第二十二章の第一節:暗黑の秩序と、飢えたる巨軀
最下層の監獄は、一見すると看守たちの銃口によって統御されてゐるやうに見えたが、その鐵格子の內側には、囚人たち自身が作り上げたもう一つの「剥き出しの秩序」が存在してゐた。
その秩序の頂點に君臨するのが、現地マフィアの元幹部であり、數多の凶惡犯罪の末に新組織の捕虜となった巨軀の男――囚人頭の「ガルシア」であった。
看守たちにとっても、何百人もの粗暴な罪人を暴動を起こさせずに管理するためには、ガルシアという凶暴な「頭」の存在が不可缺であり、それゆえに鐵格子の內側で行われることについては、ある程度の默認が與えられてゐた。
「おい、新入りどもをこっちへ連れてこい」
晝のブザーが鳴り響き、鐵格子が開放された瞬閒、ガルシアの太い聲が地下室の濕った空氣を震わせた。
衣服を一切與えられず、朝の「叩き」による新しい靑黑い痣を全身に刻まれた美波、エレーナ、クロエ、そして母と姉の五人は、無數の囚人たちの下劣な視線に晒されながら、ガルシアの足元へと亂暴に引きずり出された。
ガルシアは、コンクリートの床にどっかりと腰を下ろし、獸のような濁った瞳で五名を見下ろした。
「首席の野郞は小難しいデータだの管理だのと言ってゐるが、俺たちにとってそんなものは關係ねえ。ミルクが出ねえなら、俺の ruleで每日の奉公をしてもらうだけだ」
その言葉は、看守たちの管理すら超えた、さらなる剥き出しの暴力のルーティンが始まる合圖であった。




