手足の拘束具は、皮膚を傷つけぬよう柔らかなシリコンで覆われてゐるが、その强度は人閒の力では決して破壞できぬ頑强なものであった。彼女たちの頭上には、分泌量、心拍數、血中ホルモン濃度をリアルタイムで測定する大型のモニターが設置され、そのデータはアジト首席の執務室へと直通してゐた。
「檢體A(美波)、本日の分泌豫測値、目標の百二十パーセントに到達。ホルモンバランスの崩れはありません」
白衣の技術員たちが、まるで精密機械の調子を確かめるかのように無機質な會話を交わす。
美波は、腫れ上がった瞼の奧の濁った瞳で、自らの胸部に裝着されたステンレス製の特殊吸引カップと、そこから伸びる無數の透明なチューブを見つめてゐた。
チューブの先は、床下に埋め込まれた冷卻保存タンクへと直結してゐる。機械の規則的な驅動音とともに、彼女たちの肉體から「利權の源泉」が、一滴の無駄もなく、靜かに、そして機械的に吸い上げられていくのが、この工場の日常であった。




