第二節:海を渡る凶報
私が南アフリカの檻の中で、使い物にならなくなった肉體の再生を强要されていた頃、日本の殘された家族の元へ、その「牙」が音もなく忍び寄っていた。
私の母と、年の離れた姉。
彼女たちは、私が前ボスの元で極道の世界に身を投じていた時から、一般人として靜かに暮らしていた。組織の抗爭に卷き込まぬよう、私は自分の存在すら彼女たちの籍から消し去り、一切の連絡を絕っていたはずだった。
しかし、新ボスの執念は私の過去をすべて暴き立てていた。
日本の實家。夕暮れ時の靜かなリビングに、黑いスーツを纏った新ボスの直屬の殘黨たちが現れたのは、私が目覺める數日前のことだったという。
「美波さんは、南アフリカで生きていますよ」
男たちが突きつけたのは、包帶に包まれ、變わり果てた私の姿が寫った數枚の寫眞だった。
大逆人として處刑されたと聞かされていた娘が、妹が、異國の地でまだ生かされ、玩具にされているという狂氣の事實。
「美波さんに會いたければ、大人しく我々の用意した船に乘ってもらいましょう。拒否すれば、この場で美波さんの息の根を止めるよう、現地のボスに連絡を入れるだけです」
それは、選擇肢のない脅迫だった。母と姉は、私を救いたいという一心と、壓倒的な暴力の氣配に抗えず、新ボスの仕掛けた罠へと足を踏み入れてしまう。彼女たちは、私がどのような地獄を生き、どのような姿に變えられたかも知らぬまま、「美波が待つ場所」へと向かうエコノミークラスの航空券を握らされた。




