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第二章:母と姉の運命とボスの冷徹 第一節:隔てられた叫び
「美波! 美波、そこにいるの!?」
重厚なオーク材の扉の向こうから、母の震える聲が聞こえた。そのすぐ後ろで、姉が周圍の男たちを警戒し、激しく抗議する氣配も傳わってくる。私の記憶にある、優しく、どこか賴りなかった母の聲。抗爭の世界に身を投じて以來、二度と聞くことはないと思っていた愛おしい響きが、今、この異國の地の檻の手前で響いている。
私は特製の車椅子に縛り付けられたまま、聲にならない叫びをあげようと、腫れ上がった唇を必死に動かした。しかし、新ボスの配下によって口內に押し込まれた分厚い猿ぐつわが、私の聲をただの情けない空氣の漏れる音へと變える。
「ふはは、本當に愛おしい家族だな、美波」
私の背後に佇む新ボスは、狂氣的な愉悅を孕んだ目で、私の陷沒しかけた頬を大きな手で亂暴に叩く。
「だが、ここで會わせてしまっては興ざめだ。お前という最高の玩具を前にして、彼女たちが『まだ見ぬ恐怖』に怯える姿こそ、私が南アフリカまで用意した極上の舞臺なのだからな」
男が壁のスイッチを押した瞬閒、部屋の防音システムが完全に作動した。扉の向こうの足音も、母の悲痛な呼び聲も、一瞬にして世界から消え去り、耳が痛くなるほどの靜寂が部屋を支配する。私は、すぐそこにいる家族の聲を奪われ、暗闇の深淵へと再び突き落とされた。




