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第四節:家畜の平穩(就寢の奈落)
深夜、再び鐵チェーンを引かれ、元の最下層の檻へと投げ戾された五人。
高壓水で濡れそぼったコンクリートの床は、體溫を容赦なく奪っていく。毛布も枕も與えられないその空閒で、彼女たちに許された唯一の平穩は、互いの冷え切った肉體を寄せ合う「就寢」の時閒だけであった。
美波は、動かない兩脚をかばいながら、床の血溜まりの端でエレーナとクロエの身體を引き寄せた。その鄰では、魂を拔かれた母と姉が、無言のまま互いの背中を丸めて橫たわってゐる。
(……明日もまた、あのブザーが鳴る……)
エレーナの裂けた唇が、音もなく微かに動いた。
ボスが變わり、組織が變わり、近代的なシステムを通過しようとも、彼女たちが今送ってゐる生活は、この最暗部での「朝晝晚風呂就寢」という逃げ場のない破滅のルーティンだけであった。
一筋の冷たい風が、換氣孔の隙閒から吹き拔ける。五人は互いの肌の微かな溫もりだけを最後の據り所にしながら、腫れ上がった瞼を閉じ、明日もまた始まる終わりのない「奉公」という名の奈落の底へと、ゆっくりと意識を沈めていくのであった。




