第三章:奈落の對面と、地下市場への出荷
地下の品評室。クロエが極上のソファーに縛り付けられた時、正面の厚いガラスの向こう側の扉がゆっくりと開いた。
そこに現れたのは、車椅子に縛り付けられ、顏の形が完全に非對稱に腫れ上がった美波と、その車椅子を押す、やはり原型を失うほど叩きのめされたエレーナの姿だった。
「……エ、エレーナ……? 嘘でしょう……?」
クロエの唇から、絕望の悲鳴が漏れ出る。かつてパリの夜を共に樂しんだ、美しく誇り高かった親友の變わり果てた姿。その一方で、自分は一切の暴力を振るわれず、まるで出荷を待つ高級ブランド品のように、無傷のまま美しく整えられているという異常な狀況。
「クロエ……ダメ……ここは……怪物の巢よ……」
エレーナの腫れ上がった目の隙閒から、血の淚がこぼれ落ちる。しかし、新ボスはその二人の絕望の對面すらも、クロエの精神を內側から追い詰め、オークションでの「從順な表情」を作り出すためのビジネス戰略として利用していた。
「さあ、新シリーズのメインイベントだ」
新ボスは冷徹にクロエの顎を指先で持ち上げ、その完璧な美貌を見つめた。
「美波やエレーナは、私のプライベートなコレクションであり、組織を統治するための恐怖の象徵だ。だが君は違う。君は世界中の裏マフィアや富豪たちが莫大な資金を投じて爭奪戰を繰り廣げる、我が社の最高級のロット(商品)だ」
新ボスの命令とともに、地下室のステージの床がゆっくりと下降を始める。
クロエは一切の暴力を受けず、傷一つない、世界中が絕贊した「綺麗なままの姿」で、世界中の買い手たちが不氣味な假面をつけて待ち構える、あのヨハネスブルグ郊外の巨大な祕密地下市場の競賣臺へと直接出荷されていく。
「さあ、ビジネスタイムだ。君の美しさが、どれほどの富を私にもたらすか、樂しみにしているぞ」
新ボスの壓倒的な武力、そしてすべてを利益に變える冷徹なビジネスの手腕の前に、クロエの決死の救出劇は、ただの「最高級商品の自發的な納品」という最惡の結末へと塗り替えられた。美波とエレーナの無慘な姿を人質に取られ、綺麗なまま世界の深淵へと賣り飛ばされていくクロエ。最强のビジネスマンである新ボスの元で、女たちの運命は、より洗練された、より過酷な利權の渦へと卷き込まれていくのだった。




