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買い物

 夏真っ盛りの炎天下。俺こと氷室吾郎(え? フルネーム初めて聞いた? 言ってなかったっけ? かもしれんな、きっとさっき思い出したんだろ?)は、昼下がりの午後3時、お店のある場所から。


 国道41号線を渡り(たかだか30mほどの片側2~3車線の細い道)


 (え? いや……だって……久屋大通と若宮大通あるし)


 女子大小路と言うホストエリアの反対にある、ホストクラブもありゃファッションヘルスもごちゃ混ぜになった割と節操のない"東新町"エリアにある"業務スーパー"を目指し歩いていた。


 何故そんな風俗街のど真ん中にカタギのスーパーがあるかは俺も知らん、"名古屋山三郎"にでも聞いてくれ。


 渡された"辿り着ける地図"(サルめやりおる)


 片手にピンクの看板の間を潜り抜けると、そこに目的地の業務スーパーが看板を出していた。


 「あっ! ここか へぇーここ名前こんな名前なのね。」


 と来た事はあるが、肉類が自分が暮らす近所の大手スーパーの方が何故か安い(負けてんぞ! 業務スーパー)と言う事から1度、連れてきて貰って以来、来た事が無かった為にすっかりと忘れていた。


 店の入口でもある自動ドアを、買い物用の大きなトートバッグを片手にブラブラさせながら、通り抜けると……店内は空調が効いており。


 (あっ……ダメだ俺もうここに住む……住民票移さなきゃ……)


 等と思えるほどに涼しく、入口横に山のように重ねて積まれた買い物カゴを1つ取ると、予め昨日の内にお店の厨房の冷蔵庫と冷凍庫の中身とメニューを参考に洗い出しておいた"買う物リスト"が書かれたメモ用紙を見ながら店内を進み必要な物だけを、ピックアップしていく。


 その後店内をぐるりと周り買い忘れが無いか、カゴの中の物とメモを見比べて。


 「よし! と」


 そしてまた自動ドアを潜り外に1歩踏み出すと、クルリとUターンを決め店内に入りかけて……


 (いかんいかん、何してんだよ……もう1軒行くとこあるんだから)


 そう心で名古屋の異様な"蒸し暑さ"と戦う事を決め、今買った物を国道41号線の向こう側にある"東栄通り"


 (女子大小路ならまだしも東栄通りなんて地元民でも知らん)


 沿いにあるお店に向かいトボトボと横断歩道を渡り歩いて行く。


 その後、汗だくになりながらお店の裏口に到着した俺は昨日の内に渡されていた、お店の裏口のカギを使い厨房に直接入れるドアを開けて中に入ると、入口横の照明のパネルとエアコンのスイッチを最大にして入れる。


 天井に取り付けてある大きなエアコンからは。


 「ゴォォォ」


 と言う(おら! 冷やしてやってんぞ!)気合いの叫び声が聞こえて来た。


 そして買ってきた業務スーパーの食材達を、冷蔵庫と冷凍庫の中を整理整頓しつつ収める。


 「ったく……あの腰痛星人め! 冷蔵・冷凍庫の整理整頓は料理人の基礎だろうに……だからたかだか"たまご焼き"ごときでクレーム受けるんだよ」


 昨日いっぱい。でこのお店から去っていったお腹の大きな腰痛持ちの顔を頭に浮かべた。


 「よし! 整理整頓終わり」


 そう言って、少し大好きなカルピスミルクでも作って休みたい気持ちを押し殺して、また裏口のドアから出る際に。


 (うーん……誰も来ねぇだろうし、まぁつけっぱでいいか)


 照明だけ切るとまたドアを開けて次の目的地に向け歩き出した。


 お店の近くにあった昼間最大料金900円という繁華街にしては、リーズナブルな3坪ぐらいの土地を無理やり駐車場に変え、老後の足しにしてそうな駐車場に停めていた自分の車に乗り込んだ。


 (ったく……停める時も思ったが、出る時も同じだな……Tスピン必要じゃねぇかよ)


 何とかかんとか愛車のスバルブルーに輝く"BRZ"を駐車場から出した後は、東栄通り(一方通行)から国道41号線に出ると広い道を快適に走らせる。


 車内はエアコンで涼しくなり始め、大好きな音楽を鳴らしながら鼻歌を歌い目的地まで走る。


 その後20分程あっち曲がり、こっち曲がりと着いた先は。ホテル勤務時代にお世話になったフルーツ特化の特定の相手(まぁよくある話の頑固な店主のお眼鏡に叶ったヤツだけ小売で買える卸専門店ってやつだ)


 "加賀屋"


 に到着した。ここに来たのには理由があり、それは昨晩、契約に関する書類1枚書いてもいないのに"氷室くん後は任せた"と勝手に山本さんが帰っちゃった事にたんを発する。


 「太閤(くそ! 名前のインパクトにどうも引き摺られる……呪いか?)……あっいや中村さん果物に関して1つ提案いいです?」


 そう切り出すと内勤と言うホストクラブの裏方(もちろん事務や経理も)のTOPであるマネージャーは。


 「はい、何か果物で困った事でもありますか?」


 とこの店の"料理の不味さ"を知っている(知らんのは張本人が勝手に帰った後じゃ、あの"うつけ"だけなんじゃね?)事から何かしらの問題がある事前提に聞いてきた。


 「はい……これ多分ですけど、そこらのスーパーで買ってません? こんなのホストクラブと言うお客がワガママ言いまくる店で出してたら、そら口コミもあーなりますよ……」


 「それで? 氷室さんに何か打開策でも?」


 この人なんか怖いんだよな……目の奥が笑ってないというか。"THE 腹黒"って感じして。


 (性格まで似なくてもいいじゃん! もう陰謀じゃん! 俺の心の声利用する気マンマンじゃん!)


 「えっと、前の仕事場で使ってた問屋さんがあって、俺は店主に気にいられ小売してもらえるから、そこで買っていい? ちゃんとした物が買えるから」


 そう言ってフルーツに関しては俺の好きな店で買わせろ。と交渉を持ち掛けるとハゲネズミ……ちゃうマネージャーの中村さんは目の奥が"ギロリ"と変わり。


 「ほぉ? まともな物が買える? では、氷室さんはその"まともな果物"で"まともなフルーツ盛り"を提供してくれると?」


 そう切り返され、そこで俺は自分のミスに気付いた。


 (あ! やべ! 墓穴掘った……山本さんレベルでいいよーと店長のお墨付き貰ってたのに、この流れ……ちゃんと作らんと"醍醐寺"で腹切られる、どうせなら夏じゃなく桜咲いてる春が……何言ってんだ俺?)


 「そ……そうですね……まぁとても時間が必要な物はお客も待たないでしょうから、このぐらいなら……」


 持ってきたトートバッグから、本当に普段、普通に出していたフルーツの盛り合わせを撮影した画像を見せると……


 「なるほど……たまご焼きもこう言う理由で。いいでしょうどこのお店でも好きな所で買ってきて下さい。あっもちろん領収書はお忘れなく、これ約束ですよ?」


 と、差し出したプリントアウトした画像を指で"トントン"と示した。


 (あーーーやらかした……これでツマミのレベルだけ腰痛魔人に合わせたら絶対、毎日靴を暖めさせられる)


 と言うようなやり取りがあったので、俺は加賀屋で無事フルーツを買う事が出来るようになった。

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