第二節:ガルシアの牙と、驚異なる下剋上
しかし、首席の想定を超えていたのは、囚人頭ガルシアの底知れぬ狂暴さと、彼がこの數ヶ月閒で最下層の男たちを完全に掌握してゐたという「力」の現實であった。
「說明など必要ねえよ、氣取り屋の首席の野郞」
暗闇の向こうから、巨軀の首領ガルシアが、看守から奪い取って隱し持ってゐた自動小銃を構えて進み出た。
「なっ、貴樣……!」
首席の直屬の精銳兵が銃を拔こうとした瞬閒、ガルシアの引き金が引かれた。
――ズガガガガガガッ!!!
消音器のない剥き出しの銃聲が地下室の壁を激しく震わせ、首席の護衞たちが血飛沫を撒き散らしながら床へと崩れ落ちた。さらに、ガルシアの合圖とともに、鐵格子の內側で息を潛めてゐた何百人もの囚人たちが、一齊に看守たちを壓殺し、武器を强奪する「下剋上」の暴動へと突入した。
「おい、首席! お前の小難しいシステムも、データ管理も、俺たちのこの壓倒的な『力』の前には何の意味もねえんだよ!」
ガルシアは狂ったように嘲笑しながら、銃口を首席の胸元へと突きつけた。
「お前がこの女たちを利權の玩具として白亞の無菌室へ連れ戾そうとしてゐるのは分かってゐた。だからこそ、お前が自らこの最下層へ降りてくる瞬閒を、俺たちは首を長くして待ってゐたんだ!」
首席は、自らの仕立ての良い高級スーツが部下たちの血で汚れるのも構わず、冷徹な瞳でガルシアを見据えてゐたが、新組織の武力バランスが完全に逆轉した現實を前に、ただ靜かに兩手を上げた。知性的な支配者が、最下層の獸たちの暴力によって一瞬にして權力を强奪される――かつてレフティたちが起こした下剋上をさらに上回る、最惡の構造轉覆がここに完成した。




