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第二節:崩壞した聖母たちの絕叫
鄰の部屋からは、晝夜を問わず、母と姉の悲痛な呻き聲が響いていた。
極道の世界とは無緣に生きてきた二人が、異國の檻に囚われ、誰の子供かも分からぬ命をその體內に宿され、臨月を迎えている。それは、物理的な折檻以上の精神的な虐殺だった。
「嫌、嫌ぁぁっ! 私のお腹の中から、あの男たちの氣配を消して……っ!」
姉の引き裂かれるような悲鳴が防音の壁を拔けて傳わってくる。かつて凛として私を諭してくれた姉の面影はもうどこにもない。髮は亂れ、非對稱に膨れ上がった頬を淚と汗で濡らしながら、自分の膨らんだ腹を自らの拳で何度も毆りつけようとしては、拘束帶に阻まれて狂ったように泣き叫んでいた。
そして、かつて私を優しく包み込んでくれた母は、すでに精神の境界線を越えていた。
虛ろな瞳で天井の一點を見つめたまま、ただ子守唄を口ずさみ續ける。その母の腹部もまた、不自然なほど大きくせり上がっていた。
新ボスの冷徹さは、この出產劇すらも「最高の娛樂」として演出した。
現地の若い醫師たちを配し、麻醉も滿足に與えられないまま、私たちは一人ずつ、血塗れの分娩臺へと引きずり出されることになる。
「產め、美波。お前たちの絕望から生まれる子供こそ、この私の私有地を將來統治する、最强の奴隸(兵隊)となるのだからな」




