第三節:血の輪舞曲(ロンド)の完成
凄慘な陣痛の嵐が、三人を同時に襲った。
ガラス張りの向こう側で、母が、姉が、そして私が、獸のような絕叫をあげながら、南アフリカの冷たい床の上で新たな命をこの世に排出しようと、狂わんばかりに身をよじる。
「ぎゃあああぁっ……あぁっ!」
私の裂けた唇から、血混じりの絕叫がほとばしる。步くたびに激痛の走っていた麻痺した下半身が、出產の衝擊で文字通り破壞されていくような感覺。腫れ上がった目の隙閒から流れる血の淚が、シーツを眞っ赤に染め上げていく。
オギャア、オギャア、と靜寂の病棟に、何重にも重なる赤ん坊の產聲が響き渡った。
それは、祝福されるべき命の誕生ではなかった。新ボス、そして現地の若い男たちの凶暴なDNAを色濃く受け繼いだ、私たちの完全なる「敗北と隸屬」の象徵。
新ボスは、生まれたばかりの赤ん坊たちを亂暴に抱え上げると、滿身創痍で床に伏せる私の目の前に突きつけた。
「見事だ、美波。母も、姉も、お前も、すべて私の支配下で、私のための苗床となった。これで我が霸權は、この地で永遠のものとなる」
ガラスの向こうで、赤ん坊を奪われ、干からびた聲をあげて泣き崩れる母と姉の姿が見える。
私たちは生きている。しかし、その誇りも、復讐の執念も、そして女としての尊嚴も、生まれてきた子供たちの產聲によって完全に壓殺され、粉々に粉碎されたのだ。
腫れ上がった瞼の奧で、私の視界はゆっくりと、そして今度こそ完全に暗轉していった。この廣大な大地の片隅で、三人の女たちの運命は、怪物の血を未來へ繋ぐためだけの悲痛な「生贄」として、あまりにも殘酷に完成したのだった。




