第二十一章の第一節:泥濘の黎明(朝の點呼と叩き)
ジリリリリリリ!!!
最下層の濕ったコンクリート壁に、鼓膜を劈くような起床のブザーが鳴り響く。
それが、美波、エレーナ、クロエ、そして母と姉の五名に課せられた、逃げ場のない「每日」の幕開けであった。首席がデータ管理のために用いてゐた「檢體」という小奇麗な符號は、この最底邊の檻においてはすでに存在しない。彼女たちはただ、囚人たちの欲望を處理し、看守たちの機嫌を伺うためだけの、名もなき「共同の玩具」として一括りにされてゐた。
「おい、ぐずぐずすんじゃねえぞ! 起きろ、この廢品どもが!」
看守の荒々しい怒號とともに、頑强な鐵格子が警棒で激しく打ち鳴らされる。
衣服を一切與えられず、鐵錆と排泄物の臭氣が立ち込める床の上に重なり合って眠ってゐた五人は、朦朧とする意識の中で、震える手足を引きずりながらコンクリートの上に跪かされた。
朝一番に彼女たちを待ってゐるのは、慈悲なき「叩き」のルーティンであった。
「ミルクも出ねえ癖に、いつまでボスの飯を食うつもりだ!」
看守の叫びとともに、スパイク付きのベルトや重厚なゴム警棒が、美波の麻痺した下半身や、エレーナの變形した肩、クロエの粉碎された頬骨の殘骸へと、一切の手加減なしに振り下ろされる。
バチィィン! ズガァァン! と肉を打ち据える不快な音が、薄暗い檻の中に幾度となく反響した。
「あ、がぁっ……! ああぁっ……!」
美波の割れた唇から漏れる嗚咽。すでに精神の去勢を完了してゐる母と姉は、聲すら上げず、ただ機械人形のように頭を垂れて打擊を受け止めてゐた。この朝の暴力こそが、彼女たちに「ここは最底邊の奈落である」という現實を每朝骨の芯まで刻み込むための、最初の工程であった。




