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くだもの

登場する果物や農園名は実在する場合がありますが、本作の内容はフィクションです。

 "果物 問屋 卸 加賀屋"


 と言う時代を感じさせるトタン看板を店の鴨居にデカデカと掲げたお店の駐車場に車を前付けで停めると(バックで停めると何故か知らんが怒られる……(いや……市場から果物運んでくるトラックはバック付けしないと面倒くせーんじゃね?)等思いつつ怒ると怖いので素直に停めると。


 店先で果物の入ったダンボール箱を店の中に運んでいる店主の親父に声を掛けた。


 「大将ーおはよー久しぶり」


 店主がその声にダンボール抱えたまま、こちらに振り返ると。


 「おー氷室くんじゃん、どうしたの? ホテル辞めたって聞いたけど?」


 抱えていたダンボールをその場に降ろして俺の近くまで歩いて出迎えてくれる。


 「いやーそれがさ、先輩の頼みと言う半ば強制で先輩の知り合いがやってるお店に"代わりの代わり"ってちょっと訳の分からん立場で手伝いに行く事になってさ」


 「へぇーそうなんだね。で? そのお店は氷室くんがうちの店に来る必要が出てきた店なの?」


 「そうなのよ、その店実はさホストクラブなのよ」


 (まぁ……この人に実際は"信長上洛前の店"言うても何のこっちゃ? となるだろうし普通に普通に)


 「そうなんだね。意外と言えば意外だし、うちに用があるのもまぁ理解したよ。で? 今日は何を?」


 「あーそれがさー前任者がよー分からんおっさんで、とりあえずなーんも無いから"盛り"に必要なもん全部」


 「そう、じゃまぁ氷室くんなら大丈夫だろうし、見てってよ」


 そう言うと店主は、先程までやっていた作業に戻って行った。


 店先に置いてる"認定者の証"買い物カゴを取り、店の中へと足を踏み入れると、一気に鼻腔の奥まで広がる数多の果物たちが放つ仄かで薫り豊かな甘い匂いがくすぐった。


 (あー大将の店の匂いだ……この匂いだけでメシ3杯イケる……いや、フルーツオカズにメシは流石に食わんが)


 「それじゃ先ずはオレンジを……」


 といくつか並んだ中から迷わずに"三ヶ日ブラッドオレンジ"と言う名を持つ果肉が普通のアメリカ産の物よりも赤く鮮やかな色した高級オレンジをいくつかカゴに入れた。


 (ここらで三河も出しとかんと"じゃんだらりん"叫びながら怒ってきそうな気がして……え? 三ヶ日は静岡? いいねん、境川から東は別の国なんだから)


 次にメロンをどれにしようか頭の中で作るフルーツ盛りをイメージしながら選んでいく。


 そして普通のメロン代表が決まる"高知エメラルドメロン"何故これに決めたかと言うと。


 一瞬、俺が日本一美味いと思っている"茨城イバラキング"に手が行きかけたが、どこからか。


 (アカンて思い出したそれ使ったら"見てる"思われる)


 と天啓が降って来たのでエメラルドメロンにした。


 そして同じメロンでもこちらは果肉がオレンジ色の赤肉メロンの候補に思い悩む。


 (美味しいーこのメロン赤いから有名な夕張メロンだね、きっと)


 (だろうね。どう姫? 頼んで良かった?)


 (作った人にお礼したい)


 (メロンが特に美味しかったよ、有名な夕張メロンだよね?)


 (はい、ご明察通りでございます)


 (あかん……これはあかん……負けた気する……変えよ)


と脳内シミュレーションを終わらせた俺は、イバラキングの仇を取るためにも"茨城クインシーメロン"を選ぶ。


 この加賀屋で1番種類が多く、数も多いりんごコーナーに来た俺は、何も考えずに"江刺りんご"に手を伸ばしかけ。


 (待て! それはダメだ! いや……仕入れの金は太閤から領収書あれば理論上は貰える)


 そう言って大将に声を掛けた。何故ならこの店、基本は問屋で卸の店だ、小売してくれる人は数える程しか居ないはず、よって"値札"の類が全く無い。


 「大将ーこの江刺いくら?」


 「あーそれ初物に近いから御祝儀価格になってるよ? 買うの? まぁ初セリ品って訳じゃないから箱で50万かな」


 (通るか! こんなもん!)


 泣く泣く諦め、俺は結局は江刺にも決して負けてない"青森高徳"を選んだ。


 (このりんご中が透けてるけど傷んでる?)


 (いいえ違いますそれ全部"蜜"なんですドヤァ)


 「うん、これだな」


 その後は、キウイフルーツの果肉の真ん中だけ赤くなる"香川レインボーレッド"と同じくこちらは普通の果肉の"香川さぬきゴールド"の2種。長野県にある"秀果園"さんに植えられた、長野県で栽培される全ての巨峰の原種である"お母さんの樹"から収穫した巨峰をカゴに入れ店の奥にある、ソロバンと小さい手提げ金庫しか置いてない台へと向かいがてら、丁度横にあった果肉固めで好みの"日川白鳳"と言う桃を1つ(仕事の合間に食おう)取り向かう。


 買った物の支払いを済ませ領収書を、伝えるのも書くのも面倒くさい長ったらしい名前をどっかの紹介文か何かをコピーしてメモに貼り付けた物を大将に見せ、何とか名前を書いた大将から領収書を貰う。


 (え? レジからレシートでシュと領収書出るだろ? って? そんなもんがこの店にあったら"文明開化じゃ!" って叫ぶ自信あるわ)


 そして支払いを済ませ、袋に詰めて貰ってる時に、奥のドアが開き先代の親父さんが顔を出すと。


 「おい! 利家! パーラー加藤から台湾パイナップルが入ってないって電話来てんぞ! 後で届けとけ」


 と、大将に怒鳴るだけ怒鳴ると奥に消えた。


 (え? 大将名前"利家"っていうの? 加賀利家……)


 まさかな? いや……分からんし聞くだけ聞くか……


 「大将あのさ……知り合いに"中村秀吉"さんって人居ない?」


 「うん? そんな名前のヤツは知らんな」


 (知らんか! 竹馬の友違うんかい!)


 と手に持つ桃を床にぶん投げそうになった。 

気になった果物は各自で検索してね。

権利怖そうなんで今作は画像少なめになるかも?

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