第二節:利害の共同戰線と、首席による冷徹なる現實の提示
カプセルから目覺め、未だ衣服を與えられぬまま無傷の五體を震わせる五人の前に、獨房のロックをハッキングして脫出してきた首席が姿を現した。首席の衣服もまた、ガルシアたちの暴動の際に流れた部下たちの血と泥に汚れてゐたが、その瞳には冷徹な知性が變わらず宿ってゐた。その手には、新組織の最新銳の自動小銃が五丁、握られてゐた。
首席は、銃口を五人に向けぬまま、彼女たちの足元へと靜かに武器を竝べ、現實的な利害の一致を理路整然と說き始めた。
「美波、エレーナ、クロエ。そしてお前たち家族よ。今のお前たちの肉體は、私の最高峰の手術によって完璧に復元されてゐる。だが、このまま何もせずにあのガルシアどもの元へ戾れば、お前たちは再び衣服も與えられぬまま床に釘付けにされ、今度こそ利權すら出ない廢品として完全に潰される。私を信じる必要は無い。お前たちをここまで追い詰めたのは私であり、この組織だからだ。だが、生き殘るためには、ここで私と手を組み、あの怪物どもを排除するしか道は無いのだ。お前たちの誇りも、私の利權も、あの獸どもの前ではすべてが塵芥に等しい」
首席の言葉は、單なるサディストの計算ではなく、この地獄を生き拔くための極めて冷徹で現實的な提案であった。一度日本へ 逃亡しながらも引き戾され、最下層の每日を經驗した母と姉も、その言葉の持つ重みを本能的に理解してゐた。




